東京都杉並区や群馬県東吾妻町など東日本の五区市町は五日、災害時の相互支援を盛り込んだ共通の災害時相互援助条例を各自治体が制定することで合意した。支援のための財政支出をスムーズにする狙いで、二〇一二年度の制定を目指す。杉並区は「市区町村間の災害時支援の条例化は全国で初めて」としている。ほかに条例を制定するのは北海道名寄市福島県南相馬市新潟県小千谷市
 杉並区によると、東日本大震災南相馬市から最大約二百八十人の避難者を区の施設に受け入れ、一日百万円近い支出があった。議会の承認なしに支出可能な予備費で対応したが、支出が膨らんだ場合は補正予算を組み、議会が可決する手続きが必要となる。条例化で支出の法的根拠が明確になれば、首長の判断で予算執行がしやすくなり、迅速で広範な支援が可能になる。杉並区は既に四市町と個別に災害時相互援助協定を結んでいる。南相馬市の支援のため、四区市町が設置した自治スクラム会議で、今回の条例構想が浮上した。田中良区長は「首都直下地震の可能性を考えると、区市町村による支援を積極的に展開できる体制を整備する必要がある。将来は他の自治体にも広げたい」とコメントした。

本記事では,名寄市小千谷市,東相馬市,東呉妻町,杉並区による災害時相互援助協定の条例化の取組を紹介.
3市1区1町による同協定に基づく「水平的な支援の取組み」としての「自治スクラム支援会議」*1.第4回の会議のなかでも「都道府県域を越えた複数の自治体で統一的な条例として制定すること」*2の必要性も指摘.協定の条例化の同考えが,具体化される模様.同協定に基づく,「政策志向の連携」から始まり,「自治スクラム会議体」という,準「制度指向の連携」による支援の持続,更には,本記事にて紹介されている条例化を通じて,更に「制度指向の連携」*3が進められ,相互支援の体制と政策が相互に整備と実施されることも想定されそう.興味深い.
下名の個人的には,同条例制定の内容面,形式面からも関心もある.内容面では,「理念的規定や努力義務規定が多く」なることなく,「その実体的な規制的内容を盛り込んだ」*4内容が規定されるのか,そして,その形式面では「関係する複数の自治体間での相互の意識的な取組により規定内容・形式を共通化させた条例(条例群)」を制定される,いわゆる「共通条例」*5として制定されるのか,又は,「複数の自治体が共同して一本の条例を制定」される,いわゆる「共同条例」*6として制定されるのか,今後の条例化の検討状況は,要観察.

*1:杉並区HP(東日本大震災関連情報自治体スクラム支援会議」について)「自治体スクラム支援

*2:杉並区HP(東日本大震災関連情報自治体スクラム支援会議」について)「今後の南相馬市復興支援について 自治体スクラム支援会議を開催しました!

*3:牧原出「東日本大震災後の地域間連携」『ガバナンス』No.130,2012年2月号,16頁

ガバナンス 2012年2月号

ガバナンス 2012年2月号

*4:田村泰俊, 千葉実, 吉田勉編著『自治政策法務』(八千代出版,2009年)286頁

自治体政策法務

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*5:小林明夫「複数の自治体の政策協調による条例の制定方法についての一考察(一)」『自治研究』第84巻第9号,2008年9月,131頁 

*6:前掲注4・小林明夫2008年:130頁