窓口のたらい回しなど撲滅へ
 たらい回しは致しません−。静岡市は5、6日、新規に採用した職員計約150人に対する研修を市役所で行った。窓口のたらい回しなど“お役所仕事”の撲滅を目指す。講師は話し方教育センター(東京)の奥村純子さんら。奥村さんは「市民から尋ねられたら、どんぴしゃりで担当課に回さないといけない。それが信頼関係」と指摘。その上で「上司ら縦のつながりだけでなく、横のつながりも大事にして市全体の知識を身に付けてほしい」と呼び掛けた。
 新職員は、電話の応対などをみっちりとたたき込まれていた。緑地政策課に配属された青木克憲さん(25)は「今から頑張って同期と仲良くなり、他の部署のことも分かるようになりたい」と意欲的だった。
(加藤隆士)

徳島市役所で7日、新規採用職員の研修の一環として恒例になっている阿波踊り演習があった。踊りが初体験という職員も含め40人が「ヤットサー、ヤットヤット」と声をかけあい、一心不乱に汗を流した。
 阿波踊りは徳島を代表する観光資源だが、毎年、採用される新人職員の中には実際に踊ったことのない職員も少なくない。このため、同市では93年度から、研修に阿波踊りを取り入れている。今年は演習に参加した40人のうち、踊りの経験者は半数の20人。8月の本番に踊った経験がある人となるとわずか6人だけという。
 この日の実習では、有名連に所属する市職員3人が指導。リズムの取り方など基本から丁寧に伝授した。新人の1人で愛媛県今治市出身の馬越和也さん(29)は徳島市に住んだ経験はあるものの、踊りは未経験。「腕がしびれる。運動不足ですね」と汗をぬぐいながら、「機会があれば8月の本番でも踊りたい」と意気込んでいた。【深尾昭寛】

「忍者の里」で知られる三重県伊賀市の観光をPRしようと7日、採用されたばかりの同市の新人職員が、忍者装束姿で近鉄大阪難波駅の改札前でチラシを配った。
 同市で来月5日まで開催しているイベント「伊賀上野NINJAフェスタ」を売り込む狙い。「市職員としての自覚を育てる」ため、新人研修の一環として実施した。7人の新人職員はそれぞれ、黒と赤の衣装を着込み、電車を乗り継いで同駅へ来た。「車内では宣伝は控えて」と近鉄側から要望があったため上着だけは羽織ったが、それでも車内で外国人観光客に「ニンジャ」と呼ばれ、思わず恥ずかしがる場面も。しかし、本番は一転。先輩の厳しい視線を前に、通行人に積極的に声をかけ、すばやくチラシを渡していた。新人らは「これからも忍の一文字で頑張ります」と話していた。(丸山ひかり)

本記事群では,新規採用職員に対する研修の取組を紹介.第1記事では静岡市における「電話応対」研修,第2記事では徳島市における「阿波踊り演習」,第3記事では「忍者コスプレ研修」(第2記事にて紹介されているように,「阿波踊り演習」は「93年度から」開始され,17年間も行われていることに,驚き).
「キャリア初期では,学業を終えて職業社会に入って,いまだ経験の浅い段階であり,仕事の進め方や所属組織の手続きなどに初めて触れ,それに習熟する期間」*1であり,「新しい組織メンバーがその組織の文化,すなわち組織内でどのように考え・感じ,どのようにふるまえばよいかを学習プロセス」*2である,いわゆる「社会化」の過程となる.
同過程は,「新参者」が「組織人らしくなるということ」*3でもある.しばし,「社会人」という概念が用いられることがあるものの,学校もまた社会,そして,学生もまた社会の(なかの)人と想定すれば,新規採用職員は「社会人」となるわけではなく,新しい「組織」において,当該組織の「社会」を受容しつつ,当該組織の「組織人」となる,との概念的な理解が適当とも考えられそう(「自学」*4を含めて,組織人としても学び続けることは多々あり,学ばないことは不可避とすれば,「組織人」も又永遠に「学生」であり続けることにもなる,とも考えられそうですが).
一方で,「通過儀礼よろしく初期的なコンフリクト(軋轢)も経験」し「就業後まもない早期退職と転職が多いのもこの時期」*5との観察もされたこともある.
コンフリクトが発生する背景には,採用過程における,採用側の「会社や仕事に関してプラスと考えられることだけでなく,マイナス面に関しても求職者に提供」する機会である「Realistic Job Preview*6の有無もまた一つの要因ではないかとも思いつつも,一方で,採用された側である個々人レベルにおける,直面するコンフリクト,つまり「紛争」,に対する「マネジメントの視点の自覚的適用」*7能力の習得次第の部分もなくはない.
「新参者」の「組織人」の皆さんも,新しい組織に加わり,1週間が経過.皆さんは,何よりも元気で,新しい組織でどのような「社会化」を経験されているのだろうか.

*1:榊原清則『キャリア転機の戦略論』(筑摩書房,2004年)26頁

キャリア転機の戦略論 (ちくま新書)

キャリア転機の戦略論 (ちくま新書)

*2:桑田耕太郎・田尾雅夫『組織論 補訂版』(有斐閣,2010年)115頁

組織論 補訂版 (有斐閣アルマ)

組織論 補訂版 (有斐閣アルマ)

*3:前掲注2・桑田耕太郎・田尾雅夫2010年,208頁

*4:稲継裕昭『プロ公務員を育てる人事戦略』(ぎょうせい,2008年)20頁

プロ公務員を育てる人事戦略―職員採用・人事異動・職員研修・人事評価

プロ公務員を育てる人事戦略―職員採用・人事異動・職員研修・人事評価

*5:前掲注3・榊原清則2004年,26頁

*6:今野浩一郎, 佐藤博樹『マネジメント・テキスト 人事管理入門<第2版>』(日本経済新聞出版社,2009年)84頁

マネジメント・テキスト 人事管理入門<第2版>

マネジメント・テキスト 人事管理入門<第2版>

*7:今村都南雄『官庁セクショナリズム』(東京大学出版会,2006年)223頁

官庁セクショナリズム (行政学叢書)

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