鳥取県は21日、職員の時間外勤務について、4月から3カ月間の総時間が前年同期と比べて34・5%減ったと発表した。残業減に向けて全庁運動を始めた5月以降は40%を超す削減効果があった。3カ月間の実績では、全体で5万4千時間の減少となり、約1億3千万円の人件費を抑える結果となった。
 県は今後、夜間に住民説明会や用地交渉などのやむを得ない業務があるケースについて、出勤時間を遅らせて時間内勤務とする「特例勤務」を認める方針だ。県人事企画課によると、職員一人の3カ月間の平均時間外勤務は前年同期比34%減。月別にみると、4月は16%減にとどまったが、5月は41・6減、6月は45・4%減となった。所属別では、県民課が83・7%減と削減率でトップ。続いて危機管理チーム82・9%減、中部総合事務所健康支援課82・5%減となった。3カ月間に1カ月でも月60時間を超す時間外勤務となった職員数は計173人で、前年同期の366人を半数以上も下回った。5、6月の2カ月間の休日勤務者も前年同期比35・3%減となった。
 減少した要因としては▽会議の終了時刻の設定▽時間外勤務の場合は事前に申し出ることを徹底▽業務分担の見直し―などを挙げている。

本記事では,鳥取県における職員の時間外勤務の現状を紹介.2010年「4月から3カ月間の総時間が前年同期と比べて34.5%減」との結果とのこと.同結果に関しては,同県において取り組まれている「全庁運動」である「スマート県庁5(GO)・5(GO)プロジェクト)」の取組の一環の模様.同取組については,同県HPを参照*1
同取組では「全庁共通」の取組と「一部所属による試行」の2区分がされている.前者の「全庁共通」の取組は,更に2つが行われており,まずは,「一斉退庁及び午後7時以降消灯の実施」として,「緊急用務のある職員以外は定時に退庁」し「午後7時前には各部局責任者が巡回して消灯を確認する」こと,「当日の庁内放送(始業時及び終業時)で呼びかけ」を行うこと,そして「プロジェクト実施の知事部局のみならず.他任命権者にも協力を依頼」が行われている.もう一つは,「午後4時以降の新たな業務指示,時間外の協議の原則禁止等の取組実施」がされている.後者に関しては,協議に関して「午後4時」迄という時間制限が設けられることに加えて,本記事を拝読すると「会議の終了時刻の設定」もされているようであり,時間外勤務の抑制のみならず,「早く終わる会議は良い会議」*2としての効用もまた期待が出来そう,後者の「総務部本庁所属,各部局主管課」という「一部所属による試行」についても,こちらも2つある.まずは,「「事務作業集中タイム」の実施」であり「午後4時から5時まで,職員が各自の業務に集中して取り組む時間帯を設定」されている.もう一つは,「がんばるバッジ」の着用」であり,「時間外勤務を命じられた職員に対して,退庁予定時刻に応じたバッジ着用を義務付け」*3られている.
「官庁,都道府県庁など,行政組織に所属する個々の職員の勤務に服する時間」とされる「勤務時間」と「それら行政組織体の執務態勢,つまり閉庁時間であり,行政を執行する立場からの対応を示す」時間ともされる「執務時間」*4と,同一庁舎空間に流れる「勤務時間」と「執務時間」という二つの時間.2009年10月14日付の本備忘録にて取り上げた神奈川県における超過勤務の「ゼロ時間」化の取組では,前者の「勤務時間」とともに,後者の「執務時間」に関しても,2010年5月からは「平成22年5月」と「6月」には「従来の「全庁ノー残業デー」(毎週水曜日及び毎月の給料の支給定日)を「19時閉庁の日」」とされ,今月「平成22年7月」からは「第2週及び第4週の平日を「19時閉庁の日」」とされており,そして,来月「平成22年8月」からは「平日毎日を「19時閉庁の日」」*5と「19時閉庁」の取組を段階的に実施されており,個々の職員レベルにおける「勤務時間」管理では止まらず,庁舎内部による外部的規制を通じた「執務時間」管理により,その達成を進められている.
勤務管理に関する職員自身の「行動様式」としては,時間がかかるような「ルーティン作業を行う」業務を「切り離して別の組織に実施させる」,又は,「骨の折れる」業務を「切り離して別の組織に処理させる」ことを通じて,個々の職員レベルにおける勤務時間を「整える」*6,いわば「勤務時間形成(office hours-shaping)」に至るような「日常的な行動様式」は観察できそうではあるものの,実際には,上記のように,勤務時間及び執務時間の個々の職員レベル以外の,庁舎内部による外部的規制を通じて管理が行われることが現状.
では,何故,個々の職員レベルでは,勤務時間を超過するか,という観察上の問いを仮に想定した場合,勿論,そもそも各個々人の職員に分担される業務に対して,その人工数が不一致な現状あることが考えられることに加えて,「職場組織の形成原理」としての「大部屋主義」*7による「同調性」*8圧力の存在も想定されなくもない.ただ,「執務時間形成(office hours-shaping)」に至るような「日常的な行動様式」に至る執務環境管理については,考えてみると興味深そう,考えてみたい.

*1:鳥取県HP(県政情報広報・広聴報道提供資料県政一般・報道提供資料)「:時間外勤務縮減に向けた全庁運動スマート県庁5(GO)・5(GO)プロジェクト)の実施

*2:森田朗『会議の政治学』(慈学社,2007年)2頁

会議の政治学 (慈学選書)

会議の政治学 (慈学選書)

*3:前掲注1・鳥取県(時間外勤務縮減に向けた全庁運動スマート県庁5(GO)・5(GO)プロジェクト)の実施)

*4:石橋孝雄編『地方公務員制度2 勤務条件・利益の保護』(ぎょうせい,1991年)3頁

勤務条件・利益の保護 (地方公務員制度)

勤務条件・利益の保護 (地方公務員制度)

*5:神奈川県HP(記者発表資料2010年5月 神奈川県記者発表資料)「県本庁舎等における「19時閉庁」の取組みを実施します!」(平成22年5月11日,記者発表資料)

*6:真渕勝『官僚』(東京大学出版会,2010年)91頁

官僚 (社会科学の理論とモデル)

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*7:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)60頁

官のシステム (行政学叢書)

官のシステム (行政学叢書)

*8:リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン『実践行動経済学』(日経BP社,2009年)95頁

実践 行動経済学

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