犬猫の殺処分回避で全国的に注目されている熊本市動物愛護センター(同市小山)は25日、犬3匹を殺処分したことを明らかにした。26日も犬3匹の処分を決めている。犬の殺処分は約8カ月ぶりで本年度は初めて。昨年度は1匹だったが収容数が限界を超えていたこともあり、「苦渋の決断」(同センター)を余儀なくされた。
 同センターで一度に収容できるのは施設規模から50〜60匹程度が限界。昨年度から満杯状態が続いていたが、4月以降は収容数が増加傾向にあるのに対して、元の飼い主に引き取られるケースが例年より少なく、今月11日には過去最高の82匹まで増えた。その後、譲渡先が見つかるなどして一時は70匹を割ったが、24日時点で78匹と依然として限界を超えていた。
 昨年9月以来となる殺処分の理由について、同センターは「限られた空間に犬の数が多すぎるため、感染症が一気に広がる恐れがあるほか、けんかで死亡するケースも心配され、譲渡される犬まで死んでしまいかねない」と説明する。今回の殺処分6匹はいずれも成犬で、しつけが難しいなど譲渡先が見つかる可能性が低いという。今回以降の殺処分は予定していないとしている。
 同センターは「ボランティアの市民の協力も得ながら一生懸命に犬の命をつないでいる。飼い主が犬を迷子にさせないこと、最後まで責任を持って飼うことへの理解を求めたい」と話している。(川崎浩平)

本記事では,熊本市における動物愛護センターの殺処分の取組を紹介.
2010年5月21日付の信濃毎日新聞にて紹介されているように,同「市動物愛護センターは犬の譲渡会の参加者に,ガスによる殺処分の映像を見せ」る等の「飼い主に見捨てられたペットの厳しい現実を知ってもらう」ことや,「引き取りを求める飼い主を職員が説得」,「出前授業で子どもたちに命の大切さを伝える」等の「取り組みを積み重ねて,「09年度の殺処分は犬1匹,猫6匹にまで減」*1るという「殺処分を回避する取り組み」*2が進められてきた同センター.2010年5月14日付の熊本日日新聞の報道を拝読すると,2010年「4月から」5「月13日までに84匹の犬を収容」され,「このうち約1割の8匹」は,「3月23日に合併した旧城南,植木町で保護した犬」*3とのこと.本記事でも紹介されているように,「一度に収容できるのは施設規模から50〜60匹程度が限界」のなかで5月「11日には過去最高の82匹」となり,2009年「9月以来となる殺処分」の実施.増加要因としての「合併効果」については,要確認.
打越綾子先生による動物愛護管理行政における「政策体系」の観察結果からは「無責任な飼育放棄や遺棄が行政による犬・猫の引取り・致死処分を引き起こしている」との現状分析とともに,「どこまでそれをコントロールできるのだろうか」*4,そして,「事例や解決方法の一般化可能性が低い」*5との分析が示されている.「動物(愛護動物)を愛護する気風という良俗」*6を考えてみると,悩ましい課題.

*1:信濃毎日新聞(2010年5月22日付)「犬と猫 捨てるのも救うのも人

*2:熊本日日新聞(2010年5月14日付)「保護犬増加、もはや限界 このままでは殺処分も

*3:前掲注2・熊本日日新聞(2010年5月14日付)

*4:打越綾子「自治体における政策調整の構造的課題」『公共政策研究』第6号2006年,97頁

公共政策研究〈第6号〉特集 政策の総合調整

公共政策研究〈第6号〉特集 政策の総合調整

*5:前掲4注・打越綾子2006年:97頁

*6:青木人志『日本の動物法』(東京大学出版会,2009年)75頁

日本の動物法

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