逗子市は12日までに、市が要綱に基づいて設置している約40の委員会と協議会について、条例によって設置すべきものを選定する作業を進めていることを明らかにした。「市まちづくり市民委員会」をめぐる住民監査請求の結果、監査委員が同委員会は市の付属機関であり、条例ではなく要綱に基づく設置は違法と判断したためで、新年度からの是正へ2月までに選定を終えたいとしている。
 発端は昨年10月の市議による住民監査請求。地方自治法は、任意に付属機関を設置する場合は条例によらなければならないと規定していると指摘し、市長に対し、委員に支払った報償金計51万円を市に返還するよう求めた。市監査委員は11月、同委員会を「付属機関に該当する組織体」とし、「違法な公金支出」と認める一方、支払い済みの51万円については「各委員が任務を遂行しており、市損害は生じていない」として請求を棄却。市議は12月、棄却を不服として、市長に損害賠償を求める住民訴訟横浜地裁に起こした。
 市長は「委員会は諮問・答申という形をとっておらず、地方自治法の運用で監査委員と解釈が違っていたが、その意見を真摯(しんし)に受け止めたい。包括的な条例にするのか、個別の条例にするのかなど検討している」と説明。行政訴訟については「訴状が届いていないのでコメントできない」と話している。

本記事では,逗子市において設置された委員会・協議会の条例設置化への選定作業の取組について紹介.同取組の背景としては,本記事にて報道されているように,同市が設置された「逗子まちづくり市民委員会」の設置に対する住民監査請求の結果を踏まえた対応の模様.同住民監査請求の結果に関しては,同市HPを参照*1
「付属機関といえども普通地方公共団体の行政組織の一環をなすものであることから,他の行政組織と同様に議会の統制の下に置くことが必要である」*2として,執行部の機構・機関の膨張抑制を図ることからも議会による統制目的と,当該委員会の委員等への処遇(報酬及び費用弁償等)を適用目的(地方自治法第203条第1項,第5項)目的から,「附属機関」の設置においては条例設置が原則.他方で,「しばしば,私的諮問機関で重要な政策の方向性が決定され,条例に基づく審議会等以上で実際以上の意義がある」*3と,要綱設置の「場」や「会議体」は幅広く採用されているとの観察結果もある.
本記事でも紹介されている同住民監査請求は,請求自体は「棄却」*4.ただ,同監査委員の「付属機関の該当性」の判断を拝読させて頂くと,「知識経験を有する者をはじめ,本市執行機関の補助職員以外の市民等から組織されており,市民等の意見を積極的に取り入れるための意見交換や提言の場として設置され,たとえ合議による意見の集約の必要性がない,意思決定権限のない組織だとしても,要綱第2条の規定により審議し,意見や提案もなされ」ていること等から,「地方自治法第138条の4第3項に規定する付属機関に該当する組織体と認めるのが相当」*5との見解が示されている.
設置に要するコストの観点からは,要綱設置の会議体への「同型化(isomorphism)」*6の様相も窺えそうではあるものの,2008年6月13日付の本備忘録でも紹介した,条例設置の付属機関,要綱設置の会議体間での自治体における「審議会等制度」の「制度的選択」の分岐点について考えさせられる課題.

*1:逗子市HP(逗子市の監査監査結果平成22年度に実施した監査等)「住民監査請求の監査結果(平成22年11月30日公表)

*2:木村俊介「附属機関・専門委員」高部正男編著『執行機関』(ぎょうせい,2003年)178頁

執行機関 (最新地方自治法講座)

執行機関 (最新地方自治法講座)

*3:宇賀克也『地方自治法第2版』(有斐閣,2007年)187頁

地方自治法概説 第2版

地方自治法概説 第2版

*4:前掲注1・逗子市(住民監査請求の監査結果(平成22年11月30日公表))10頁

*5:前掲注1・逗子市(住民監査請求の監査結果(平成22年11月30日公表))9頁

*6:DiMaggio Paul J.and Walter W. Powell.1991 in Walter W. Powelland Paul J.DiMaggio,The New Institutinoalism in Organizational Analysis,Chicago UP,66

The New Institutionalism in Organizational Analysis

The New Institutionalism in Organizational Analysis