全国の698地方自治体で、給与の支払い前に一部を差し引く「チェックオフ(天引き)」を、条例で規定せずに行っていることが20日、総務省の調査で分かった。
 地方公務員法は「職員の給与は、法律または条例で認められた場合を除き、全額を支払わなくてはいけない」と規定しており、同省は是正するよう自治体側に通知する。
 3月の参院予算委員会や総務委員会で、自民党委員から「労働組合費の天引きが行われている」との指摘があり、4月に緊急調査を実施。宮城、千葉、新潟、沖縄の4県と694市町村で、条例に基づかない天引きが判明した。総務省は、今回の調査で、各自治体の天引きの具体的な目的や金額については明らかにしていない。
 原口一博総務相は20日の参院総務委で「違法な天引きが多くあったことは極めて遺憾だ。速やかに改善を要請したい」と述べた。

本記事では,総務省が実施した「チェック・オフに関する緊急自己点検の結果」に関して紹介.下名,公共部門における人的資源管理に関する講義のなかで職員給与の課題の下で「全額支払いの原則」ととも言及する「組合費の天引き」*1.同「点検」結果は,その現状把握のうえで,非常に参考.同「点検」の結果の詳細は,同省HPを参照*2
同「点検」(「調査」ではなく,「点検」という概念がもつ含意については,少し考えてみたいですね),「平成22年4月1日現在のすべての都道府県及び市区町村を対象」として,「平成22年4月9日」に実施.「点検事項」は「職員の給与の支払いについて,法律に基づくもの以外にチェック・オフを行っている実態があるか」,同「実態がある場合に,地方公務員法第25条第2項に基づく条例に根拠規定があるか」の2項目.本記事にも紹介されている同点検結果は,「都道府県」が4県(宮城県,千葉県,新潟県沖縄県),「指定都市」は0市,その他「市区町村」は694市町村との結果*3
同「点検」では「速やかな是正のための措置の方針」*4についても「点検」されており,該当した自治体については,「チェック・オフ項目すべてについて,条例の規定を整備する」方針は,都道府県では宮城県,そして,市町村では505市町村,「チェック・オフをすべて取りやめる」方針は,都道府県では0,市町村では13市町村,「チェック・オフ項目を見直し,条例の規定を整備するとともに,一部を取りやめる」方針は,千葉県と沖縄県,そして,171市町村,「検討中等」が新潟県と171市町村という状況にある.同省では「技術的な助言」として「自主的に速やかに是正に取り組まれますようお願いいたします」との「通知」*5総務大臣政務官名で,2010年5月20日付で送付.同通知では,「総務省としては,別途,改めて是正の状況について御報告をお願いしたいと考えております」とも「申し添え」*6られており,今後のモニタリング(「点検」)も想定されている模様.
自治体機構」における「二つの住民代表機関の権能の相互作用を法制度上の基軸」とされながらも,「実際には四極構造化の様相」を観察されるなかで,その構造は,「チェック・アンド・バランスの図式を描いている」*7とも解されてきたものの,その実は,四極間でのチェック・アンド・アンバランスということなのだろうか.考えてみたい.

*1:橋本勇『新版 逐条地方公務員法』(学陽書房,2002年)369頁

新版 逐条地方公務員法

新版 逐条地方公務員法

*2:総務省HP(広報・報道報道資料一覧:2010年5月)「チェック・オフに関する緊急自己点検の結果

*3:前掲注2・総務省(チェック・オフに関する緊急自己点検の結果)1頁

*4:前掲注2・総務省(チェック・オフに関する緊急自己点検の結果)2,4頁

*5:前掲注2・総務省(チェック・オフに関する緊急自己点検の結果)8頁

*6:前掲注2・総務省(チェック・オフに関する緊急自己点検の結果)8頁

*7:寄本勝美「四極構造による政治化」大森彌・佐藤誠三郎編『日本の地方政府』(東京大学出版会,1986年)189〜190頁

日本の地方政府

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