滋賀県は2011年度、県と市町の施策や事業のあり方を見直すため、県と市町による「事業仕分け」を実施する。地域主権実現のため、事務の共同化や二重行政の排除、事務権限の移譲を目指す。
 地域主権改革に対応した自治体づくりを目指すとした新年度からの行財政改革方針に基づき、事業仕分けの手法を取り入れ、県と市町の役割分担を整理することにした。補助金制度での県のかかわり方の見直しや、県と市町で重複している事務の共同化などを議論し、効率的で無駄のない行政の仕組みを作る。新年度予算案に関連経費190万円を盛り込んだ。
 県によると、今後、市町とともにスケジュールや仕分け委員の構成、選出方法を検討する。議論対象となる県事業などを30〜40項目に絞り込み、議論の方向性を決定。仕分けは県民に見てもらえるよう公開の場で実施し、延べ約10回の開催を想定する。結果は、再び県と市町で協議して反映させるかどうかを決めるという。嘉田由紀子知事は2月8日、県内市町長との会合で事業仕分けについて「活力ある地域社会実現のため、原点に戻り市町と議論する必要がある。首長同士で基本方針を確認した後、担当で中身を詰めていきたい」と協力を求めた。

本記事では,滋賀県における同県に位置する市町との間での,事務の共同化,二重行政,事務権限移譲に関する「事業仕分け」を実施される方針を紹介.
2008年3月26日付及び2010年7月27日付の両本備忘録にて記録したように,「滋賀県市町対話システム」*1,そして,同システムとして「滋賀県自治創造会議」と「滋賀県・市町調整会議」を設置されている同県.同取組の方針に関しては,審議がされている様子は窺えないものの,同県の「平成23年度予算」を拝読させて頂くと,同県の「総務部経営企画室」において「行政経営改革を推進するために必要な取組を実施する」ことを目的として,「県と市町の役割分担を踏まえ」「県と市町で重複する事業の解消や責任の明確化など施策・事業のあり方」に関して「公開の場での議論による事業仕分けを実施する」内容による,「経営改革推進事業」*2として計上されている.
同取組の詳細に関しては,同事業概要の資料編を拝読させて頂くと,「会議の構成やスケジュール」や「仕分け委員の構成や選出方法など」や「県の事務事業」に関しても「市町とともに検討」され「対象となる項目を決定」*3されるとある.同検討の折に,上記の会議体の場を用いられてるのだろうか.要確認.ただ,対象事業に関しては,「集中」的に仕分けの実施が図られることを企図されてか,本記事にて紹介されているように「30〜40項目程度に絞り込」*4まれる模様.「仕分け結果」に関しては,その「反映」に関しても「県と市町で結果を整理した上で市町と協議しながら実施」*5されるともある.
協議を通じて,「分権改革を指向」*6された場合には「多様性」へと至り,その結果,「まだら分権」という個別性に至ることは不可避となるる虞がある一方,では「一律性を求める」*7た場合には,市町間での「拒否権」*8が提示されることで,その協議が難航するというディレンマ構造を内包される市町村・都道府県間における協議の特性.「公開性」*9を旨とされる「事業仕分け」を通じて,第三者の観点から,ディレンマを解かれること想定されているのだろうか,興味深い.ただ,「事業仕分け」に至るまでの,対象事業の選定においては,上記の通り,市町・同県での検討に基づき実施される模様.2010年9月12日付の本備忘録でも集約的に記している下名個人の関心からは,県と市町との間のみならず,条協議の俎上に乗るまでの,各県,各市町内における「トポクラート」と「テクノクラート*10間での自治体内協議の過程もまた,要確認.

*1:滋賀県HP(組織から探す自治振興課)「滋賀県市町対話システム

*2:滋賀県HP(構想計画滋賀県の財政平成23年度当初予算案の概要)「資料3 平成23年度当初予算 主な事業概要,資料編:総務部・事業概要」2頁

*3:滋賀県HP(構想計画滋賀県の財政平成23年度当初予算案の概要)「資料3 平成23年度当初予算 主な事業概要,資料編:総務部・事業概要資料編」3頁

*4:前掲注3・滋賀県(資料3 平成23年度当初予算 主な事業概要,資料編:総務部・事業概要資料編)3頁

*5:前掲注3・滋賀県(資料3 平成23年度当初予算 主な事業概要,資料編:総務部・事業概要資料編)3頁

*6:千葉実「都道府県から市町村への権限移譲(事務処理特例制度)の現状とこれから」『Jurist』No.1407,2010.9.15,130頁

Jurist(ジュリスト)2010年 9/15号 [雑誌]

Jurist(ジュリスト)2010年 9/15号 [雑誌]

*7:前掲注6・千葉実2010年・130頁

*8:ジョージ・ツェベリス『拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか』(早稲田大学出版会,2009年)25頁

拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか

拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか

*9:枝野幸男『「事業仕分け」の力』(集英社,2010年)50頁

「事業仕分け」の力 (集英社新書)

「事業仕分け」の力 (集英社新書)

*10:伊藤大一「テクノクラシー理論と中央・地方関係」『レヴァイアサン』4号,1989年,38頁