「やっぱり来たか」「史上最悪」。衆院解散で、知事選と衆院選の「ダブル選」が確定した東京都。都選挙管理委員会は、選挙啓発用の冊子やポスターの追加印刷に加え、市区町村向け説明会などの準備に追われ、悲鳴を上げている。特に、都議補選が行われる葛飾区と世田谷区、八王子市は「トリプル選」となることから、投開票日の人手や投票箱が足りなくなるなど、大わらわの様相だ。
 25人の職員で臨む都選管からは「もっと早くに分かっていれば、臨時職員を雇って準備したのに…」とため息が漏れる。過去には衆参同日選の経験もあるが、職員の一人は「前々から分かっている選挙と違い、今回は急な知事選と急な衆院選。準備期間が全然違う」と打ち明ける。市区町村からの問い合わせも増えているようで、休日返上で電話対応に明け暮れる見通しだ。
 葛飾区では、三つの選挙が重なったことで、当初開票所として予定していた区総合スポーツセンターの1室だけでは手狭になると判明。急きょ、もう1部屋を確保した。しかし、「既に区民の予約で埋まっていた。一件一件、頭を下げて譲ってもらった」(区職員)という。投票箱は買い増し、投票所の入場券も刷り直しに。「史上最悪の選挙」(同)と嘆く。一方、総選挙と重なったことで、都知事選の投票率は向上するともみられるが、都選管は「知事選の存在が総選挙に埋もれてしまいかねない」と危機感を抱く。「知事選は都政に興味を持ってもらうチャンス。忙しいながらも、しっかりPRしたい」と気を引き締めている。

 「もう発注したのに……」。東京都足立区の選管職員はそう頭を抱えた。
 知事選用の投票所入場券の印刷を発注した後で、衆院の解散が決まり、刷り直さなければならない事態となった。「同じ日に選挙を行うのに、入場券が別々だと混乱の元になる」として、区選管では、1枚にまとめて刷り直すことを決めたという。しかし、すぐに作業を始めても、知事選の期日前投票に間に合うか微妙な状況で、担当者は「業者にはなんとかお願いしているところ」と話す。
 衆院選東京3区と4区の二つの小選挙区がある大田区は、知事選用の入場券の扱いに苦慮している。開票作業をスムーズにするため、知事選の入場券を3区用と4区用に分ける予定だが、既に一部は区別のないまま印刷済み。その入場券をどうするか未定で、同区選管は「もう一秒も無駄にできない」と危機感を口にする。
 約72万人と、都内最多の有権者を抱える世田谷区も、入場券の印刷を発注済みで、現在、書式を変更するか検討中だ。また、江戸川区では、投票の仕方などを説明する「投票のしおり」を区民に配布する予定だったが、知事選についてしか書かれておらず、刷り直しが必要となった。入場券の発送作業も混乱している。江戸川区内のダイレクトメール発送代行業者は今回、目黒区の知事選の投票所入場券の印刷・発送作業を請け負った。知事選の投票所入場券を刷り直す作業が加わったことで、作業が膨大になり、知事選の期日前投票に間に合うか、ギリギリ。他の区からも発送業務の依頼を受けたが、「とても余裕がない」と断ったという。
 都知事選に加え、急きょ衆院選とのダブル選挙となった都内の自治体。既に刷り上がった知事選用の投票所入場券の刷り直しを迫られる選挙管理委員会が相次いでいる。今月30日に始まる知事選の期日前投票に間に合うように入場券を発送しなければならず、担当者たちは焦りを募らせている。

 野田佳彦首相の衆院解散表明により、東京都内は12月16日に衆院議員と都知事の「ダブル選」が実施される見通しだ。都選挙管理委員会にとっては任期途中の辞職で知事選が統一地方選を外れるのが初めてなのに加え、衆院選とのダブル選も初体験。巨大な2選挙に短期間で臨まなければならない職員たちは頭を抱えている。【加藤隆寛】
 都内の有権者は約1075万人。09年の前回衆院選は25選挙区に110人が立候補し、都知事選も毎回数十人が資料を受け取りに来るという。事前審査などに携わる選管の作業量は膨大だ。今回特に負担が大きいのが、都議補選も含めた「トリプル選」になりそうな世田谷区、葛飾区、八王子市の各選管。投票用紙と投票箱は▽知事▽都議▽衆院小選挙区衆院比例代表最高裁裁判官国民審査−−の5種類を準備しなければならない。葛飾区選管事務局長の種井秀樹さんは「55投票所に275投票箱が必要で、区の備品では足りない。日本中で選挙をやっている日によそから借りるのは無理だろうが、かき集めるしかない」と困惑している。
 告示・公示から投票日までの選挙期間も▽知事選が17日間▽衆院選と国民審査が12日間▽都議選が9日間−−と異なる。期日前投票は告示・公示日の翌日からで、国民審査は投票7日前からと決まっているが、通常の総選挙でも「せっかく来たのに、なぜ国民審査の投票ができないのか」といった苦情が選管に寄せられるという。「周知しておかないと大混乱になりかねない」と種井さんは懸念する。唯一のメリットと言えるのが経費の節減。都選管によると、都知事選は約50億円、衆院選は約60億円かかるが、ダブル選だと人件費が2回実施分ほどかからないため、今回は110億円を下回る見込みという。ただし、開票作業の終了は大幅なずれ込みが確実で、時間短縮の工夫が求められる。
 3選挙区で実施される都議補選は、石原慎太郎氏の辞職の申し出が来年1月23日以降なら実施されなかった。任期満了(来年7月22日)まで半年を切っていれば、欠員補充の選挙は必要ないとの規定があるためだ。選管職員の一人からは恨み節も漏れる。「石原さんがあと3カ月、辞職を思いとどまってくれていれば

