性風俗店を宣伝する、いわゆるピンクチラシが福岡の街から消えつつある。名刺サイズからポスターほどの大きさまで肌もあらわな女性がほほ笑むチラシは、かつて電話ボックスや公衆便所、街路樹にまで貼られ、景観を台無しにしていた。激減したのは行政、警察、市民による撲滅活動が功を奏したことに加え、携帯電話やインターネットの普及でチラシの需要がなくなりつつあることも背景にあるようだ。
 福岡市役所によると、ピンクチラシが特に多かったのは2002−04年ごろ。中洲や天神の繁華街や博多駅筑紫口のホテル周辺では街路樹の枝にまでびっしりと貼られ、行政と市民ボランティアが撤去しても、夕方にはまた出現する“いたちごっこ”だった。対策として市は03年3月、悪質な違反者には懲役などの罰則を盛り込んだ「ピンクちらし等の根絶に関する条例」を施行した。04年3月にはより厳しく改正、チラシを所持しただけで100万円以下の罰金が科せられるようにした。福岡県警も、違法な業者の摘発を進めると同時に、チラシの製作を請け負う印刷業者の取り締まりを強化。生活環境課によると条例違反による摘発は04、05年の116人をピークに減り続け、今年はわずか1人という。撤去件数も激減。02年度は約360万枚と1日あたり約1万枚回収していたが、10年度は約5万7千枚。公衆電話を管理するNTT西日本は「目に見えて被害が少なくなった」という。市民ボランティアも「かつては住宅街や通学路にも貼られていたが、見かけなくなった」と口をそろえる。
 こうした背景について県警幹部は(1)携帯電話の普及で主な貼り場所だった公衆電話が減った(2)性風俗店の無料案内所が乱立し、需要がなくなった(3)広告媒体がチラシからインターネットに変わった−などと分析する。一方で「最近は無差別に貼るのではなく、ビジネスホテルに忍び込んで客室の隙間から入れるなど手口が巧妙化している」とも話す。福岡市都市景観室の続孝之室長は「官民が一体で取り組んだ成果。ただ依然として根絶には至っておらず、今後も撤去活動を続けていく」としている。

本記事では,福岡市が制定した「ピンクちらし等の根絶に関する条例」*1の執行状況を紹介.同条例の執行経過が分かり,たいへん勉強になる記事.
同条例第7条第1項により「公衆電話ボックス内,公衆便所内その他公衆の用に供する建築物内又は公衆の見やすい屋外の場所に,ピンクちらし等を,はり付けその他の方法により掲示し,又は配置してはならない」と禁止されており,あわせ,同条例第10条第1項では,これも「何人も」「はり付けその他の方法により掲示され,又は配置されたピンクちらし等を除却し,又は廃棄することができる」,そして,同条例同条第2項により「何人も,正当な理由なく,前項の規定による除却又は廃棄を妨害してはならない」と,「何人も」除却ができること担保されている.
本記事内で表としてまとめられている「福岡市のピンクチラシの撤去枚数」の一覧表を拝読させて頂くと,同条例施行後,2002年度は3,602,796枚が除却されていたものの,2003年度には3,532,265枚,2004年度は2,280,081枚と漸減傾向にあり,2005年度には859,140枚と大幅に減,そして,2006年度には153,764枚,2007年度は132,885枚と減少し,2008年度は85,589枚,2009年度は76,322枚,そして,昨年度2010年度は57,492枚となり,2002年度の枚数の約2%となっている.
ただ,このような除却枚数の減少は,ひとり同条例の成果によるものではない模様.本記事を拝読させて頂くと,「携帯電話の普及で主な貼り場所だった公衆電話が減った」こと,「性風俗店の無料案内所が乱立し,需要がなくなった」こと,「広告媒体がチラシからインターネットに変わった」こともその「背景」にあるという.なるほど,まさに「「実施」の「成功」」をもたらす「独立変数はきわめて多様」*2

*1:福岡市HP(まちづくり都市景観・公園・緑化都市景観景観についての条例、ガイドライン、様式)「福岡市ピンクちらし等の根絶に関する条例」(平成14年12月19日,条例第60号)

*2:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),221頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)