小松市監査委員は、市民の目線で市役所の仕事を監査してもらおうと、「しみん・ご意見番」を募集する。市民感覚を裁判に生かそうと導入された裁判員制度の監査版ともいえるもので、全国的にも例を見ない制度。同市の潮津勇・代表監査委員は「開かれた監査を目指したい」と話している。
 市では昨年度から、すでに税理士3人を補助員として委託し、過去の数字が適法かどうか専門家の目でチェックしてもらっている。今回の「しみん・ご意見番」は、市の政策を将来的にどうすべきかについて、市民から意見を聞くためのもので、事前監査や本監査など4回の会議に参加してもらい、税金の効率的な使い方や市民にとって便利な施設運営のあり方などを監査委員と一緒に考えてもらうという。
 監査委員事務局によると、地方自治法199条8項には、「監査委員が必要と認める時、学識経験者から意見を聞くことができる」とあるが、実務上、住民監査請求などで一般市民から常識的判断を聞く必要も想定しており、学識経験者については幅広く解釈できるという。
 募集対象は、市内在住の25歳以上の人で、募集人員は5人程度。A4判用紙に、監査でやってみたいことを400〜800字程度にまとめ、参加してみたい部署や行政分野、住所、氏名、年齢、職業、男女の別、連絡先電話番号を記入。6月1〜18日に、〒923・8650 小松市小馬出町91、監査委員事務局に申し込む。書類審査と面接で選考する。問い合わせは同事務局((電)0761・24・8142)へ。

本記事では,小松市の監査委員における学識経験者意見聴取の取組.
「平成十四年の改正」*1によって設けられた,地方自治法第199条第8項における「監査委員は,監査のため必要があると認めるときは,関係人の出頭を求め,若しくは関係人について調査し,若しくは関係人に対し帳簿,書類その他の記録の提出を求め,又は学識経験を有する者等から意見を聴くことができる」との規定.同規定に対する同市における解釈に基づく取組.本記事によると,「学識経験者」を「幅広く解釈」され,「市民から意見」を聴取.大変興味深い.
同取組の詳細に関して,同市監査委員HP*2を確認させていただくも,現在のところ,把握できず,残念.本記事を拝読すると,「市内在住の25歳以上の人」を対象に「5人程度」が選考され,「事前監査や本監査など4回の会議に参加」される予定とのこと(下名も参加してみたいですね).
2010年5月24日に開催された第4回の地方行財政検討会議では,「資料2地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方(第二分科会関係)(案)」*3が配布され,「複数の階層の監査主体が設けられているにもかかわらず、それぞれの監査の対象及び観点は明確に区分されていない」との現状認識等より「独立性・専門性に限界」*4との見解が示されており,あわせて,「現行の監査委員制度、外部監査制度については,廃止を含め,ゼロベースで大胆に制度を見直すこと」として,「地方公共団体の内部の主体が担う監査と,地方公共団体の外部の主体が担う監査を設けることとすべき」として,「それぞれの監査主体が担う監査の対象及び観点は制度上も明確に区分される必要」*5との「考え方」が案として示されており,まさに「離隔距離」*6の確保が「考え方」の中心にある模様.
同「考え方」では,「監査を担う人材」に関しては,「地方公共団体の外部の監査を担う主体」については,「監査証拠を収集し,監査調書を体系的に作成した上で,意見を表明するための合理的な基礎を形成するという組織的な監査手法等に関する専門的な知識を有し,同時に,行財政制度,特に財務会計制度について必要な知識を備えた者であること」が想定されているとして,あわせて,「こうした知識を有する者についての資格制度のほか,地方公共団体から独立した機関,複数の地方公共団体が共同して設立した機関に人材を集約する制度についても検討する必要」*7と,その人材については資格任用制度的な「考え方」が示されている(同資格制度の「考え方」,「士業」(サムライ業)という資格認定制度を通じた専門性の確保と業務独占が想定されているのでしょか.2009年11月18日付の本備忘録でも若干言及した「士業の行政学」を考えるうえでは,興味深そう).
同「考え方」が,仮に制度化された場合,本記事の同市のような取組は,その後,制度に包摂される機会が提供されることになるの否かは,同会議における審議状況は,要経過観察.
なお,蛇足.同会議第一分科会による「考え方」のまとめである「資料1 地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方(第一分科会関係)(案)」*8を拝読すると,「地方公共団体の基本構造」なる概念が,同会議第1回に提出された時点*9と比すれば,その範囲・内容の変遷(争点化)の様相も窺え,興味深い.これは,少し考えてみたい.

*1:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)18頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*2:小松市HP(課別で探す各課のトップページ )「監査委員事務局

*3:総務省HP(組織案内研究会等地方行財政検討会議第4回(開催日平成22年5月24日))「資料2 地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方(第二分科会関係)(案)

*4:前掲注3・総務省(第4回地方行財政検討会議:資料2地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方(第二分科会関係)(案))4頁

*5:前掲注3・総務省(第4回地方行財政検討会議:資料2地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方(第二分科会関係)(案))5頁

*6:金井利之「会計検査院政策評価」『行政の評価と改革』(ぎょうせい,2002年)60頁

行政の評価と改革 (年報行政研究 (37))

行政の評価と改革 (年報行政研究 (37))

*7:前掲注3・総務省(第4回地方行財政検討会議:資料2地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方(第二分科会関係)(案))7頁

*8:総務省HP(組織案内研究会等地方行財政検討会議第4回(開催日平成22年5月24日))「資料1 地方自治法抜本改正に向けての基本的な考え方(第一分科会関係)(案)

*9:総務省HP(組織案内研究会等:「地方行財政検討会議第1回(開催日平成22年1月20日))「参考資料3検討項目の例