全国で初めて居酒屋やカラオケ店の客引きも禁止した豊島区の改正生活安全条例が4月に施行され、3カ月が経過した。罰則はなく、住民や警察と連携したパトロールで客引きの一掃を目指しているが、風俗店やキャバクラでない店まで規制対象とする動きには「厳しすぎる」との声も聞かれる。全国有数の繁華街・池袋はどう変わったのか。【黒田阿紗子】
 条例は、豊島区が指定した地区内で性風俗店や酒を提供する飲食店、キャバクラ、カラオケ店が客引きすることを全面的に禁止。店舗前を除いて客引き目的で路上などに立つ「客待ち」も禁止した。罰則なしの区条例が浸透するか、鍵を握るのは住民の力だ。池袋は繁華街では珍しく商住一体の地域で、客引き対策のパトロールに取り組む三つの住民団体がある。条例では、これらの団体に所属する住民ら計約280人を区長が「指導員」に認定。顔写真入りの証明書を発行し監視を任せることにした。
 地元住民でつくる環境浄化推進委員会会長の加藤竹司さん(70)は「これまでは『何の権限があるんだ』と因縁を付けられていたが、区条例と『指導員』の認定で格段にパトロールがしやすくなった」と手応えを感じている。商店街をよく通るという女子大生(20)は「どんな業種の客引きでも、獲物を狙うような目で道をふさがれるのは嫌だ」と区条例を歓迎する。一方、出張で大分県から訪れた男性(52)のように「どの店にするか決まっていない時は勧誘が参考になる。繁華街ならではの活気を感じる」と声かけを好意的にとらえる客も少なくない。
 豊島区治安対策担当課は「にぎわいを維持しながら、誰もが安心して歩ける町にするにはどうしたらいいか。条例の施行で終わらず、今後も住民と一緒に考えていきたい」と話す。
 ◇「体感治安の悪化防ぐ」
 都道府県の迷惑防止条例などでは、性風俗店やキャバクラ、執拗(しつよう)な付きまといを伴う悪質な客引きが検挙の対象となっている。警視庁も04年以降、都内有数の繁華街である池袋、新宿・歌舞伎町、六本木、渋谷の4地区で客引き対策を強化してきた。ただ、これまで性風俗店などに多かった客引きは多様化している。豊島区内の客引きに関する110番通報(11年)のうち、トップはカラオケ(12・7%)。以下、キャバクラ(11・4%)、性風俗(10・7%)、居酒屋(9・7%)と続く。特に池袋駅周辺は居酒屋やカラオケ店の激戦区。豊島区が規制に踏み切った背景には、08年のリーマン・ショック以降、客の奪い合いで人通りの多い路上に出向いて客引きを始める店が急増したこともある。
 池袋署の大畑誠生活安全課長は「客引きから次々と声がけされることで不安が高まり『体感治安』が悪化する。犯罪の温床にもなりかねない。住民と区、警察の3者が協力し、街の健全化を一層進めたい」と話す。〔都内版〕

本記事では,豊島区における生活安全条例の施行状況を紹介.改正された同条例に関しては,同区HPを参照*1
同条例では,第11条において「何人も,道路,公園,広場,駅その他の公共の場所において.公衆の目に触れるような方法」で,次の「掲げる行為をしてはならない」とし,「客引き行為等の禁止」を規定.具体的には,「店舗型性風俗特殊営業(風営法第2条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業をいう.)に関し,客引きをすること」,「酒類を伴う飲食をさせる行為の提供について,客引きをすること」,「個室を設けて当該個室において客に専用装置による伴奏音楽に合わせて歌唱を行わせる施設の提供について,客引きをすること」「 前3号に掲げる行為を行う目的で,客待ちをすること」,そして,「人の性的好奇心に応じて人に接する役務」又は「専ら異性に対する接待をして酒類を伴う飲食をさせる役務」の「いずれかに該当する役務に従事するように勧誘すること」,「わいせつな行為に係る姿態であって性欲を興奮させ,又は刺激するものをビデオカメラその他の機器を用いて撮影するための被写体となるように勧誘すること」,「 前2号に掲げる行為を行う目的で,うろつき,たたずみ又はたむろすること」の7項目が規制.同条第2項に基づき,区長はこれらの「行為を防止するため」「特別な措置を講ずる必要があると認める区域」を「迷惑行為防止重点地区」として「指定」できるとし,同条第5項,第6項により,同「地区内」で,上記の「行為をしていると認められる者」に対し「当該行為をやめるよう指導することができ」,あわせて,「区長」は,同「指導を,区長があらかじめ指定する者に事務の一部を委託して,行わせることができる」*2とも規定されている.
実際にも「池袋東口周辺地区」と「池袋西口周辺地区」,「大塚地区」と「巣鴨地区」*3の4地区を指定されている.本記事を拝読させて頂くと,同条例の基づき「委託」された「環境浄化指導員」は「約280人」となり,「顔写真入りの証明書を発行」されてもいる,という.ただし,同地区内で上記の禁止行為を行った場合でも,同条例では「罰則は設け」*4てはいない.そのため,各指導員による,同条例基づく指導という「説得」*5という政策手法による実施となる.本記事からは,同条例前に比べると「パトロール」実施体制の支援には結びついている様子が窺えるものの,その効果は判然とはしない.同条例の効果も要確認.

*1:豊島区HP(生活ガイド安全・安心安全安心についての区役所の取組み 豊島区生活安全条例の一部が改正されました)「豊島区生活安全条例」(平成12年11月1日,条例第 条例第64号」

*2:前掲注1・豊島区(豊島区生活安全条例)

*3:豊島区HP(生活ガイド安全・安心安全安心についての区役所の取組み )「豊島区生活安全条例の一部が改正されました

*4:前掲注3・豊島区(豊島区生活安全条例の一部が改正されました)

*5:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),95頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

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