熊本市議会総務委員会は9日、来年4月の政令指定都市移行に伴い五つの行政区に「区民会議」を新設する付属機関設置条例改正案を、「合併から間もなく時期尚早」などとして全会一致で否決した。議会最終日(16日)の本会議でも否決される見通し。政令市移行時の会議発足は、事実上困難となった。
 市の要綱案では、区民会議は市長の付属機関。学識者や校区自治協議会の代表、まちづくりNPO、公募の市民など20人以内で構成。区の振興ビジョンや地域課題の解決策を調査・協議し、区長と市長に報告する。
 この日、各会派の委員からは「合併3町との融和が進み、区民としての意識が醸成されるのを待つべきだ」「会議が暴走しないよう運営上の歯止めが必要」との指摘や、「区政の決定機関と誤解される」との懸念が続出した。最大会派・自民党市議団長の江藤正行委員は終了後、「合併特例区協議会が存続する区もあり、設置は時期尚早。区が出発して1〜2年経ち、落ち着いてからつくればいい」と話した。
 平塚孝一・市政令指定都市推進室長は「区民会議自体を否定されたわけではなく、説明が足りなかった。議会の指摘を踏まえて内容を再検討し、一日も早く区役所と区民代表が協議する場を設けたい」と述べた。(森紀子)

本記事では,熊本市議会における附属機関設置条例改正案に対する審議状況を紹介.
同条例改正案では,「区民会議」に関する規定を整備.本記事を拝読させて頂くと,同市議会の総務委員会では否決に至ったことが報道.同会議案の内容は,「素案」段階の資料を拝読させて頂くと,同市HPを参照.*1
素案段階の資料からは,同会議を「地域課題の解決を図るための方法」と各「区の特性を生かしたまちづくりに関する事項」に関して「調査し,協議」する「機関」*2として位置付けている.そして,同素案内でも「区の議決機関としてあるものではなく,市長が委嘱する市民で構成する附属機関」であること,そして「区民会議」は「要綱に定める事項について意見や提言を行う機関であり」「区民会議と市議会の役割は全く異な」*3るものであることが重ねて記載されている.より具体的には,同会議は,「区民である学識経験者」, 各「区校区自治協議会等連絡会議から推薦された者」 ,「区民であって区民会議の委員に応募した者」,そして,これら以外にも「区民会議の設置目的を達成するために必要と認める者」の4区区分から総勢「20」*4人以内から構成される.上記の「要綱に定める事項」とは,4項目あり,「区民会議で把握する区の地域課題の解決を図るための方法に関する事項」,「区の特性を生かしたまちづくりに関する事項」,「区の振興ビジョンに関する事項」,そして,「区民会議の設置目的を達成するために必要な事項」*5と,振興ビジョンは制限列挙されているものの,他のの3項目は概括例示的である.
ただ,2011年11月22日に開催された「第4回定例会前市長記者会見」内でも紹介されているように,同ビジョンの策定するに止まらず,同ビジョンをもとに「まちづくり予算」として「独自予算を設け」*6る,いわば,「参加型予算(participatory budgeting)*7」にも取り組む方針であった模様.「行政間の権限移譲に終わらせるのではなく,行政をどれだけ市民に近づけていけるのか」*8という考え方から具体化されたものとして整理ができそうな同会議.今後の審議状況も,要経過観察.

*1:熊本市HP(行政情報パブリックコメント・意見募集区民会議(素案)の策定に関するパブリックコメント実施結果について)「区民会議(素案)」(熊本市政令指定都市推進室)

*2:前傾注1・熊本市(区民会議(素案))2頁

*3:前傾注1・熊本市(区民会議(素案))3頁

*4:前傾注1・熊本市(区民会議(素案))5頁

*5:前傾注1・熊本市(区民会議(素案))5頁

*6:熊本市HP(ようこそ!市長室市長記者会見第4回定例会前市長記者会見)「質疑応答:区民会議について

*7:Graham Smith.(2009)Democratic InnovationCambridge UP:34.

Democratic Innovations: Designing Institutions for Citizen Participation (Theories of Institutional Design)

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*8:「平成にっぽんの首長第57回 熊本市長 幸山政史」『ガバナンス』No.128,2011年12月号,176頁

ガバナンス 2011年 12月号 [雑誌]

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