県南広域振興局と奥州市、金ケ崎町は29日、「二重行政」と呼ばれる県と市町村の行政の重複部分を見直す政策調整会議を始めた。同会議の本会は10月に初会合を開く予定で、同日は下部組織に当たる部門別部会を開催。行政の無駄をなくし、より効率的な行財政運営を目指す。
 政策調整会議は二重行政解消を話し合う場として県分権推進会議の提言を受け設ける。県南広域振興局管内は本年度、モデル指定を受け、同振興局と管内自治体のうち参加を受諾した2市町が、県内に先駆け結成する。同振興局の藤尾善一局長を座長に、相原正明奥州市長、高橋由一金ケ崎町長、3団体の企画総務担当部長らで構成。企画総務、環境生活など部課長級による部門別の7部会を下部組織とし、各部会がまとめた意見を基に本会で協議する。
 29日は企画総務、農林の2部会が初会合。企画総務部会(部会長・佐々木和延同振興局総務部長)は同振興局の斎藤信之経営企画部長、奥州市の及川俊和総合政策部長ら11人が出席し、企画総務分野の「2重行政と思われる事務事業」43項目を1件ずつ精査した。このうち▽県と市町がそれぞれ開く統計調査事務説明会は非効率ではないか▽通信事業者への補助事務は情報インフラとして国が一元的に担うべきだ―などとして、8項目を要再検討とした。
 全体の最終意見は、年明けの本会第3回会合でまとめる。その後、自治体間で権限移譲など改善点の具体化を探る。藤尾局長は「事務事業の棚卸しだ。県民目線で厳しく見て、人も予算も有効活用する方策を探る」と話す。

同記事では,奥州市と金ケ崎町と同市町が位置する岩手県の南広域振興局との間で,市町と県間での重複部分を見直すための「協議の場」を設置したことを紹介.同記事は,同協議機関における部門部会の開催状況を言及.
2009年4月26日付の本備忘録でも述べた,下名が「自治業界」なるものに足を踏み入れて以来思案し続けている課題である「二重行政」という概念・現象(まさに,「暴露された事実」であり,「「政策」の背後にある,いわばもっともらしい「理論」」ともされる「ドクトリン」*1との認識が適合しそうですが)について,同県に位置する市町村と同県との解消に向けた取組.同協議機関に関しては,同県に設置された岩手県分権推進会議において提案.提案内容は,第5回同会議を参照*2
同資料を拝読すると,「広域振興局・市(町村)政策調整会議」は,同記事にいう「本会」と「分野別部会」との2層から構成されている.まずは,「本会」における「協議項目」としては,「市町村と県の施策の立案・調整」「市町村と県の連携・協働」「二重行政の解消・未然防止」「権限移譲の推進」「その他の地域課題に関すること」があり,構成主体としては,「県(振興局)」側が,「広域振興局等の長,各部の長等」,「市町村」側として,「市町村長,各部(課)の長等」とある(市町村側は首長も参加となると,「民主的正統性に関して不均衡」*3があるように思わなくもありませんが).そして,「本会」には,これらに加えて「民間有識者等」が加わることとなり,双方の利害から距離を置いた「公益代表」的な構成員を置く,いわゆる「三者構成」として構想されていたことが特徴的.開催の「時期」は2つに分かれており,「定期」開催としては,「次年度予算の編成時期」,「随時」開催としては,「地域振興に関する計画を策定するとき」「重要施策を変更するとき」等が想定されている.
また,「分野別部会」は「「政策調整会議」で協議する項目について行政分野別に事務レベルでの検討」するための機関とあり,「本会」へ付議される事案の「輻輳制御」(congestion control)を果たすことが想定されている模様.同部会の構成は,「県(振興局)」側が,「各部の長(部会長),各部の課長等」,「市町村」側が,「市町村の課長,各課の担当等」である,同部会において,本会議と同様に「民間有識者」に加えて,「住民」の参加が想定されていた.同記事からは,「住民,民間有識者等」の参加状況は把握できないものの,実際の同機関の制度化では,その構成において,「住民,民間有識者等」の参加があったのだろうか,要確認.
同部会では,同記事にあるように「二重行政」なる現象の対処方針が検討され,上記資料での構想では,「県がやる→市町村はやめる」,「市町村がやる→県はやめる」,「どちらもやめる」,「どちらもやる」の何れかの路線に関する制度選択が図られることになる.いわば,同部会において,市町村と県という「二」自治体「間の「調整」を基礎として,それらの総合調整がまずは図られ」本会議において「総合調整の総合調整がなされる構図」(上掲・牧原2009:248)にあるとも整理できそうか.
同県の場合,「二重行政」という「ドクトリン」の認識は,第4回同会議配付資料*4を拝読すると,「重複型」「分担型」の形態を採用されており,主に地方分権改革推進委員会による『第1次勧告』にて整理がなされた「国と地方の二重行政」に対する分類形態*5を,同心円状に「市町村と都道府県」間でも生じる現象として参照されている模様.同分類,確かに法令面に基づく同現象の分類形態ではあるもの,果たして,各自治体間での法令に基づかない自立的・裁量的判断に基づく事業の重複性の存在において適用しうるものなのか,もう少し考えてみたい(といいますか,そろそろ下名個人的にも,同課題の整理をつけてみたいと思っています).

*1:牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会,2009年)20頁(同「ドクトリン」の歴史的形成過程を見てみると,「「行政」のドクトリン」(270頁)との特性よりも,寧ろ「「政治」のドクトリン」(同頁)としての色彩が強いとも認識してはおりますが)

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

*2:岩手県HP(地域振興部地域企画室権限移譲・振興局再編担当岩手県分権推進会議開催予定及び開催状況第5回岩手県分権推進会議(開催日平成20年11月5日))「配付資料資料3市町村と県の協議・調整の場の設定(案)」

*3:松井望「国と地方の協議の場」のもう一つの課題京都府HP(府政運営・方針京都府の地方分権改革)『京都府分権メルマガ「縦横無尽」』(第14号・2009年9月号)

*4:岩手県HP(地域振興部地域企画室権限移譲・振興局再編担当岩手県分権推進会議開催予定及び開催状況第4回岩手県分権推進会議(開催日平成20年7月30日))「配付資料資料2 県と市町村の二重行政について」1頁

*5:地方分権改革推進委員会第一次勧告 生活者の視点に立つ「地方政府」の確立』(2008年5月28日)7〜8頁