東日本大震災の被災者向けに全国の自治体が提供を申し出た公営住宅2万1663戸に対し、これまでに入居が決まったのは3449戸で約16%にとどまることが11日、国土交通省の集計で分かった。故郷を離れることに抵抗が強い被災者が多いことに加え「雇用が厳しい地方は厳しい」との声があるという。九州7県では計2400戸の申し出に対し入居決定は166戸で7%だった。
 これらの公営住宅は、地震津波で住居を失った人や、福島第1原発の半径30キロ圏内の避難者は、敷金や家賃を全額免除で入居できる。3カ月更新が多く2年まで利用できるところもある。各都道府県が3月下旬から順次受け付け開始。今月11日時点の入居決定数は東京400戸(提供可能600戸)、愛知280戸(同803戸)、兵庫228戸(同2163戸)の順で、宮城県を除く46都道府県に広がっている。ただ、故郷での仮設住宅の整備状況を見極めようとする人や、知り合いがいない県外への移転に二の足を踏む人が多く、全体として動きが鈍いという。
 福岡県は、都道府県別で4番目に多い844戸の提供可能数に対し、決定は70戸。同県被災者住宅支援窓口によると「仕事があるなら行きたいが…」との相談が多く、電話で相談に応じる緊急就職相談窓口を7日に設置した。大分県にも医療福祉関係の資格を生かせる仕事があれば利用したい、との問い合わせがあったという。被災者の受け入れ策を練る自治体も多いが、国交省は「雇用情勢が厳しい中で、自治体は被災者の雇用確保だけを優先するわけにはいかず、悩ましい」と話す。一方、独立行政法人都市再生機構(UR)は、被災者向けに全国の賃貸住宅5134戸を確保し、このうち654戸に入居が決まった。九州では福岡県内で190戸を用意し、入居決定は4戸にとどまっている。

本記事では,2011年4月11日現在での全国の自治体における,東日本大震災の被災者の方を対象とした公営住宅提供への入居決定状況を紹介.2011年3月16日付の本備忘録にて記録した,全国の自治体における公営住宅の提供の取組.国土交通省による集計結果.同集計結果は,同省HPを参照*1
同資料を拝読させて頂くと,全都道府県では,合計21,663戸を提供,一方,入居決定戸は3,449戸.本記事で紹介されている「九州7県」に加えて,各都道府県の提供戸数と入居決定戸数は,次の通り.

都道府県名 延べ提供可能戸数 入居決定戸数
北海道 2,075 180
青森県 224 83
岩手県 346 11
宮城県 89 0
秋田県 99 29
山形県 106 18
福島県 686 213
茨城県 703 202
栃木県 382 22
群馬県 361 214
埼玉県 515 33
千葉県 111 28
東京都 600 400
神奈川県 721 97
新潟県 316 100
富山県 308 85
石川県 355 87
福井県 134 40
山梨県 306 71
長野県 393 68
岐阜県 610 50
静岡県 340 111
愛知県 803 280
三重県 187 39
滋賀県 93 22
京都府 317 113
大阪府 2,896 183
兵庫県 2,163 228
奈良県 152 17
和歌山県 219 10
鳥取県 129 5
島根県 203 36
岡山県 211 57
広島県 528 54
山口県 445 15
徳島県 252 4
香川県 173 11
愛媛県 123 30
高知県 414 11
福岡県 844 70
佐賀県 96 8
長崎県 324 17
熊本県 328 17
大分県 266 19
宮崎県 140 12
鹿児島県 402 23
沖縄県 167 26

最も多く提供されている都道府県は,大阪府の2,896戸,兵庫県の2,163戸,北海道の2,075戸の順.入居決定戸は,東京都の400戸,愛知県の280戸,兵庫県の228戸の順にあることが分かる.また「東北地方」として捉えた場合には「延べ提供可能戸数1,550」,「入居決定戸数354」と整理されている.
「まずは,すまい」と全自治体が被災者の方々への支援を「政策問題」として定義され,公営住宅を積極的な提供を図られた取組.避難の時期から,生活の再建の時期を想定された場合,生活の「動態性」からも,物理的な「すまい」のみならず,「すまい」の「全体性」*2からは,就労の機会との一体性がなければ,同記事では,「故郷を離れることに抵抗が強い」とも解される.「地震で一番困ったのは家の復興」*3との回顧からも,広義でのすまいを含む「家」の復興を考えると悩ましい.

*1:国土交通省HP(報道・広報報道発表資料被災者向け公営住宅等情報センターについて)「別紙1 被災者向け公営住宅等の入居決定戸 4/11時点

*2:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),5〜6頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

*3:御厨貴・牧原出編『聞き書 武村正義 回顧録』(岩波書店,2011年)262頁

聞き書 武村正義回顧録

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