和歌山県が公共事業費の一部を関係市町村に負担させる「市町村負担金」について、仁坂吉伸知事は15日、「来年度から原則廃止する」と表明した。県によると、一部を廃止する動きはあるが、負担金そのものの廃止は全国初という。
 県議会で吉井和視(自民)、中拓哉(公明)両議員の一般質問に答えた。全国知事会は国に直轄事業負担金の見直しを求めており、仁坂知事は「一方で、市町村から頂くのは矛盾する」と述べた。県は2009年度当初予算で、急傾斜地対策や道路整備など31事業で約29億6900万円の負担を市町村に求めた。負担割合は総事業費の1〜3割程度。原則的に受益対象が1市町村の事業で、下水道事業などを除き、維持管理費は対象にしていない。
 市町村からも見直しの要望は出ていた。しかし、負担金には市町村が住民から使用料を徴収する下水道事業や、土地改良事業で受益者の負担軽減を目的とした支出もある。仁坂知事は「負担金事業の内容・性格を分析して、廃止と例外的に存続させるものを整理。廃止後の県事業は、事業全体の中で、予算の配分や優先順位を決めて対応したい。市町村の意見を聞いて、詳細を決定する」と述べた。県政策審議室は「県がすべき事業は県で、市町村の事業は市町村で負担し、役割を明確化したい」と話している。
 全国知事会は7月、国直轄事業負担金制度の改革を求め、同趣旨で市町村負担金を実情に応じ見直すと申し合わせた。熊本県は8月、負担金の一部に当たる施設の維持管理費や事務費の市町村負担金を廃止する方針を発表した。国の方針は示されていないが、民主党は公約に国直轄事業の負担金廃止を盛り込んでいる。

新潟県泉田裕彦知事は16日、県の公共事業費の一部を市町村に負担させる「市町村負担金」について、2010年度から原則廃止する方針を明らかにした。県庁で記者団の取材に答えた。
 和歌山県仁坂吉伸知事が15日に市町村負担金の原則廃止方針を表明したことに触れ「まったく同感。それぞれの主体がすべての権限と財源をもって、自主的に対応していくというのが望ましい」と話した。県によると、09年度の当初予算では、道路改修や河川整備などの事業で、事業費総額の約10%となる約54億9千万円の負担を市町村に求めた。負担金には、関連する県職員の人件費なども含まれている。

両記事では,和歌山県及び新潟県の各県における公共事業費の一部を,各県内に位置する市町村が負担する取組を,「原則廃止」する方針であることを紹介.2009年9月16日付の同通信社の配信報道では,大阪府においても「一部廃止」*1の方針と紹介.
「戦後地方財政制度は負担金体制」との認識からは,「負担金体制では,多様な歳入手段によって,結果的に財政資金量を確保」*2されてきたと分析.同体制においては,その資金確保経路は,まさに「融合的」であり,国から自治体への片務的・単線的な財政移転の仕組みに止まらず,国による各自治体からの複線的な財政調達もある.そして,更には,同記事の前提のように,自治体間においても,同様の「融合的」状況にある.両県の判断は,同体制の融合的状況に対して,自らの離脱ともなり,既存財源負担分の調達方策の問題は想定されるものの,大きな決断.興味深い.
同取組,「国直轄事業負担金制度」の廃止という「フレーミング(framing)」に端を発し,市町村・都道府県における負担金体制という「フレーム」へと,いわば「架橋(bridge)」され,その後,同体制の「理解の深化」という「増幅(amplification)」,運動の拡大という「拡張(extension)」が進み,両県のように「転換(transformation)」*3に至った判断とも整理することも可能か.2009年8月21日付の読売新聞による報道にもあるように,熊本県においても一部廃止の判断にあるなかで*4,他の都道府県の動向は,要経過観察.

*1:読売新聞(2009年9月16日)「岸和田市の負担金5百万廃止 大阪、来年度から府予算で

*2:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)188頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*3:河東賢「マニフェスト導入の日韓比較 異なる認識枠組みの構成」『公共政策研究』第8号,2008年,127頁

公共政策研究 第8号(2008)

公共政策研究 第8号(2008)

*4:読売新聞(2009年8月21日付)「市町村負担金、熊本県が一部廃止へ