県は9日、水戸市の県庁三の丸庁舎(地上4階地下1階)が耐震診断の結果、震度6強の地震で倒壊の恐れがあると発表した。当面は地下1階から地上3階の使用を継続する方針だが、特に診断結果が悪かった4階については撤去を検討する。4階部分は水戸市が市役所機能の一部移転を計画中で、今回の診断結果により、計画は暗礁に乗り上げた格好となった。
 県管財課によると、耐震診断は昨年11月から今年3月にかけて実施。その結果、Is値(構造耐震指標)は地下1階から地上3階が0・35〜0・88、4階が0・04〜0・16と判明した。Is値は0・6未満の場合、倒壊の恐れがあるとされる。県は、地上3階までは耐震壁の新設などによる補強を検討しているが、4階部分は補強しても効果がないため、同課は「撤去が望ましい」としている。
 一方、水戸市中心市街地の活性化に向けて、三の丸庁舎への一部機能移転を検討していただけに大きな痛手となった。加藤浩一市長は「引き続き、県との協議を進めていきたい」とコメント。市では地下1階から地上3階部分で使用可能な場所がないかなどを含め、県と協議を続ける予定。
 三の丸庁舎は1930年、鉄筋コンクリート構造の地下1階から地上3階部分が完成。54年に鉄骨、鉄骨コンクリート構造の4階部分が増築された。99年の県庁の新庁舎完成で大部分の部署が移転したが、現在も地下1階から地上3階に五つの県の機関や茨城大インフォメーションセンターなど14の外部団体が入居している。同庁舎は趣のある外観が人気で、映画やテレビドラマの撮影にも数多く使われているが、今後は4階での撮影を見合わせる。
 県では3月時点で耐震診断の結果を把握していたが、外部団体には9日になって耐震診断結果を伝えた。同課は「関係部署と調整していた」と説明している。

本記事では,水戸市における市役所機能移転の取組を紹介.市役所機能の移転を検討されていた,茨城県庁における「三の丸庁舎」.同庁舎に関しては,同県HPを参照*1
現在は,3階までを利用.本記事を拝読すると,2009年「11月から」2010年「3月にかけて実施」された「耐震診断」の結果,「0.6未満の場合」には「倒壊の恐れがある」とされる「構造耐震指標」では,「地下1階から地上3階が「0.35〜0.88,4階が0.04〜0.16と判明」され,「地上3階までは耐震壁の新設などによる補強を検討」されているものの「4階部分は補強しても効果がない」として「撤去が望ましい」との方針にある模様.2008年12月7日付の本備忘録において項目立てを試みた本備忘録における妄想的・断続的観察課題のひとつ「庁舎管理の行政学」の観点からは,「第1章:建築と維持のポリティクス」としても考えさせられる.
もちろん,執務環境としての安全は何より,そして,耐震費用の観点が不可欠.一方で,本記事を拝読する限りでは,撤去が想定されている4階部分に関しては,1954年に「増築」されたもののではあるものの,「自治省及び建設省の基準でアプリオリに県庁の規模が決まってしまう」「一九八〇年代」の「県庁舎バブル」*2の時代に先立つ建築として,「建築遺産の社会的価値」も少なからず有するとすれば,「耐震補強,免震化など,保存のための技術」を通じた「保存の形態」の「拡大」*3は期待できないものなのろうか.悩ましい.今後の検討状況は,要観察.

*1:茨城県HP(県庁舎案内茨城県庁舎の概要)「[三の丸庁舎>フロア別案内マップ:title=三の丸庁舎:フロア別案内マップ]」

*2:御厨貴『権力の館を歩く』(毎日新聞社,2010年)279頁

権力の館を歩く

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*3:鈴木博之「記憶―建築保存は都市のお荷物か」鈴木博之東京大学建築学科編『近代建築論講義』(東京大学出版会,2009年)143頁

近代建築論講義

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