自治体でも事業仕分けが必要と、世田谷区は十九日、政策検証委員会を区役所で開いた。学識経験者や公募区民の委員十三人が、行政と民間の役割分担などの視点で施策の検証を始めた。二日間かけ三つの視点で討議し、結果を七月に区長に提言、区は提言を来年度予算に反映させる。
 この日は、世田谷市民大学などの生涯学習施策が取り上げられた。市民大学では十八歳以上の区民が二年間、一線の学者から政治や社会、経済などを学ぶ。委員からは「区内には大学が多いのに」と否定的な声。
 区は「自治の担い手を育てる理念を大事にしたい」と訴えたが、委員は「当初の目標が達成されているのか」と疑問を投げかけた。「行政の講座の方がいろんな人が平等に参加できる」と理解を示した委員も「期間を短くするなど規模を縮小しては」と現状維持には難色を示した。この種の審議会では初めて公開したが、傍聴者は区議や審議会の委員ら約二十人。区内の法律事務所職員の女性(54)は「公開だから委員は遠慮がち」と話すなど、政府の事業仕分けに比べると迫力不足のようだった。二十日はがん検診や子ども医療費助成などが取り上げられる予定。(松村裕子)

本記事では,世田谷区に設置された政策検証委員会の取組を紹介.事業仕分的な外部評価の一種類の模様.同取組に関しては,同区HPを参照*1
同取組は,「平成23年度の予算編成」に対して「施策,事業等の見直しを重点的に行う」とともに,「中長期の視野に立って,施策の方向性を見出し,今後の適正な区政運営の実現をめざす」ことを目的に実施されており,「学識経験者委員7名」と「区民委員6名」の「13名」の委員により「行政責任と民間活用のあり方」「中長期の課題に対応する方向性」「横断的なテーマによる施策」*2の3つの視点から,7つの「素材」*3を「検証」.
いわゆる「事業仕分け」における評価者の構成のうち,学識経験者以外の参加形態としては,2010年4月24日付の本備忘録にて取り上げた藤沢市のように公募住民の参加形式,2010年6月8日付の本備忘録にて取り上げた出雲市のように,無作為抽出により選出された住民の参加方式,更には,2010年6月14日付の本備忘録にて取り上げた横浜市のように,公募住民の参加とともに,同市議会議員の参加がある形式等が観察されるなかで,同区の取組は,公募方式.
本記事では,「政府の事業仕分けに比べると迫力不足のよう」とも評されている同取組.「報道のありよう」という「見え方」,そして当事者による「見せ方」により,いわゆる国レベルでの「事業仕分け」は,「劇場型」との認識が示されることがある一方で,「仕分け作業の中身について扇情的にはやっていません」*4との現状認識を持たれている,ともある.
実際の取組自体は,むしろ,「即対象的な見地」から「怒りも興奮もなく」*5進められており,その結果,いずれの評価者も「「没主観的」な専門家」*6として,いわば「評価官僚制」*7と化する蓋然性も内包することが常態の模様.
自治体行政内部での事業効見直しを図る機構が整備され,運用される「協調行動」を期待されなくはないものの,「非協力行動」を取ることが「望ましい結果」に至ると判断されるのか,「社会的ジレンマ*8に至りやすいとも考えられなくもない,内部統制機構の運用.一方で,外部による監視と統制についても,「監視と統制を行うということ自体が一種の「公共財」」とした場合,その「コスト」により「二次的ジレンマ」*9が生じる蓋然性も想定されなくもない.
監視と統制の観点からも,同取組を考えてみたい.

*1:世田谷区HP(行政情報のトップページ)「行政評価

*2:世田谷区HP(行政情報のトップページ行政評価第1回(2010年5月21日開催))「資料1世田谷区政策検証委員会の実施概要資料

*3:世田谷区HP(行政情報のトップページ行政評価第1回(2010年5月21日開催))「資料3世田谷区政策検証委員会 検証の「視点」と「素材」(案)

*4:枝野幸男『「事業仕分け」の力』(集英社,2010年)158頁

「事業仕分け」の力 (集英社新書)

「事業仕分け」の力 (集英社新書)

*5:マックス・ウェーバー『支配の社会学Ⅰ』(創文社,1960年)93頁

支配の社会学 1 (経済と社会)

支配の社会学 1 (経済と社会)

*6:前掲注5・マックス・ウェーバー1960年:93頁

*7:南島和久「NPMをめぐる2つの教義」山谷清志編著『公共部門の評価と管理』(晃洋書房,2010年)33頁

公共部門の評価と管理

公共部門の評価と管理

*8:山岸俊男社会的ジレンマ』(PHP出版,2000年)17頁

社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)

社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)

*9:前掲注8・山岸俊男2000年:98頁