65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占め、共同体機能が低下している「限界集落」の数は昨年4月時点で1万91に上ることが20日、総務省の過疎地に関する調査で分かった。2006年度の前回調査から2213の増加。調査地域の集落総数に占める割合も12・7%から15・5%に上昇した。有効な対策がなく、存続が危ぶまれる集落の増加に歯止めがかからない実態が明らかになった。
 東日本大震災の大津波のように早期避難の必要がある災害時でも、限界集落では高齢の住民が若い世代の助けを借りられず、避難できずに取り残される危険性が指摘されている。国や地方自治体は住民の安全面でも対応が求められそうだ。
 調査は、過疎法の指定地域などがある801市町村にアンケートを実施。調査地域にある集落の総数は6万4954で、前回調査の6万2273から増えた。前回調査以降、93集落が人口の自然減や公共事業に伴う移転などで消滅したが、新たに58市町村で指定があったことが影響した。限界集落のうち、3908は市町村役場から20キロ以上離れた場所に位置し、行政の目が届きにくい状況。住民全員が65歳以上の集落も575あり、このうち205は全員が75歳以上だった。ブロック別の限界集落数は、中国が2672で最も多く、九州2094、四国1750。震災で大きな被害を受けた東北も1027と千を超えていた。首都圏は312、北陸は324と比較的少なかった。
 各市町村が「10年以内に消滅」「いずれ消滅」との懸念を持っているのは、集落総数のうち4・3%に当たる2796で、前回(4・2%)からほぼ横ばいだった。

本記事では,総務省において実施された「過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査」の結果を紹介.同調査に関しては,同省HPを参照*1
過疎地域自立促進特別措置法」と「過疎地域活性化特別措置法」により「過疎関係市町村」を対象に,「平成22年4月時点」の「過疎地域等」にある,「一定の土地に数戸以上の社会的まとまりが形成された,住民生活の基本的な地域単位」*2と定義を置いた「64,954集落」*3の「実態」,「集落機能の維持状況」「消滅した集落の社会基盤等の維持・管理のための取組に関する状況や課題等」に関して,市町村への「アンケート調査」,回収率は「100%」*4.「前回調査」では「62,273」集落であったことと比べると,「全体では総集落数は,増加」にあるなか,「北海道,首都圏では,減少」したこと,また,「中部圏・近畿圏・首都圏・中国圏・四国圏では山間地の集落が多い」こと,「その他の地域では平地の集落が多い」*5ことが全体的な傾向性として整理されている.
また,これらの整理に加えて,同集計結果を拝読すると,全体的な傾向性としては,前回調査では「山間地」に最も多くの集落があったものの,今回の調査では実数・割合ともに,「平地」での集落が多く 18,858集落から20,392集落へと増加していることも特徴.加えて,「都市的地域」では「4,938」集落から,今回調査では「5,236」*6と増加傾向も窺える.そのため,確かに他の区分と比べると実数・割合ともに限定的ではあり,経年では,「山間地」「中間地」では減少傾向にある,一方で,「平地」とともに増加傾向にあるようにも窺える.そして,前回調査の時点から「全集落に対する,他を統合,他に編入,他と合併,分離,名称変更の和の割合」とされる「再編率」は「4.0%」にあり,加えて,「前回調査以降消滅した集落」が「93」*7集落であったことも把握されている.これらもまた,実数・割合ともに限定的ではあるものの,その「再編成」は「山間地」「中間地」のみに限られるのだろうか,要確認.
また,「高齢者割合50%以上」が前回調査では「7,878」集落であったなかで,今回調査では「10,091」集落と,高齢者割合50%以上となる集落が概ね2,200集落増加している.特に,実数の増加状況のみを拝見させて頂くと,九州圏が最も多く459集落の増加,次いで,中国圏の402集落,そして,四国圏の392集落の順となり,「高齢者割合50%以上」*8の集落の増加数では,九州圏,中国圏,四国圏という兵庫県より以西での都道府県内での集落の高齢化が進みつつあるとも窺うことができそう.
同調査では,「今後の対策」として,「前回調査」で「集落に対する「目配り」の必要性についてとりまとめられ」「その後,集落支援員制度も設けられた」もの「本調査においても十分に目配りがされていない事例が確認された」ことも指摘され,加えて,「行政だけではなく集落支援員NPO等との連携の下で「目配り」を強化」を図り「集落の実態や集落機能の維持状況,さらには住民の意向などを把握していくことが肝要」*9との課題設定が行われている.直近ではまずは「「目配り」を強化」されることが,確かに何よりも「肝要」.ただ,中長期的な集落の姿としては「人口減少」が不可避となる場合,「まちづくり」とともに「まちじまい」*10の路線の検討もなくはないものの,同調査結果を拝読すると,まずは,その現状に,ただただ,悩ましい.

*1:総務省HP(広報・報道報道資料一覧:2011年4月過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査結果の概要)「過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査結果の概要」(平成23年4月,総務省地域力創造グループ過疎対策室)

*2:前掲注1・総務省(過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査結果の概要)2頁

*3:前掲注1・総務省(過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査結果の概要)3頁

*4:前掲注1・総務省(過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査結果の概要)1頁

*5:前掲注1・総務省(過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査結果の概要)3頁

*6:前掲注1・総務省(過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査結果の概要)4頁

*7:前掲注1・総務省(過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査結果の概要)6頁

*8:前掲注1・総務省(過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査結果の概要)7頁

*9:前掲注1・総務省(過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査結果の概要)27頁

*10:饗庭伸,加藤仁美,鈴木伸治,伊達美徳,柳沢厚,根上彰生,阿部伸太,清水哲夫,瀬田史彦,牧紀男『初めて学ぶ都市計画』(市ケ谷出版社,2008年)93頁

初めて学ぶ都市計画

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