2012年3月5日から7日までの間は,福井県に滞在させて頂きました.現在参加させて頂いてる調査研究の一環から,主に次の3つの事柄に関する資料調査を進めてきました.
まずは,機構改正に関する資料調査です.これは,福井県庁県政情報センターにて過去の県報を捲りました.現在では,同県HP内*1で,2005年から現在までの県報を拝読することが可能です.下名のような遠隔地の観察者にとっては大変便利な環境に現在ではあります.しかし,機構改正については機構図上の「形」に限らず,事務分掌等などの比較的「実」の部分を確認するためには,当時の組織を始めとする諸規程・内規等の確認が必要となります.例規集に掲載されたこれらの規程等に関しては,各時代毎の変遷が残っているわけでもなく(過去の把握作業は,加除式であるがゆえの例規集の限界ですね),そのため,最終的には,やはり当時の県報を捲る方法が一番確実な方法となります(他に調査方法があるものなのでしょうか).今回は,1996年の改正時での委任規定を含めて拝読,入手してきました.

二つめは,県庁内で働く場と職員の方々に関する資料調査です.これは,朝一番の「フレンドリーバス」に揺られて,福井県立図書館*2に移動し,同館内で,過去の職員録を捲りました.職員録は,毎年度のほぼ定点での組織と人事の配置の把握が可能となり,自治体行政を観察するうえでは貴重な資料です.今回は,1991年から現在までの概ね20年分と決めて,職員録の拝読と資料入手に努めました.同館内で確りと保管されている職員録を,作業の途中で並べ,その背表紙を眺めていると,年々,その幅が細くなっていく様子が分かります(下記写真では,一番左側が1991年分として各年毎に並べ,一番右側が2011年分となります).職員数の移り変わりは,数値的としては把握できますが,なかなか外部の観察者にとっては,その変化の様子を物理的に感じることは難しいものです.意外と職員録の背表紙からもその様子を窺うことができました.

三つめは,県庁内で働く職員の方々の異動に関する資料調査です.これは,福井県庁県政情報センターと福井県立図書館の双方で行いました.資料は,主に地元の「福井新聞」(縮刷版)の調査です.上記の「職員録」でも把握ができそうですが,その異動の動態を把握するためには新聞はやはり有益な情報を提供してくれます.「地方紙」ではありませんが,昨年,下名が記した拙稿*3でも「都庁内業界紙*4をもとに前職の把握等を試みました(東京には,いわゆる「地方紙」がありませんからね)ので,今回もその方法に準じて情報収集を努めました.「地方紙」は,特定の政策等の過程追跡のためばかりではなく,日常の行政を観察する際にももっと利用されるとよいのにと常々思っています(本備忘録も,全国紙での報道も記録しますが,同一の記事がある場合には「地方紙」での報道を優先していたります).いわゆる「地方紙」は,ここ十数年の電子化によりフローの情報把握が,各段に容易になりました.下名が,前職場に入りたての頃,「「地方紙」を確認したい」と以前の上司に相談したところ,「東京事務所に行け」と,にべもなく言われたこともありました.遠隔地にいると結構手間がかかったことは,懐かしい思い出です.ただし,インターネット上で提供される情報はやはり限定的です.実際の地方紙の紙面に接することで得られる情報は,極めて多いことも実際です.今回も改めてそのことを実感しました.特に,それらの情報をストックするためには,実際に過去の新聞(縮刷版)を捲るしかありません(これも,他に調査方法があるものなのでしょうか).今回は,選挙の年を除き毎年3月25日に内示が示され(選挙の年は概ね5月10日前後),ほぼ翌日には掲載されている異動に関する報道を,こちらも20年分を捲ることで,上記の一つめ,二つめの調査を補完してきました.
今回の調査は,現在の組織や人についてのお話を伺う調査よりも,過去の組織や人に思いを巡らすための資料調査という,何ともまあ,地味な(でも,下名個人的には極めて有益な)調査行程でした.

*1:福井県HP(県政情報・電子手続き)「情報公開・条例・法規

*2:福井県HP(組織別情報)「福井県立図書館

*3:松井望「石原都政下の組織編成と人事政策」『都市問題』Vol.102,2011年6月

*4:御厨貴『東京』(読売新聞社、1996年)209頁