香川県はうどん県に改名いたします」――。
 香川県が、人気俳優・要潤さんやバイオリニスト・川井郁子さんら県出身の有名人8人を起用し、こんな架空の改名を宣言するプロモーションビデオ(PV)を作ってネット上で公開したところ、アクセスが1日で17万件を超え、約5時間サーバーがダウンする事態に陥った。
 約2分間のPVでは、副知事役の要さんが「記者会見」で改名を発表。そのニュースに、高松・栗林(りつりん)公園の茶店店員を演じる女優・木内晶子さんや、金刀比羅宮宮司役の俳優・石倉三郎さんらが仰天、「県の魅力はうどんだけじゃない」とPRする。閲覧用サイトを県の観光サイト内に設けた。
 11日午後5時30分の公開後、ネット上で話題を呼び、12日午後3時までにアクセス件数は17万件に達した。同日午後1時過ぎから接続できない状態に陥り、問い合わせも殺到。県は急きょ、容量の大きなサーバーに観光サイトごと移し、接続状況は同6時頃に改善した。PV公開前のアクセス数は一日1000件程度といい、担当者は「ここまで反響があるとは」と驚く。それでも、県はPVと連動したCMを制作、15日から首都圏の地下鉄などで流す。閲覧用サイトはここをクリック。

本記事では,香川県改め「うどん県」におけるホームページ*1の取組を紹介.
「11日午後5時30分の公開後」「12日午後3時まで」に「17万件」の「アクセス」があり,「同日午後1時過ぎから接続できない状態」になったとのこと(下名も,12日の同時間帯でアクセスしたもののダウンしており実際にホームページまで辿りつくことができなかったものの,今回,ようやく拝聴することができました).同県の同取組に関しては,2011年10月13日付の四国新聞においても報道*2
同取組で提供されている映像では,副知事による記者会見での香川県から「うどん県」への「改名」が行われており,県民の方々からの様々な反応を通じて,同県のうどん以外の魅力を余すところなく紹介するストーリーとなっている(とはいえ,やはり,うどんを食べたくなりますね).他の都道府県でも,さて名称変更を図るとすれば,どのような名称の可能性があるのだろかと,種々思い描くことができる楽しい取組.
同映像を拝聴し,下名個人的には,2010年4月23日付の本備忘録にて若干記したものの,やはり,実際に名称変更手続を改めて考えさせられる.地方自治法第3条第3項では「地方公共団体の名称の変更は,原則として,条例で定める」と条例事項とされる.方や,「都道府県の名称の変更」に関しては,同法同条第2項に基づき「法律でこれを定める」と法律事項となる.そして,当該法律は「個々の都道府県のみに関するものである」ため,「憲法第九十五条にいう「一の地方公共団体のみに適用される特別法」」として「関係住民の一般投票が必要」*3になる.このことからすれば,映像のように,都道府県自らが県名の名称変更を高らかに宣言し,決定することができない制度状況にある.都道府県の名称変更が法定事項であることは,「太政官布以来の継続性と重要性」*4に由来するとは解されるものの,他の市町村との名称変更手続での差異の意義は今ひとつ判然とはしない制度の一つ.
確かに,映像の中での保育士さんのように「いやだ」という方も,「一の地方公共団体のみに適用される特別法」を通じて,名称変更へ意思表示を図る機会が保障されているとも解せなくは無く,住民投票を行うことの意義は確かにある.ただこれも都道府県議会への条例案の提出以前に,県民を範囲とした民投票を図れば,同意見の提示をする機会を保障することを考えられなくもない.都道府県の「完全自治体」*5化を声高に述べるまでもなく,条例事項と改めることも適当ではないだろうか.

*1:香川県HP「うどん県

*2:四国新聞(2011年10月13日付)「「うどん県」高らかに宣言/プロジェクト始動

*3:松本英昭『新版逐条地方自治法第4次改訂版』(学陽書房,2007年)62頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*4:佐藤竺編著『逐条研究地方自治法Ⅰ』(敬文堂,2002年)97頁

逐条研究 地方自治法〈3〉執行機関―給与その他の給付

逐条研究 地方自治法〈3〉執行機関―給与その他の給付

*5:礒崎初日仁「都道府県制度の改革と道州制」礒崎初仁編著『変革の中の地方政府』(中央大学出版部,2010頁)8頁

変革の中の地方政府―自治・分権の制度設計 (中央大学社会科学研究所研究叢書)

変革の中の地方政府―自治・分権の制度設計 (中央大学社会科学研究所研究叢書)