仕事と生活を両立しながら働き続けられる職場の実現を促すため、都が二〇〇八年度から取り組む中小企業の「ワークライフバランス認定制度」が不人気だ。類似の制度を導入する区市も増えているが、同じ悩みを抱える。中小企業は円高などによる不況でワークライフバランスより仕事を優先せざるを得ないのが現実のようだ。
 都の制度は、従業員三百人以下の企業・団体を対象に、優良企業を顕彰し、模範となる取り組みを広げるのが狙い。昨年度までの四年間で計四十四社を認定した。応募すれば、認定の有無にかかわらず、毎年三十社までコンサルタントを無料派遣し取り組みを助言。応募は初年度こそ四十一社だが、二年目以降は三十社に届かない状態が続いている。都は「申請手続きが面倒と思っているかもしれない」と分析。認定されればPR用DVDを贈り、都の入札の総合評価制度で加点する特典もあるため、本年度は入札の機会の多い建設業者へ重点的に働き掛ける考えだ。
 町田市は〇八年度から始めたが、特典が市のホームページなどでのPRに限られ、応募企業は少なく、昨年度は一社のみ。入札などで優遇する新宿、豊島、中央区も状況は変わらない。豊島区は、入札や契約での優遇を建設だけでなく、物品や委託に広げることも検討する。こうした中、異例と言えるのは足立区。〇九年度の三社からスタートし、一二年度は八社まで増えた。認定企業の従業員が家族を保育所特別養護老人ホームに入所させる際に有利になる特典が好評といい、他区市のヒントになりそうだ。
 都中小企業団体中央会中央区)の担当者は「もともと少人数の中小企業にとって、ワークライフバランスは現実的には仕事量を減らすことになり実現は難しい。動機づけがないと取り組みにくい」と説明する。 (松村裕子)

本記事では,東京都,町田市,中央区,新宿区,豊島区,足立区における中小企業への「ワーク・ライフ・バランス」認定制度の取組を紹介.東京都の同制度に関しては,同都HPを参照*1
同制度では,「都内に本社又は主たる事業所を置き,常時雇用する従業員の数が300人以下」である「企業,社団法人,財団法人,NPO法人等」を「対象」.同制度は4つの部門に分かれており,「年間総労働時間や所定外労働時間など,長時間労働の削減に向けて取り組む職場」に関する「長時間労働削減取組部門」,「年休取得促進の仕組みづくりや新たな休暇制度の設定など,休暇取得促進に向けて取り組む職場」に関する「休暇取得促進部門」,「育児休業や介護休業制度について,法律以上の制度導入や充実に向けて取り組む職場」に関する「育児・介護休業制度充実部門」,「育児や介護に関わらず、ライフステージに応じ,仕事と生活の両立に向けて多様な勤務形態が導入されている職場」に関する「多様な勤務形態導入部門」へ認定の応募を行う.応募の際には,「申請書」*2,「労働関係法令等チェックリスト」*3,そして,実際に働く「従業員の意見書」*4の提出が求められている.また,手続上「複数部門への応募も可能」とはされているものの,「認定は1団体につき1部門のみ」となる.応募後は,「学識経験者及び有識者で構成される「東京都いきいき職場推進事業認定企業審査会」」で「厳正かつ公正に審査」が実施され,認定.「認定企業取組紹介DVD制作」,「ワークライフバランスフェスタ東京2013」の場で「認定状授与」や「企業のブース等を設置し,各企業をPR」*5を行うこととになる.
このように「認定企業は部門ごとに選定」され,「合計10社程度選定」*6の認定を想定.実際の認定状況は,2008年度*7では「長時間労働削減取組部門」が2社,「年休取得促進部門」は3社,「育児・介護休業制度充実部門 」は5社,「多様な勤務形態導入部門」は2社と合計12社.2009年度*8では「長時間労働削減取組部門」は3社,「年休取得促進部門」は1社,「育児・介護休業制度充実部門 」は4社,「多様な勤務形態導入部門」は2社と合計10社.2010年度*9では「長時間労働削減取組部門」は2社,「年休取得促進部門」は1社,「育児・介護休業制度充実部門」は4社,「多様な勤務形態導入部門」は3社と合計10社.2011年度*10では「長時間労働削減取組部門」は3社,「年休取得促進部門」は1社,「育児・介護休業制度充実部門」は5社,「多様な勤務形態導入部門」は3社と合計10社とある.結果,認定社数では,2008年度の12社から始まり,以降10社で安定しているものの,本記事を拝読させて頂く限りでは,「応募は初年度こそ41社」であるものの「2年目以降は30社に届かない状態が続いている」とも報道.既に「基本的な「働き方」を見直」*11された企業等は認定済みと理解すべきか,はたまた,本記事にも紹介されているように上記の「申請手続きが面倒」との理解がその背景なのだろうか.同制度の運用状況は,要確認.

*1:東京都HP(雇用・労働TOKYOワーク・ライフ・バランス支援情報ワーク・ライフ・バランス支援事業 ≪東京都≫はたらくネット両立支援・雇用平等)「東京都いきいき職場推進事業

*2:東京都HP(雇用・労働TOKYOワーク・ライフ・バランス支援情報ワーク・ライフ・バランス支援事業 ≪東京都≫はたらくネット両立支援・雇用平等東京都いきいき職場推進事業)「申請書

*3:東京都HP(雇用・労働TOKYOワーク・ライフ・バランス支援情報ワーク・ライフ・バランス支援事業 ≪東京都≫はたらくネット両立支援・雇用平等東京都いきいき職場推進事業)「労働関係法令等チェックリスト

*4:東京都HP(雇用・労働TOKYOワーク・ライフ・バランス支援情報ワーク・ライフ・バランス支援事業 ≪東京都≫はたらくネット両立支援・雇用平等東京都いきいき職場推進事業)「従業員の意見書

*5:前傾注1・東京都(京都いきいき職場推進事業)

*6:前傾注1・東京都(京都いきいき職場推進事業)

*7:東京都HP(雇用・労働TOKYOワーク・ライフ・バランス支援情報ワーク・ライフ・バランス支援事業 ≪東京都≫はたらくネット両立支援・雇用平等東京都いきいき職場推進事業)「平成20年度東京ワークライフバランス認定企業紹介

*8:東京都HP(雇用・労働TOKYOワーク・ライフ・バランス支援情報ワーク・ライフ・バランス支援事業 ≪東京都≫はたらくネット両立支援・雇用平等東京都いきいき職場推進事業)「平成21年度東京ワークライフバランス認定企業紹介

*9:東京都HP(雇用・労働TOKYOワーク・ライフ・バランス支援情報ワーク・ライフ・バランス支援事業 ≪東京都≫はたらくネット両立支援・雇用平等東京都いきいき職場推進事業)「平成22年度東京ワークライフバランス認定企業紹介

*10:東京都HP(雇用・労働TOKYOワーク・ライフ・バランス支援情報ワーク・ライフ・バランス支援事業 ≪東京都≫はたらくネット両立支援・雇用平等東京都いきいき職場推進事業)「平成23年度東京ワークライフバランス認定企業紹介

*11:武石恵美子「働き方改革を進めるために」佐藤博樹, 武石恵美子編著『ワーク・ライフ・バランスと働き方改革』(勁草書房,2011年)206頁

ワーク・ライフ・バランスと働き方改革

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