秋田市介護・高齢福祉課の職員2人が昨年8月から今年1月にかけて、介護保険法に定められた介護認定審査会を開かずに、計495人の被保険者を独断で「介護認定」していたことが10日、分かった。
 同日会見した穂積志市長は「介護保険制度の根幹を揺るがしかねない不適正、不適当な行為で、断じて許されない。厳正な対処をしていきたい」と述べて陳謝した。同課の田口光宏課長によると、本年度の認定申請数が当初の見込みを上回り、昨年夏ごろから書類の処理が滞るようになったという。担当の50代と40代の主席主査は独自の判断で、審査会を開かずに被保険者に認定結果を通知し、被保険者証を送付した。2人は「書類がたまり、いら立ちがあった。被保険者に早く認定結果を届けたいという思いもあった」と話しているという。

本記事では,秋田市における「介護認定」の取組を紹介.
「介護認定」は「利用者の金銭的負担はない」ものの,一方で「保険者である自治体の事務負担は,非常に大きい」*1ともされ,本記事を拝読されて頂くと,同制度運用に伴う書類処理に対して,「利用者」の「ニーズに答えられない」ことへの「ジレンマ状態」*2のなかで,同制度の運用回避により,自主的な「介護認定」を行われた模様.
介護認定制度では,「1次判定では」,訪問調査員による「1次判定」における「概況調査」「基本調査」,そして「特記事項」の記入において,予てより,特記事項がある場合には「2次判定」の介護認定審査会での要介護度に変化されることが観察*3はなされてきた,という.ただ,「訪問調査項目の減少」*4という制度改革に伴い,現場の同調査員が「記入する特記事項の重要性が増した」*5とも解され,「1次認定」における「軽度傾斜」*6と「2次判定」における重度への認定結果への変化が生じる傾向性が観察されている.
同市では「1次判定」の結果をもとに,2次判定としての審査会開催を回避され,自主的な2次判定が実施されたなかで,両判定間での判定結果に関しては,2011年2月10日付の朝日新聞の報道を拝読させて頂くと,「1次判定」を受けた「495人」のうち「110人」に関しては「1次判定の結果を変更」され,「108人をより重度に変えた」*7とされる.同判定間での変更に際しては,2011年2月11日付の読売新聞の報道を拝読させて頂くと,「過去の審査会の結果などを基に」*8判定された模様.認定という制度の運用に関して,考えさせれる.

*1:沖藤典子『介護保険は老いを守るのか』(岩波書店,2010年)168〜169頁

介護保険は老いを守るか (岩波新書)

介護保険は老いを守るか (岩波新書)

*2:本多勇,木下大生,後藤広史,野村聡,後藤広史,内田宏明『ソーシャルワーカーのジレンマ』(筒井書房,2009年)55頁

ソーシャルワーカーのジレンマ―6人の社会福祉士の実践から

ソーシャルワーカーのジレンマ―6人の社会福祉士の実践から

*3:武智秀之『政府の理性,自治の精神』(中央大学出版部,2008年),100頁

政府の理性、自治の精神

政府の理性、自治の精神

*4:前掲注1・沖藤典子2010年:170頁

*5:前掲注1・沖藤典子2010年:172頁

*6:前掲注1・沖藤典子2010年:177頁

*7:朝日新聞(2011年2月10日付)「審査経ず495人介護認定 秋田市「処理追いつかず」

*8:読売新聞(2011年2月11日付)「審査会経ず介護認定 秋田市