地方に影響を及ぼす国の政策について関係閣僚と全国知事会など地方6団体の代表が話し合う、法制化された「国と地方の協議の場」の初会合が13日、首相官邸で開かれた。社会保障と税の一体改革で政府の集中検討会議がまとめた改革案について、地方側は「このままの案なら反対」(山田啓二全国知事会長)と強調した。議長を務める枝野幸男官房長官は「地方の理解を得るためのプロセスは必要」とし、修正協議に応じる意向を表明。地方側が求めた分科会設置を視野に入れ、議論を続けることで合意した。
 改革案は消費税を2015年度までに段階的に10%に引き上げるとしているが、増税後の税収の国と地方の具体的な配分は示していない。地方側は「(改革案で)地方単独事業について考慮しない(で財源配分が検討されている)のは問題だ」(藤原忠彦全国町村会長)と改めて批判。一体改革を担当する与謝野馨経済財政担当相は「国と地方で財源の争いはしたくない」と理解を求めた。協議の場ではこのほか、定例会的な会合を年4回開き、メンバーの要請に応じて臨時的な協議も行うことなどを確認した。 

 国と地方の関係を見直す地域主権改革関連3法に基づく「国と地方の協議の場」(議長・枝野官房長官)の初会合が13日開かれ、主要閣僚と全国知事会(会長・山田啓二京都府知事)など地方6団体の代表が「社会保障と税の一体改革」について協議した。
 消費税率を2015年度までに10%に引き上げるとした政府の社会保障改革案に対し、地方側は、消費税の使い道が、国が自治体に補助金を出す国庫補助事業に限られた点を批判し、「地方の意見が取り入れられていない」と反対する意向を表明した。このため政府は、地方代表を交えた一体改革の分科会を新設した上で、修正協議を行うことで地方側と合意した。菅首相は会合に先立ち、与謝野経済財政相、藤井裕久首相補佐官仙谷由人官房副長官と会談し、一体改革の最終案となる政府・与党案を20日にまとめる方針を確認した。しかし、与党内には20日の取りまとめは難しいとの見方もある。また、地方側の反発で、政府・与党案は、消費税率を引き上げるための具体的な制度設計には踏み込まない内容になりそうだ。 

全国知事会山田啓二会長(京都府知事)は13日、「国と地方の協議の場」出席後に都内で記者会見し、「激しいやりとりがあった。今までにない展開」などと述べ、「協議の場」の設定が法制化された後の初協議に一定の評価を与えた。
 山田会長は、政府が作成した税と社会保障の一体改革の原案ついては「明確に反対した」と説明。その上で、政府側の内部で意見が食い違う場面がみられたことなども紹介し、「内容的には充実した議論になった」と述べた。会見に同席した全国市長会の森民夫会長(新潟県長岡市長)も「今後も期待できる」と同調。全国町村会の藤原忠彦会長(長野県川上村長)は「きょうは地方の意見を本当に言えた。大きな進歩」と語った。

