公金が適切に支出されているかなどを審査する監査委員制度で、東温市では昨年11月以降、市議会議員から選出する委員の不在が続いている。関係者からは「市民の代表として、議会の立場で行政をチェックする機能が働いておらず残念だ」との声も出ている。
 地方自治法では、政令都市以外の市町村は監査委員を2人選任し、うち1人は議員から選ぶ。自治体の長が議会の同意を得て選任するが、県内自治体では、事前に議員の了承を得るか、議長から適任者の推薦を受けて提案するケースが慣例となっている。
 東温市では、昨年11月15日に前任者が辞任。翌16日に臨時議会を開き、市側が後任人事を提案したものの、賛成7、反対9で不同意となった。以降提案は無く、2010年度決算審査はもう1人の監査委員が行った。

本記事では,東温市における監査委員の就任状況について紹介.本記事を拝読させて頂くと,1年間,1名の監査委員により監査業務を実施されているとのこと.確かに,昨年2010年「8月27日」に監査委員から市長に提出された「平成21年度 東温市一般会計及び特別会計 歳入歳出決算審査意見書」*1の段階ではお二人の監査委員のお名前が記されてはいるものの,本年2011年「9月20日」に提出された「定期監査」*2ではお一人のお名前のみが記されている.
監査委員における,いわゆる議選委員制度に対しては,第29次地方制度調査会でも言及.2009年6月16日に提出された同委員会の答申では,「監査委員は,長だけではなく議会からも独立した存在とする必要」との認識を示され「議選委員を廃止し,議会は当該地方公共団体の行政全般にわたって幅広い見地から執行機関をチェックするという本来の機能を果たしていくべきとの意見が多くみられた」とやや踏み込んだ意見解が示されている.しかし,「議選委員の廃止」に対しては,「適任者を選任する」という観点に立てば「議員を含めて監査委員としての適性を判断したうえで選任すべき」,「執行機関を監視するという議会の役割」からは「議選委員は維持されるべき」という見解もあることを併せて示すことにより,「賛否両論」*3があると述べるに留めている.
その後,総務省に設置された地方行財政検討会議が,2011年1月26日にまとめた『地方自治法抜本改正についての考え方(平成22年)』では,「地方公共団体の内部の主体が担う監査のあり方」のうち「議員のうちから監査委員の一部を選任する現行制度」に関しては,「議会による執行機関に対する監視機能の一部という側面」にあるとの認識を示しつつ,「地方公共団体の監査機能は議会による執行機関の監視機能と峻別した上で制度設計するべきであるという意見」と「現行の制度に意義があるとする意見」*4があるとして,その提案は上記の答申と同様に,よりも中立的な記述として,両論の提示に留めている.
事ほど左様に,何れの場でもその制度上の結論の提示には至ることがないままの議選委員制度.第30次の地方制度調査会の諮問事項*5では,監査制度自体が審議事項としては課題設定されていない(地方行財政検討会議との議論の継樹は必ずしもないものとして理解が適当なのでしょうか).本記事の現状に対しては,議会の場において,まさに第29次地方制度調査会答申が述べる「本来の機能」たる「監視機能」を果たすことで,制度趣旨の実現が可能であるとも解することもできなくもない.また,一方で,「議選委員制度」自体が「議会による執行機関に対する監視機能の一部」とする,上記の地方行財政検討会議認識とはやや距離がある制度運用とも解せなくもない.「互いに牽制しあう局面」*6に起因する制度運用の現状を鑑みると,制度運用に依拠することなく制度的な対応も課題の一つか.