 総選挙が東京都知事選と同日選となることが決まって一夜明けた十五日、都内自治体の選挙管理委員会は、倍増した準備作業に追われた。中でも葛飾、世田谷の二区と八王子市では都議補選も加わり、職員は「投開票の作業予定を一から練り直しだ」と悲鳴を上げた。 (都政取材班)
 「前代未聞の選挙。五種類の投票を経験する自治体なんてほとんどないのでは…」と嘆くのは、葛飾区選管の種井秀樹事務局長。知事選、都議補選に急きょ、衆院選小選挙区比例代表最高裁裁判官の国民審査が加わる。最大の悩みは投票箱の確保。五十五カ所の投票所に五個ずつ備えるが、一カ所あたり一〜二個足りず、不足分は約七十個に上る。
 石原慎太郎前知事の突然の辞職で、開票所として区総合スポーツセンターを急きょおさえた。既に別のスポーツ団体が予約していたのを譲ってもらった。「もともと都知事選と都議補選の二つの開票のつもりで場所を確保していた。五種類になると、作業もかなりぎゅうぎゅう詰めになる。作業のレイアウトも変えないと…」
掲示板も不足?
 投票箱は公職選挙法の施行規則で、三重構造にすることやかぎを付けることなど、仕様が決まっている。別の箱では代用できない。「よし来た、という感じです。準備は十分なので」。投票箱で全国トップのシェアを誇る「ムサシ」(東京都中央区)には、解散総選挙の見通しが伝わった十四日午後以降、各地の選管からの問い合わせが相次いだ。いつ選挙になってもよいように、春先から約二千個分の在庫を確保しているという。
 一方、都選管ではポスターの掲示スペースも心配の種。市街地では、新たな場所を確保できるか分からない。知事選用の掲示板に二十五人分のポスターが張れるため、知事選の候補者数が少なければ同じ板の空きスペースを衆院選に回し、不足分は付け足すなど知恵を絞る。知事選の啓発用横断幕やポスターは発注済みで印刷直前。総選挙の広報文も盛り込むのは断念した。選管の悩みは尽きない。
◆同日選まだまし
 知事選、総選挙とも単独で行う場合の経費は各五十億円余。同日選なら、投開票所の賃料など重なる部分は削減できる。また、過去三回の都知事選の投票率は44〜57%で衆院選より低い傾向がある。選管は、せわしい師走の選挙で低下が気掛かりだったが、同日選で上昇が期待できる。都選管の担当者は「都知事選と衆院選が一、二週間単位でずれるのが最悪だった。同日選はまだマシ」と話している。知事選の告示は十一月二十九日、衆院選の公示は十二月四日、いずれの選挙も十六日に投開票となる見込み。

四記事では,東京都及び東京都に位置する市区における選挙管理委員会の準備状況を紹介.
東京都の各市区町村は,第1記事でも紹介されているように「知事選と衆院選の「ダブル選」」となる.加えて,第2記事でも紹介されているように「都議補選」も行われるため,「葛飾区と世田谷区,八王子市」では「トリプル選」になる.3つの選挙に対応されるために,各選管の準備と検討状況を紹介.例えば,第1記事では「当初開票所として予定」されていた部屋「だけでは手狭になると判明」し「急きょ,もう1部屋」の用意をされるたり,第2記事では,「既に刷り上がった」り「発注済み」の「知事選用の投票所入場券」の印刷の「書式を変更するか」かの判断を迫らている状態を紹介.また,第3記事を拝読させて頂くと,「トリプル選挙」である市区では「知事,都議,衆院小選挙区衆院比例代表最高裁裁判官国民審査」の5つの投票が行われるため「投票用紙と投票箱」もまた「5種類を準備」しなければならない状態にもあり,加えて,第4記事を拝読させてい頂くと,「市街地では」「ポスターの掲示スペースも心配の種」となり「新たな場所を確保できるか分からない」ともいう.一方,第3記事を拝読させて頂くと,通常は「都知事選は約50億円,衆院選は約60億円かかる」なか「ダブル選だと人件費が2回実施分ほどかからないため,今回は110億円を下回る見込み」との人件費面での効果を見立てている.
「12月16日投票東京都知事選挙」の「キャッチコーピー」は「こんどの都知事は,私が選ぶ.」*1(選ぶのは「私」であることは,いつもですので「こんどの都知事も」と思いますが.「は」となるのは,どういう意味合いなのだろう)と喧伝されるなか,ことほどさように選挙制度の運営は,「公務員による公的かつ組織的活動」*2により支えられていることがよく分かる各記事.