厳しい財政状況の下、事業見直しを進めている横浜市は8月2、3の両日、第三者の視点で事業内容を検証する「横浜市事業評価会議」を開催する。6月14日から29日まで市民の構成メンバーを募集する。
 同会議は、公募市民、市議、有識者24〜26人で構成、2班に分かれて事業評価を行う。対象テーマは(1)歳入確保の取り組み事業(2)既存事業のあり方検討事業(3)積極的な取り組みが必要な事業―の3点。市民、市議が参画する事業評価の実施は初めて。対象事業はあらかじめ市が選び、会議のメンバーに示した上で、議論してもらい方向性をまとめる。最終結論とはせずに、2011年度の予算編成の中で方向性を反映させる方針。林文子市長は「外部の厳しい視点を期待するが、縮小・廃止の議論にとどまらず、民間投資を誘導し歳入確保につながる事業など、前向きな視点もぜひ入れてほしい」とした。
 市民の応募はホームページ(http://www.city.yokohama.jp/me/somu/shigoto/jigyohyoka/)から。

本記事では,横浜市における「第三者」による事業評価の取組について紹介.同評価制度の詳細については,同市HPを参照*1
2010年6月12日付の毎日新聞による報道を拝読すると,同市では「外部評価は04,05年」にいわゆる「事業仕分けを実施」されたものの,「短時間での判定に職員の反発が強かったため,その後は実施していな」いものの,「市はすでに職員による事業の見直し」を実施されており,「10年度予算の編成」においては「122億円の見直し効果」*2があるなかでの,外部評価の取組.「事業仕分けは本来,『決算審査』」*3という制度目的との齟齬もまた,その要因の一つなのだろうか.
同制度では,「事業の縮小・廃止の議論のみにとどまらず,「歳入確保の取組事業」や「積極的な取組が必要な事業」も対象」とされており,具体的には,「歳入確保の取組事業」に関しては「歳入確保にむけた民間投資を誘導する事業で,その効果を明確にすべき事業」,「既存事業のあり方検討事業」に関しては「国・県・市・民間で重複感のある事業」,そして,「積極的な取組が必要な事業」として「市民ニーズが高く,事業の必要性もあるが,後年度負担が大きいなどの課題があり,新たな手法など建設的な意見をいただきたい事業」をその対象とし「幅広く事業のあり方を議論」を行い,「発言内容を踏まえ,予算編成の中で事業の方向性を検討・判断」*4を行うことが目的とされている.
2010年4月24日付の本備忘録にて取り上げた藤沢市における,公募手続を経て選出された住民を加えた,いわゆる「事業仕分け」の取組,2010年6月8日付の本備忘録にて取り上げた出雲市における,無作為抽出を経て選出された住民による,いわゆる「事業仕分け」の取組があるものの,いずれも有識者と,二つの選考手続を経て参加される住民から構成される評価体制.本記事で紹介される同市の「外部評価」制度.
同市における,いわゆる「公務住民」*5として公募に際して,「メリット・システム」に準じた選出手続は,厳格そう.具体的には,まずは,「最高点45点」として「専門知識等」「応募の動機・目的」「横浜市の今後の施策に関する意見」に関する「審査事項」を「5段階(最高5点〜最低1点)で採点」され,「書類選考合計点36点以上」を選出される「書類選考(1次選考)」と,その結果を踏まえて選出された方に対し実施される「面接選考(2次選考)」では,「応募の動機や目的」「横浜市の施策や事務事業に対する知識・関心」「市民としての幅広い見地からの課題意識」「主張の内容」「人柄が集団討論に適している」に関する「審査事項」を,1次審査と同様に「5段階(最高5点〜最低1点)で採点」を行い,「面接選考合計点40点以上の方の中」から「合格者を決定」を行い,更にその中から「構成員または補欠構成員の依頼」*6するという,厳格な基準と手続を経て選考が行われることとなる.
同取組では,「公募住民」と「有識者」ととともに,「市議」が参加されていることは.興味深い.本記事でも紹介されているように,同取組では「2班で実施」され,「1班」の構成は,「市民」が「2〜3名」,「有識者(進行役を含む)」が「4名」,「横浜市会議員」が「6名」*7を予定とされている模様.同市会では,「自由民主党」「民主党」「公明党」「無所属クラブ」「日本共産党」「ヨコハマ会議」「ネット横浜」「民主クラブ」と「無所属」*8という,8会派+無所属から構成されているものの,上記の「6名」×2班の構成配分に対して,どのような配分がなされるのだろうか.そして,そもそも,上記のように,「市民」*9としての住民の側面をもつ,「公務住民」としての「公募住民」の選考手続における厳格な基準に対して,いわば,「代理人」である議員の皆さんの更なる「代理人」として整理することが可能とも考えられる,「公務議員」(公務以外の議員の類型化が可能であるのか,いささか自信はございませんが),又は「公募議員」の選考基準は,どのように整備・実施されるのだろうか.これまた,考えると興味深い制度的課題.
同市の同取組は,要確認.

*1:横浜市総務局しごと改革推進課)「横浜市事業評価会議

*2:毎日新聞(2010年6月12日付)「横浜市:市民参加で事業評価 「判定」は下さず−−市役所で公開 /神奈川

*3:枝野幸男『「事業仕分け」の力』(集英社,2010年)159頁

「事業仕分け」の力 (集英社新書)

「事業仕分け」の力 (集英社新書)

*4:横浜市総務局しごと改革推進課横浜市事業評価会議)「「横浜市事業評価会議」を開催します」(平成22年6月11日,総務局しごと改革推進課長)

*5:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)223〜224頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*6:横浜市総務局しごと改革推進課横浜市事業評価会議)「「横浜市事業評価会議」構成員 市民募集選考基準

*7:前掲注1・横浜市横浜市事業評価会議)

*8:横浜市HP(横浜市会議員名簿)「会派別名簿

*9:前掲注5・礒崎初仁・金井利之・伊藤正次2007年:223〜224頁