生物多様性基本法地方自治体に求めている「生物多様性地域戦略」を策定した都道府県は8道県にとどまることが、読売新聞の調査でわかった。
 4県は策定着手が2012年以降にずれ込む見通しで、未定・検討中も6県。今年3月に閣議決定した生物多様性国家戦略は、生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)が開かれる12年までに全都道府県が策定に着手することを目標にしているが、目標達成は困難な状況になっている。
 COP10が18日から名古屋市で開かれるのを前に、全都道府県にアンケート調査した。地域戦略を策定しているのは、基本法施行前の08年3月に作った埼玉、千葉を先駆けに、09年が愛知、滋賀、兵庫、長崎、今年が北海道、栃木。14都府県は「策定作業中」で、15府県は「12年までには着手する」と回答した。

本記事では,都道府県レベルにおける「生物多様性地域戦略」の策定状況を紹介.読売新聞による調べ.
生物多様性基本法第13条により,「単独で又は共同して,当該都道府県又は市町村の区域内における生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画」の策定努力が規定されており,環境省が設けられた「生物多様性地域戦略策定の手引き」を拝読させて頂くと,「一般的に地方公共団体が策定する計画は,各都道府県や市町村といった行政区域を単位に策定され」るものの,「生物多様性に関する問題は河川の流域や山地などのように行政区域とは無関係な区域をまとまりとすること」*1もまた企図されており,同戦略における「対象区域」は必ずしも都道府県,市町村の区域を限定されていない模様.実際に,「対象区域」を都道府県区域を越えて設定されている,いわば,共同計画化の取組は観察できるのだろうか.個々の戦略は,要確認.
そのため,同戦略の「構成については,各地方公共団体がその地域の特性やこれまでの取組等を踏まえて検討し,それぞれに工夫していくことが望まれ」ともあり,「総合的かつ計画的に構ずべき施策の設定の仕方」に関しては,「個別の具体的な施策を分類・整理して示すパターン」や「重点的に実施するプロジェクトをいくつか掲げて関連する施策を示すパターン」,「戦略として整理するパターンなど,様々なパターンが想定」*2されている.「様々な分野が関係」*3することもあり,「一定の政策分野の課題を体系化して整理し,長期的な活動目標を掲げる」「政策分野別基本計画」*4とも整理ができそうな同戦略.
一方で,各自治体の同戦略策定への「不確実性に対する積極的な準備」)*5としてか,「生物多様性地域戦略の構成の検討に当たっての参考」として,例えば,「生物多様性地域戦略の構成イメージ」*6等のいくつかの形態が提示されており,結果的な同戦略の形態の収斂化も想定されなくもなさそう.
「「多様」であることは、単に生物の種数等が多ければ多いほど良いということではない点に注意が必要」*7との認識から,生物の多様性を企図される同戦略(計画)において,その戦略(計画)間での多様性は観察できることができるのだろうか.同戦略の策定結果に関しては,興味深い.

*1:環境省HP(自然環境局生物多様性センター生物多様性生物多様性地域戦略策定の手引きについて)「生物多様性地域戦略策定の手引き」36頁

*2:前掲注1・環境省生物多様性地域戦略策定の手引き)38〜39頁

*3:前掲注1・環境省生物多様性地域戦略策定の手引き)5頁

*4:打越綾子『自治体における企画と調整』(日本評論社,2004年)11頁

自治体における企画と調整―事業部局と政策分野別基本計画

自治体における企画と調整―事業部局と政策分野別基本計画

*5:チェスター・I.バーナード『組織と管理』(文眞堂,1990年)165頁

組織と管理

組織と管理

*6:前掲注1・環境省生物多様性地域戦略策定の手引き)23頁

*7:前掲注1・環境省生物多様性地域戦略策定の手引き)6頁