地方行政に関する国の施策について、政府の関係閣僚と地方6団体の代表が話し合う「国と地方の協議の場」の初会合が13日、首相官邸で開かれた。4月の「地域主権3法」成立で協議の場の設置が法制化されてから初の会合だ。協議では税と社会保障の一体改革で、15年度までに消費税率を10%に引き上げるとした政府原案を巡り、国と地方が激しく対立。枝野幸男官房長官は地方に配慮し、文案の一定の見直しに言及したが、政府は20日に一体改革案を取りまとめる方針を変えておらず、地方の声がどこまで反映されるかは不透明だ。
 「(協議が)ルール化されたことは大きい。いい意味で地方分権の推進につながる」。菅直人首相は会合冒頭、協議の場の法制化への意義を強調した。だが、山田啓二全国知事会長(京都府知事)は一体改革の政府原案に対し「地方の意見を取り入れたところは全くない」と反対を表明。協議は初会合から険しい空気に包まれた。一体改革原案は、消費税率の引き上げ分について、地方への配分を明示していない。地方側は、乳幼児健診など社会保障サービスの多くが自治体単独事業であり、財政の手当てなしにはサービス維持が難しいことを指摘。藤原忠彦全国町村会長(長野県川上村長)は「地方のきめ細かな単独事業が、社会福祉や地域医療に貢献している」と訴えた。片山善博総務相は、協議の場に続き開かれた一体改革の「成案決定会合」で、地方単独で提供している社会保障サービスが、消費税率を10%に引き上げる15年度ベースで約9.2兆円にのぼるとの試算を提示した。反発の強さに、枝野氏は「地方の理解が得られるよう、修正協議を行うよう努める」と表明。20日の取りまとめまでに地方と再度協議し、文案を修正する可能性に言及した。これまで国の施策を一方的に押しつけられがちだった地方。協議の場を法制化し、合意事項への「尊重義務」を国に課すことは、地方の悲願だった。枝野氏の柔軟姿勢を、法制化の影響とみることも可能だ。だが、一体改革を巡り、取りまとめ期日を決めた上で協議に臨んだ国側の姿勢は、この「尊重義務」が早くも骨抜きになりかねない現状も、同時に浮き彫りにしたといえる。
◇国は取り分増狙う
 社会保障強化などを名目に15年度までに消費税(現行5%)を10%に引き上げる方針を明記した一体改革原案。取りまとめ役の与謝野馨経済財政担当相は「地方財政は黒字だが、国の財政は危険水準に近づいている」と強調、消費税増税では地方への配分を抑え、国の取り分を増やしたい考えをにじませている。現行の消費税(5%)は4%分が国税、1%分が地方消費税として都道府県に回る。さらに、国税分の29.5%は地方交付税を通じて自治体に回るため、最終的な取り分は国が56.4%、地方が43.6%。消費税5%引き上げによる税収増は約13.5兆円だが、現行比率なら、国の取り分は約7.6兆円にとどまる。一体改革原案は子育て支援や高額医療の負担軽減などに約2.7兆円の新規財源が必要と試算。高齢化で毎年1兆円超も膨らむ社会保障費の自然増や、基礎年金の国庫負担割合50%維持(年間2.5兆円)への対応も盛り込んだ。同時に、政府は毎年度の政策的経費から税収などを差し引いたプライマリーバランス基礎的財政収支)の赤字を15年度に半減する財政健全化目標の達成も掲げる。「社会保障の現場を担うのは地方」(片山善博総務相)と消費税の地方の取り分減少に反発する総務省自治体。与謝野経財相は「地方単独事業への(消費税増税分の)充当を全面的に排除しているわけではない」とも言う。しかし、与謝野氏や財務省社会保障目的税化をテコに増税後は国の取り分を大幅に増やしたいのが本音だ。【中山裕司、小倉祥徳】

本記事群では,「国と地方の協議の場」の第1回目の会合の開催状況を紹介.同場に関しては,現在のところ,内閣府にその名称が残置されつつ公表されている「地域主権改革」に関するHP*1へは掲載されていない模様.同回では「社会保障・税一体改革及び東日本大震災復興対策」に関して協議が図られた模様.同回の同場への提出資料に関しては,全国知事会HPを参照*2
「地方側」からは「地方六団体の代表」(ただし,全国都道府県議会議長会は会長代理,全国町村会は会長職務執行者),「国側」は「国と地方の協議の場に関する法律」第2条に規定されている「内閣官房長官」,「総務大臣」及び「内閣府特命担当大臣地域主権推進)」,「財務大臣*3とに加えて,「社会保障・税一体改革大臣」,「厚生労働大臣」,「内閣府特命担当大臣(防災)」,「国家戦略担当大臣」,「経済産業大臣」及び「原子力経済被害担当大臣」,そして「内閣府特命担当大臣地域主権推進)」*4の9名の大臣が参加.同会合の詳細に関しては,同会合の議事概要等が公表後(公表されるのでしょうか),要確認.
全国知事会HPを拝見させて頂くと,提出資料としては,「地方六団体提出資料」としての資料は勿論,「全国知事会提出資料」ともあり,地方六団体の「総意」*5にかぎらず,「意見を述べる」「回路」*6としても運営される模様.「社会保障・税一体改革及び東日本大震災復興対策」に関する協議の結果は判然とはしないものの,第1記事及び第2記事を拝読させて頂くと,「国と地方の協議の場に関する法律」第5条に基づく「分科会」*7設置の決定が,第1回目の「協議が調った事項」となった模様.同「分科会」が,同場招集の要件となる「協議すべき具体的事項」(同法第4条第2項及び第3項)の精査という,いわば「総合調整の総合調整」*8を図る場となるか,同分科会の運営もまた,要経過観察.

*1:内閣府HP(内閣府の政策)「地域主権改革

*2:全国知事会HP(地方六団体の活動国等との意見交換)「国と地方の協議の場(第1回)について(平成23年06月13日)

*3:内閣府HP(国会提出法案第174回 通常国会)「国と地方の協議の場に関する法律案」第2条(e-Govの法令データ提供システムには現在のところ,同法が掲載されていない模様.そのため,国会への提出案を参照)

*4:全国知事会HP(地方六団体の活動国等との意見交換国と地方の協議の場(第1回)について(平成23年06月13日))「国と地方の協議の場(第1回)出席者

*5:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)56頁

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

*6:金井利之「「国と地方の協議の場」の成立と蹉跌」森田朗・田口一博・金井利之編著『分権改革の動態』(東京大学出版会,2008年)94頁

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)

*7:内閣府HP(国会提出法案第174回 通常国会)「国と地方の協議の場に関する法律案」第5条

*8:牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会,2009年)248頁

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)