倉敷市は13日、特産品や伝統行事などを全国発信するため認定した現行の「倉敷ブランド」制度を取りやめる方針を示した。新規の認定はせず、既存ブランドの認定期間が切れる来年12月で終了。市は「審査が客観性が欠ける」などを理由に挙げており、同制度に代わる新たな情報発信のあり方を検討する。
 同日の市議会文化産業委員会で報告。市は現行制度について、申請が自薦式で選定の客観性に欠ける▽市が事業主体となっていることで認定品の販売戦略に積極的にかかわれない―などの問題点を指摘。「商工や農業団体などと協議し、来年12月までに新たな制度を構築したい」(市商工労働部)とした。
 現行制度は“倉敷力”の全国発信を目的に創設。認定されると、白壁をモチーフにしたロゴマークを使って商品などを倉敷ブランドとしてPRできるほか、市のホームページなどでも紹介される。

同記事では,倉敷市における「倉敷ブランド制度」を廃止する方針であることを紹介.「申請が自薦式で選定の客観性に欠ける」,「市が事業主体となっていることで認定品の販売戦略に積極的にかかわれない」ことがその理由という.また,同方針に関しては,2009年11月14日付の読売新聞においても報道*1されており,同記事では,「各地で同様の地域ブランドができ,優位性が失われた」こともその理由の一つとして示された模様.同制度に関しては,同市HPを参照*2
同制度における,「認定対象」は,「一次産品・加工品など有形物とその生産又は製造・加工を行う事業者等」又は「景観・建物・芸能など無形物とその直接管理又は保存等を行う事業者・特定非営利活動法人・任意団体等」の何れかとなる.「応募方法」は,「申請」と「推薦」の2経路が整備.まず,「申請」の場合は,「有形物の場合」には「原則として市内に主たる事業所を」有していること,また「無形物の場合」も「事務所を有している」ことがその要件となる.次いで,「推薦」の場合は,「どなたでも応募」可能と資格要件は幅広く設定されている.申請後の「認定」手続は,まず「申請」の場合には,「事業者又は団体等からの申請後」「倉敷ブランド認定審議会」において,「倉敷らしさ」「独自性」「信頼性」という比較的概括的な3つの基準及びその運用基準*3に基づき「倉敷ブランド認定基準」*4において審査が行われ,「倉敷市長が認定」することとなる.次いで,「推薦」の場合は,申請意思の当事者確認のために,「推薦のあった事業者又は団体等に,推薦のあった旨を通知」がなされ,その後,当該「推薦のあった事業者又は団体等からの申請があった場合」に,「申請の場合」と同様の手続が採用されるという.「認定の有効期限」は「認定された日から3年」,「有効期限が満了」後の「再認定」には,「更新の手続きが必要」という.認定後は,「倉敷市」は「倉敷ブランド」ホームページ上で情報発信」「テレビ・ラジオ・新聞等で特集を組んでもらい,情報発信」「海外物産展へ出展(平成19年度以降予定)するための支援」「首都圏や県内外の物産展・イベントなどに出展するための支援」と市における広報及び当該団体独自の広報への後方支援がなさる.また,「認定された事業者又は団体等」は,「「倉敷ブランド」認定証」を受け,「「倉敷ブランド」に認定されたものであること及び自らが認定された事業者又は団体等であることを表示」可能になるという.
2009年2月9日付及び同年2月11日付の本備忘録において指摘した「認証制度の叢生」(正確には「認定制度の叢生」ですが)の下で,同市における同制度の見直し要因が,認定制度という制度的要因に起因する場合,2009年2月11日付の本備忘録で取りあげた山形県における県産品認定制度への本備忘録における観察内容とは相対し,同記事を拝読する限りでは,同市における同制度の認定形態としては,申請・推薦を問わず,「多数の申請者の中の特定の者だけ資格を付与する」という「採用試験型」よりも,「一定の能力を有している否かを判定し,有している者には全て資格を与える」という「資格試験型」*5を採用されていることも一つの要因にあるとも考えられなくもない(同市HPからは,各年度及びこれまでの同制度への申請数と採択率が把握できないため,残念ながら,推論の域はでませんが).その場合,同記事に紹介されている「新たな制度を構築」との今後の方針が,例えば同種の「認定制度」が改組・持続への制度選択の余地がある場合,むしろ「資格試験型」から「採用試験型」へと運用転換を図ることも想定されるのだろうか.「認定制度」の実相も観察してみると興味深そう.要確認.

*1:読売新聞(2009年11月14日付)「「倉敷ブランド」廃止へ 来年末、市の方針 「各地乱立、優位性失った」

*2:倉敷市HP(倉敷ブランド)「倉敷ブランド認定制度

*3:詳細は,次の通り.まず,「一次産品・加工品など」については,「倉敷の恵まれた風土と歴史に育まれたものであること」(生産,製造等に倉敷の土壌・水・気候条件・素材等の活用がなされている.歴史・経緯等の地域に根ざしたストーリー性がある),「倉敷ならではの魅力あるものであること・倉敷市が連想される取り組みやエピソードがある」(伝統的製法・技術が活用されている.倉敷市民に支持されている,又は支持される見込みがある),「独自のもの,又は他産地,類似商品と比較して優位性を打ち出せる要素があること」(商品特性(品質,形状,味,色,など).デザイン.出荷時期等),「消費活動を通じて地域の活性化が見込めるものであること」(市場取引により観光誘客の促進に繋がる見込みがある.関連産業への波及効果及び地域雇用の促進に繋がる見込みがある)「品質維持・向上のための生産・製造プロセスや技術的裏付けがあること」(品種,生産・出荷技術,等級基準等の商品規格が統一されている.生産者等の意欲が強く,継続性が認められる),「安全品質管理を徹底する体制が整えられ,それを消費者に保証できること」(事業者の責任所在が明確化されている.安全に関する検査体制が確立されている.環境に配慮した取組みがなされている.苦情・要望に対する対応体制が整備されている),「関係法令の表示基準を遵守していること・不当景品類及び不当表示防止法,JAS法(一次産品・加工食品),食品衛生法(食品),家庭用品品質表示法(家庭用品)工業標準化法(JIS)(工業製品)等」とされる.次いで,「景観・建物・芸能など」については,「倉敷らしさあふれるもので,当地域への来訪を促す機会と価値を有するもの」とされる.

*4:倉敷市HP(倉敷ブランド)「倉敷ブランドとは

*5:森田朗『許認可行政と官僚制』(岩波書店,1988年)95頁

許認可行政と官僚制

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