松沢成文知事は29日、県職員の4月1日付人事を発表した。総数は5801人。意思決定の迅速化や責任の明確化などを目的に組織を見直し、「局部課制」を導入。松沢知事は「県庁改革と不祥事防止対策を最重要課題に位置づけた。県民の信頼を取り戻し、期待に応え、活力ある県政を実現することを目的とし、適材適所の配置を行うことに主眼を置いた」などと述べた。
 内訳は、理事級8人、局長・参事監級38人、部長・参事級86人、課長級561人、その他5108人。異動の総数は昨年より2430人多いが、組織変更に伴う名称変更なども含まれており、従来との比較はできない。公営企業管理者(企業庁長)に小林賢商工労働部長を起用。知事が指示する特定の課題について総合的な調整を行う理事(特定行政課題担当)に、黒川雅夫政策部長を充てた。
 一連の不正経理問題を受けた不祥事防止対策としては、総務局に行政事務監察課、各局に原則として経理課をそれぞれ設ける。
 11月に横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向けては、APEC開催支援課を設置。地域課題の解決に向け、地域の実情を踏まえた政策づくりを支援するため、既存組織の機能を再編し、政策研究・大学連携センター(シンクタンク神奈川)を設ける。民間人材の幹部職への起用では、IT推進担当課長、障害者職業能力開発校長を民間から登用。米軍基地問題日米地位協定についての助言などを得るため、拓殖大学海外事情研究所教授の川上高司氏を参与として迎える。3月31日付の退職者は、不正経理問題で引責辞任する羽田愼司、小野義博両副知事ら特別職5人のほか、部長級21人、参事級23人など計691人。新規採用者は251人の予定。
 新たな「局部課制」では、現行の「部」を「局」に改め、「局」の下に「課」を束ねる「部」を設置。「課」は20人程度で一つになるよう小分けする。

本記事では,神奈川県における局部課制の導入に伴う人事異動を紹介.
2009年11月21日付の本備忘録にて紹介した同県における「局部課制」の導入.伊藤正次先生による都道府県知事の「直近下位の内部組織」の形態分析結果*1である「都道府県知事部局の組織編制」として分類された形態のうち,「局制(局−部−課)」を導入してきた東京都,広島県の2都県に次ぐ導入.部・課の詳細については,同県HPを参照*2
2008年2月28日付の本備忘録にて言及した「自治総合研究センター」に関しては「廃止」され,「調査研究機能及び研修機能を総合政策課の駐在事務所(政策研究・大学連携センター〜シンクタンク神奈川〜)」と「人材課の駐在事務所(職員キャリア開発支援センター)」へと「再編」*3.前者の「政策研究・大学連携センター」は,同「県の実情を踏まえた政策形成を支える調査研究」と同「県内大学等との幅広い連携をより一層強化」*4が目的とされ,設置される模様.一方で,「局部課制」の導入に伴い,各局内に「企画調整部」そして「企画調整課」の配置されており,いわゆる「局企画」*5が標準化.局単位での政策形成が部分集合化の蓋然性を高めることになりそう.
確かに,「政策研究・大学連携センター」に関しては,前センターにおける調査研究の蓄積からすれば,必ずしも「真空タンク」*6な状態ではないことが想定されるものの(むしろ,既に満タン気味なタンクでしょうか),全庁的な政策形成において,同センターが各「局企画」との間で集合環となるか,はたまた,「真空タンク」ではないとしても空集合に至るか,要経過観察.

*1:伊藤正次「自治体行政組織の構造変化と改革課題」『都市問題研究』第61巻第4号,2009年4月号,63頁

*2:神奈川県HP(神奈川県記者発表資料平成22年2月9日記者発表資料 「県庁改革」の取組みについて)『県庁改革の取組状況〜 平成21年度及び22年度当初に向けて〜』(神奈川県,平成22年2月)7〜12頁

*3:前掲注2・神奈川県(県庁改革の取組状況)14頁

*4:前掲注2・神奈川県(県庁改革の取組状況)35頁

*5:打越綾子『自治体における企画と調整 事業部局と政策分野別基本計画』(日本評論社,2004年)64〜65頁

自治体における企画と調整―事業部局と政策分野別基本計画

自治体における企画と調整―事業部局と政策分野別基本計画

*6:大杉覚「自治の『かたち』を実践に」『2009(平成21年度)新宿自治創造研究所活動報告書』191頁(参照:新宿区HP(区政情報構想・計画・自治新宿自治創造研究))