横浜市の林文子市長は27日の定例会見で、職員の外郭団体などへの天下りについて内規を改定し、天下り先での在職期間や報酬などに規制を設けると発表した。2012年度までの完全実施を目指し、年度ごとに実施状況を公表するとしている。
 規制は(1)在職期間は原則64歳まで、副市長経験者は年齢に関係なく4年間(2)役員報酬は副市長級で900万円、区長・局長級で700万円を上限とする(3)2団体以上の役員の兼務は行わない―の3点。
 市は役員兼務の解消を優先的に行うとし、外郭団体に協力を求める。12年7月までに達成されず、理由も不明確な団体については市からの補助金などを見直すという。市によると、市の外郭団体や医師会などの関係団体は計108団体あり、兼務を含めて現在、94人が天下っている。

本記事では,横浜市における外郭団体等への再就職規制に関する取組を紹介.
本記事でいう「内規」が「横浜市職員の再就職に関する取扱要綱」*1とすれば,同要綱に,本記事にて紹介されている「3点」が規定される模様.また,2010年1月28日付の産経新聞による報道では,「再就職先は市長から市議会へ報告」*2することも報道されており,本記事の根拠となる20010年1月27日に開催された同市市長の「定例会見」*3に関しては,現在のところ,更新されていないため,具体的な「内規」及び改訂事項の詳細は把握できず,残念.掲載後,要確認.
同要綱では,現在の再就職の際の手順が規定されており,まずは,「退職後の就労希望の有無に関わらず「退職予定者意向調書兼人材情報登録申込書」」を「行政運営調整局人事組織課へ提出」し,「人材情報として登録」(同要綱第3条第1項)することになる.更に,「職員の採用を希望する企業及び本市関係団体」は,「求人情報登録申込書」」を「行政運営調整局人事組織課へ提出」し「求人情報として登録」(同要綱第3条第2項)される.その後,「行政運営調整局人事組織課及び区局人事担当課」が「人材情報と求人情報を照合」のうえ「適任と認める職員を紹介するため,企業及び本市関係団体に対し人材情報を提供」(同要綱第4条第1項)する手順が規定されている.
また,「国家公務員の場合」には「営利企業の就職については国家公務員法第103条において離職後2年間は民間企業への再就職が規制されてきたのに対して,地方公務員法には同様の規定が存在せず,私企業への再就職について何ら法的規制はない」*4との観察結果があるなか,同市では,同要綱第7条において,「再就職」に関しては「自粛」が規定されている.具体的には,「退職後2年間は,その退職前2年間に主管した職務と密接な関係にある企業への再就職を自粛」し,「区局長は職員に対しこれを指導する」(同要綱第7条第1項)との規定にある.更に,「職員が前項に定める期間内において,特別な事情によりやむを得ず,その退職前2年間の職務と密接な関係にある企業に再就職する場合は,退職後2年間は,本市公共事業の受注に関する営業活動に従事しないよう,職員及び再就職先企業に対し要請する」(同要綱第7条第2項)こととされている.当該「自粛」は,上記の「人材情報と求人情報を照合」を経由しない場合の再就職を指すのだろうか.要確認.
更に,同要綱では,「企業に再就職した職員」は「退職後2年間は,当該企業が関係する契約等が退職前2年間に主管していた職務に関係する場合」,「本市の現職職員に対し,当該企業に利益を誘導すること等の働きかけを行うことを禁止」(同要綱第8条)とも規定されている.市と再就職先との「離隔距離」*5の確保についても,禁止規定は設けられてはいる(「働きかけ」「禁止」の実効性確保のための手法が,本要綱以外にも規定されているのでしょうか).
天下り成果主義の要素が強い」*6との分析結果があるなかで,本改正を通じて,再就職先への「人材情報と求人情報を照合」時の照合基準は兎も角,「在職期間や報酬」の改訂を通じて,「成果主義の要素」もまた,検討されることになるだろうか.2010年1月27日付の東京新聞にて報道された同市の「“水道会社”」の設立には,同市の「ノウハウを持つ人が会社に参加」*7することを目的と報道されているものの,同要綱改訂により,「ノウハウ」という執務技能の継承の課題との均衡も想定される.
自治体内には磨かれない,原石の人材がたくさんいるが,そのまま埋もれてしまうことも多い」*8との観察結果もあるなかで,同要綱改訂を通じて,「自治体内」では「磨かれ」た加工石としての管理職経験者という「人材」の,退職後の適正な利活用の状況は,要経過観察.

*1:横浜市HP(行政運営調整局人事組織課横浜市職員の再就職)「横浜市職員の再就職に関する取扱要綱」(制定平成19年11月1日行人第908号(局長決裁))

*2:産経新聞(2010年1月28日付)「横浜市、OBの再就職を内規で厳格化

*3:横浜市HP(ようこそ横浜市長のページへ!)「市長記者会見

*4:中野雅至『天下りの研究』(明石書店,2009年)67頁

天下りの研究

天下りの研究

*5:金井利之「会計検査院政策評価」『行政の評価と改革』(ぎょうせい,2002年)60頁

行政の評価と改革 (年報行政研究 (37))

行政の評価と改革 (年報行政研究 (37))

*6:前掲注4・中野雅至2009年:82頁

*7:東京新聞(2010年1月27日付)「【神奈川】水道会社 新設へ 浄水場管理 海外受注掲げ “天下り”受け皿批判も

*8:田村明『都市プランナー田村明の闘い』(学芸出版社,2006年)352頁(心よりお悔やみ申し上げます.『都市ヨコハマをつくる―実践的まちづくり手法 (中公新書 678)』は,当時の横浜市政を学ぶ上でも貴重な一冊です.学生の頃に拝読した際には,同著の主要部分では必ずしもありませんが,同著16〜18頁で「Gファイル」の記述に,何故だか圧倒された記憶があります.今朝,久しぶりに同著を開いてみて,現在では,続く18〜22頁にある「大テーブル主義」の観点からの「自治体内会議」について観察していることに気付きました)

都市プランナー田村明の闘い―横浜“市民の政府”をめざして

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