鳥取県は、日野郡の住民の声を県政に反映させるために設置した「日野郡民行政参画推進会議」を、7月で廃止する方針を固めた。発足から7年。県は「役割を終えた」と説明しており、廃止に必要な条例改正案を6月1日開会の定例議会に提出する構えだ。
 日野郡は過疎・高齢化が進み、県庁から最も遠い地域のため、片山善博前知事の肝いりで2002年7月に郡民会議を設置した。住民の公募委員は7年で延べ99人。2年の任期に7〜10回の会議を開き、県政にさまざまな施策を提案してきた。成果は少なくない。県が業者に委託してきた河川敷の清掃作業を、03年から住民自ら取り組み、この活動は全県に広がった。会議での声を受けて県は09年2月、子どもの医療をめぐる電話相談窓口を設けた。
 しかし、近年はまちづくり協議会などが整備されたほか、県と日野郡3町が事務の共同化を目指して協議会を立ち上げることで合意しており、県は「住民の声を反映させる仕組みが定着してきた」としている。公聴機能の整備を受け、県議会会派「自由民主」の議員らが郡民会議の廃止を求め、昨年度の決算審査特別委では「抜本的見直しが必要」と判断。県が昨年度初めて実施した行政の無駄を洗い出す「事業仕分け」でも見直しの対象となった。
 現在は第4期の委員18人が活動しており、県は本年度当初予算で計上した委員報酬160万円について、6月議会で減額補正する方針。現行条例は16年3月末まで郡民会議を継続する内容だが、県が想定している改正案では7月8日で廃止となる。

本記事では,鳥取県に配置された「日野郡民行政参画推進会議」の廃止方針を紹介.同会議の詳細に関しては,同県HPを参照*1
「日野郡における諸課題に関する住民の意見を県政に反映させ」,「同郡の地域の発展と住民福祉の向上に資するため」(第1条)に「委員24人以内で組織」(第3条)された同会議.同会議委員は,「応募資格者のうち10人以上の者の推薦を得て公募に応募した者」から,「公募の開始の日において年齢満40年未満の応募者から,男性及び女性それぞれ3人を,抽選により選出」されることとされており,そして,「選出された者以外の応募者」から「日南町の住民基本台帳に記録され,又は外国人登録法第4条第1項の外国人登録原票に記載された居住地が日南町である者」を8名(男女各4名),「日野町の住民基本台帳に記録され,又は居住地が日野町である者」を6名((男女各2名又は3名),「江府町の住民基本台帳に記録され,又は居住地が江府町である者」が5名(男女2名又は3名)を「抽選により選出」される.ただし,「男性又は女性の人数が同表の右欄に定める人数に満たない場合は,当該人数に満たない男性又は女性を選出するとともに,少数者と同性の少数者以外の応募者から」,同規定の「人数から少数者の人数を減じた人数の者を,抽選により選出する」(第4条第1項,第2項)とも手続が整備されている.
同委員数により,同会議では,いわゆる「クォータ制を採用」*2され,設置当初での議論の観察結果からは「子育て,教育,医療,福祉,食文化,環境,雇用など住民の日常生活に深く関わる課題が,具体的事例とともに提起されることが多かった」として,それも同会議が「通常の自治体会議と異なり,男女のバランスがとれた構成となっていることと無関係ではなかろう」*3との見解も示されている.本記事を拝読すると,「住民の声を反映させる仕組みが定着してきた」との認識により,同会議が廃止される模様.
「声」という「意見」の反映経路が確保されことで,「民衆・被統治者側からの民主主義的入力が,為政者・統治者側からの統治権力という出力に対して不足していること」を指す「民政赤字(democratic deficit)」*4は解消される一方で,「声を反映させる仕組みの定着」を通じて,同「仕組み」内に「「男性」「女性」という「視座」」も「変容させる可能性」*5が内包されたとの理解が適当なのだろうか.要確認.

*1:鳥取県日野総合事務所)「日野郡民行政参画推進会議」及び「日野郡民行政参画推進会議条例」(平成14年7月9日,鳥取県条例第54号)

*2:片山善博市民社会地方自治』(慶應義塾大学出版会,2007年)142頁

市民社会と地方自治 (叢書21COE‐CCC多文化世界における市民意識の動態)

市民社会と地方自治 (叢書21COE‐CCC多文化世界における市民意識の動態)

*3:前掲注2・片山善博2007年:142頁

*4:金井利之「大都市自治体制度と「民政赤字」」『ガバナンス』No.97,2009年5月,27-28頁

ガバナンス2009年5月号

ガバナンス2009年5月号

*5:田村哲樹『政治理論とフェミニズム』(昭和堂,2009年)141頁

政治理論とフェミニズムの間―国家・社会・家族

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