福岡市は、電気やガスの使用を抑えて家庭内の二酸化炭素(CO2)排出量を減らした分を、交通ICカード乗車券のポイントに換算して還元する「カーボンクレジット事業」を始める。市によると、全国の自治体では初めての取り組みで、来月6日から参加する100世帯を公募する。
 家庭からのCO2排出量が増加傾向にあることから、市民レベルで省エネを定着させ、併せて環境に優しい公共交通の利用増につなげるのが狙い。期間は7―9月と11―来年1月の各3カ月。市営地下鉄のICカード乗車券「はやかけん」と西日本鉄道「nimoca(ニモカ)」を対象に前年からの削減量1キログラム当たり10ポイント(10円分)還元する。ただし、4千円が上限。市が月1回、削減実績を通知する。
 市によると、夏にエアコン使用を1日1時間控えれば、3カ月間で約5キログラムのCO2量を減らすことができ、約50ポイント(約50円)もらえるという。高島宗一郎市長は「(省エネは)いろんな工夫や努力をしないといけないが、この方法は楽しみながらできる」と参加を呼び掛けている。

本記事では,福岡市における「ふくおか市民カーボンクレジット事業」の取組を紹介.同事業に関しては,同市HPを参照*1
「家庭における日常的な省エネ行動を促進」と「省エネ行動の内容や実績データを収集し,広報啓発に活用する」ことを目的とされた同事業.「家庭の省エネ行動で削減できた電気及び都市ガスの使用量を温室効果ガス削減量に換算」され,その「削減量に応じて,参加者の交通ICカードに乗車ポイント」が提供される.本記事でも紹介されているように,「削減した温室効果ガス(二酸化炭素)1Kgにつき」「10 円分の乗車ポイント」がつき,その際,「エネルギー事業者」から「市民カーボンクレジット事務局」へ「直接情報提供を受ける仕組み」のため,「参加者から」は「電気・都市ガス使用量の報告」*2が必要ないこともまた特長.そのため,「省エネ実施期間」と「前年同期の電気・都市ガスの使用量」を「エネルギー事業者から市民カーボンクレジット事務局に対して情報を開示することに同意」することが,従来と将来の「1年以上居住」期間とともに「参加要件」*3の一つとされている.なるほど,手続きに要するコストが縮減されることで,応募手続以外には,気がつくと乗車ポイントが付加されることになる模様.興味深い.
「選択行動が本人に対して直接の金銭的メリット・デメリットをもたらす」ことで「継続的にインセンティブを創出するシステム」としての「経済的アプローチ」による「誘導手法」*4.同募集に応募される意欲のある方々にとっては,更に,メリット得られ,二酸化炭素の削減への誘導を企図することも可能.一方で,自発的行動に基づき,利益の損失も直接的にないため,登録行っていても「わが家一軒くらい」*5とも思いから持続しないおそれ,又は,手続も要しないことにより登録をしていたことを放念してしまうおそれや,そして,例えば,自動車利用者等のこれらの経済的アプローチにそもそもメリットを感じないことで募集されない方々への「誘導」に至る方策もまた制度設計上の課題.考えてみたい.

*1:福岡市HP(福岡市の環境地球温暖化対策家庭での温暖化対策))「「ふくおか市民カーボンクレジット事業」参加者募集のお知らせ

*2:福岡市HP(福岡市の環境地球温暖化対策家庭での温暖化対策):「ふくおか市民カーボンクレジット事業」参加者募集のお知らせ)「ふくおか市民カーボンクレジット事業 募集要項」(H23.4.26,福岡市)1頁

*3:前掲注2・福岡市(ふくおか市民カーボンクレジット事業 募集要項)2頁

*4:北村喜宣『環境法』(弘文堂,2011年)108頁

環境法

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*5:西尾勝『行政の活動』(有斐閣,2000年)19頁(昨日から開始された非常勤の講義で,久しぶりに利用しました.お馴染み「甲村」(16頁)の事例を,防波堤の建築と高台移住での資源調整として事例を改めて整理してみるも,更に話の工夫が必要かと反省)

行政の活動

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