原口一博総務相は9日開かれた臨時の全国知事会議で、「地方自治法を改正するように指示している。その中で議会改革も進めたい」と述べ、同法の改正と併せて都道府県や市町村など地方議会の改革に取り組む考えを示した。
 神奈川県の松沢成文知事が会議の中で、地方自治体の裁量権を広げるため「地方自治法を抜本改正するか廃止する」よう提案したことへの回答。

同記事では,2009年10月9日に開催された全国知事会議において,総務相より地方自治法の改正方針が示されたことを紹介.同会議に関しては,全国知事会HPを参照*1.同日付の共同通信の配信記事を拝読すると,同会議では,同日に同相から,地方分権改革推進委員会の後継組織としての設置方針が示された「地域主権戦略局」(仮称)*2の設置に関して,「知事会など地方6団体の代表者もメンバーとする方針」*3であることも言及された,とある.総務相及び各知事からの発言内容を拝読したいと思いつつも,同HPには,現在のところ,議事概要・議事録等の掲載はされておらず,確認できず,残念.
同記事を拝読すると,同法の「抜本改正」「廃止」の提案に対して,総務相からの回答は「改正」の方針にあることが示された模様.ただ,「改正」の趣旨は,同記事だけでは判然とはしない*4.同法「改正」は,第29次地方制度調査会答申及び同委員会における各勧告を受けた「地方分権改革推進計画」の策定,そして,「新地方分権一括法」の制定がされる場合には,不可避な路線とも想定されなくもない.
例えば,地方分権改革推進委員会が2009年10月8日に内閣総理大臣に提出された,いわば「自由度の拡大路線」*5の流れに棹さすであろう,『第3次勧告』においても,例えば「地方自治法において詳細に定められている」「自治体の財務会計制度」についても言及されている.ただ,その場合,「日々行われている地方自治体の財務会計実務に無用な混乱が生じないように十分に配慮する必要のあること,財政運営上密接な関係にある国と連動した制度体系を維持する必要のあるもの等については国の財務会計制度と一体となった見直しが必要であることは,改めて指摘するまでもないところ」*6とあり,国の財務会計制度との相補性からも,ひとり地方自治法のみの改正で完結するものではないともいえる(同勧告44頁における第29次地方制度調査会答申に対する見解に関する記述は,興味深いですね).
同「改正」という発言の趣旨は,既定路線からの説明であるのか,または,ノーベル平和賞の受賞理由をもじれば,地方自治法という,地方自治に関する「核なき世界」*7を構想する発言であったのか,要確認.

*1:全国知事会HP(全国知事会議・委員会・会議)「「全国知事会議の開催」について(2009年10月9日)

*2:共同通信(2009年10月9日付)「「地域主権」実現に新組織 年度内にも分権委に代わり

*3:共同通信(2009年10月9日付)「分権委後継組織に地方代表 地域主権へ「工程表」作成

*4:なお,朝日新聞の2009年10月10日付の紙版では,「地方自治法抜本改正」について,政治面(第4面)において,その応答を少し詳しく報道されているものの,web版では,現在のことろ掲示されていない模様

*5:西尾勝「四分五裂する地方分権改革の渦中にあって考える」『分権改革の新展開』(ぎょうせい,2008年)3頁.

年報行政研究43 分権改革の新展開

年報行政研究43 分権改革の新展開

*6:地方分権改革推進委員会HP(委員会の勧告・意見等)『第3次勧告〜自治立法権の拡大による「地方政府」の実現へ〜』(平成21年10月7日)44頁

*7:日本経済新聞(2009年10月10日付)「オバマ大統領に平和賞 ノーベル賞「核なき世界」評価