鹿児島県土木部の技術系職員OB141人が2009年度、県内の建設会社やコンサルタント会社などに在籍していることが30日、南日本新聞の調べで分かった。08年度の県発注土木建築工事落札額の上位10社のうち、7社に部長や次長など課長級以上のOBが再就職。このうち6社は、県発注海上工事で談合を繰り返していたとして11月5日、公正取引委員会から立ち入り検査を受けた。
 県土木部幹部の多くが「発注」の立場から一転、県内大手の「受注」側となっており、官民癒着の温床と批判される「天下り」の実態が浮き彫りになった。また、コンサルタント・設計業務落札額上位20社のうち、13社に課長級以上のOBがそれぞれ再就職していることも判明。建設会社7社と併せ、大手計20社に元幹部が在籍していた。これら建設・コンサル会社計30社では、少なくとも9人のOBが副社長や役員として勤務している。
 公取委の立ち入り検査に関しては、県港湾漁港建設協会(鹿児島市)に加盟し検査を受けた27社のうち、10社にOBが在籍。このうち、全国大手の海洋土木工事会社(マリコン)の県内営業所には、鹿児島港湾事務所長や本庁港湾課技術補佐という「港湾経験者」が再就職している。再就職先は他にゼネコンの県内営業所や県建設業協会、建設資材販売会社もあった。OBを受け入れている企業は、再雇用の理由を「専門技術や安全管理、関係法令に関するノウハウを直接指導してもらうため」としている。港湾業者の副社長に就いたOBの1人は「談合など不正に関与したことはない。業界に有利になるような取り計らいを県に求めたことはない」と話す。県土木部の屋島明人次長は取材に「OBへの応対は一般業者と同じ。原則として庁内には立ち入りさせておらず、入札への影響はない」としている。
 天下りについては、国家公務員は法規制されているが、地方公務員は自治体の裁量に任せられている。鹿児島県には、退職後一定期間は現職時代にかかわりのあった企業に就職しないなどの規制はなく、外郭団体などを除き公表していない。

同記事では,鹿児島県土木部における再就職状況を紹介.南日本新聞による調べの結果.
2008年8月6日付2009年7月5日付同年7月29日付の各本備忘録でも取り上げた,自治体職員の退職管理の状況.「国家公務員の場合」「営利企業の就職については国家公務員法第103条において離職後2年間は民間企業への再就職が規制されてきたのに対して,地方公務員法には同様の規定が存在せず,私企業への再就職について何ら法的規制はない」*1という「立法レベルでの規制措置」として「地方公共団体全体を対象とした公表制度が存在しない」なかで,「退職した職員の再就職を公表」*2する自治体も限定されているなかで,「公的データ」ではないものの,その形態を把握するうえで貴重な記事.
同県においても,同県職員の再就職状況を公表している.ただし,同県の場合は,2005年に制定した『公社等外郭団体見直し方針』に基づき「株式会社等を除く公社等外郭団体における県退職者の再就職については,平成17年度の県退職者から」,「公社等外郭団体の役職員については,当該団体からの推薦要請に基づき,県退職者者の推薦を行うこと」とし,「公社等外郭団体の役職員として再就職した県退職者の氏名等については,平成18年度から毎年公表」*3するとの経緯もあることもあり,同県HPにて公表*4される同県退職者の再就職先は「外郭団体」に限定されており,同紙にて報道された民間企業への再就職状況(そして,退職職員の職種による状況)は,外部からの観察は困難な模様.
(下名,2009年7月5日付の本備忘録では,「初秋までに一定程度まとめられるよう,この夏から集中的に診てみよう」との目標を進めていたなかで公刊された)上記の中野雅至先生による観察による分析結果では,「地方公務員の天下りについて公的データからわかること」としては,「天下りのような雇用慣行を持つのは,都道府県や政令指定都市など規模の大きな地方公共団体」であること,「天下り成果主義の要素が強い」こと,「天下りが労使癒着となっている面があること」,「中央官庁中心の中央集権体制・縦割り行政を基盤とした天下り構造が持ち込まれていること」,「公共事業を媒介にした天下りが目立つこと」*5の5点が指摘されている.同分析結果を踏まえつつ,更に「公的データ」が公開・拡充されることで,その「生理」現象の特性が把握できるとよいのだが.

*1:中野雅至『天下りの研究』(明石書店,2009年)67頁

天下りの研究

天下りの研究

*2:前掲注1・中野雅至2009年:69頁

*3:鹿児島県HP(県政情報行政改革・行政評価・監査行政改革公社等外郭団体見直し方針)『公社等外郭団体見直し方針』(平成17年3月,鹿児島県)10頁

*4:鹿児島県HP(県政情報組織・人事・叙勲等人事行政再就職)「公社等外郭団体の役職員として再就職した県退職者の状況を公表します

*5:前掲注1・中野雅至2009年:82〜83頁