高根沢】町は本年度から、事務レベルでの予算要求の内容や町長査定など、予算編成の過程を3段階で町民に公表する制度を導入した。これまで行っていた「行政評価」制度は、事務手続きの簡素化や調整機能の向上を図るため廃止した。加藤公博町長は「予算編成の透明性を確保し、町民と行政の信頼関係を高めていくのが狙い」と話している。
 町は2002年度に、中長期的な政策・施策を議論する目的で「行政評価」を導入。職員のコスト意識向上などのメリットがあったものの、予算編成と行政評価の議論が分離していたため、部や課の横断的な事業の組み替えなどができず、予算が硬直化するなどのデメリットもあった。そのため、役場内の調整機能を向上させる目的で行政評価を廃止することにした。
 新制度ではこれまで行政評価に使っていた時間や事務を予算の精査や調整に振り向け、担当者、管理職レベルでの協議を蜜にし、各レベルでの意思決定事項を明確化する。また、事務方レベルでの予算要求や査定時点と、復活要求や町長・副町長の査定時点で町民に編成の過程を公表する。8月に予算編成方針などを盛り込んだ2014年度の「経営方針」、12月に事務方でまとめた当初予算案、年明けの3月には町当初予算案をそれぞれ公表する。事務レベルの当初予算案は事業別の査定結果表も公表し、パブリックコメントを実施。町長査定に反映させる。

本記事では,高根沢町における予算編成の取組を紹介.同町では「行政評価と予算編成を統合」し「新たな予算編成の仕組み」*1を採用されることになる.
同統合に際して行なわれたパブリックコメントでの資料を確認してみると,同町では「政策・施策の議論と予算の議論を分離」し「予算を査定する前」に「そもそも事業を実施すべきか否か」を「査定するため」に「行政評価」を2002年度から「開始」.「行政評価で継続評価」との判断に至らなければ「予算要求できない」など「日々の取組みとして定着」していたとも整理されている,一方で,「庁内調整機能の面」では「期待した成果までは得られ」なかったとの「課題」もあった,という.具体的には,「行政評価の自己評価(要求時点)」の「総事業費が」「前年度決算,あるいは当該年度当初予算を上回っている」こと,「部・課横断的な事業の組み替え等がなく」「予算が硬直化している」*2ことを指摘する.
そこで,今回は「庁内調整機能を向上させることに力点を置」き「行政評価と予算編成を統合」した「予算編成の仕組み」を「構築」.具体的には,まずは「行政評価に係っていた時間や事務」を「予算の精査や調整(折衝)に振り向けること」にある.これにより「事務担当レベル,管理職レベル等」の「各段階」の「協議をより密にする」こと,そして「各段階における意思決定事項を明確にし,丁寧に積み上げてい」ことを目指される.二つめは,「各段階における意思決定事項」を「事務レベルによる要求及び査定のとりまとめ時点」と「復活要求及び町長・副町長による査定のとりまとめ時点」と「予算の編成過程」*3を通じて行い,加えて,本記事でも紹介されているように,何れの段階で「公表」*4される.
また,同町では2002年に「高根沢町行政評価に関する条例」を制定していたものの,同取組のために2013年3月に廃止.「仕組みとしての行政評価は廃止する」ものの「理念=考え方は残し「高根沢町まちづくり基本条例」「の中に溶け込ませ」*5た,という.具体的には,同条例の第15条では「町は,地域経営計画を実現するために,常に中長期的な視点を持つとともに,成果やコストを意識しながら,不断に検証及び改善に努めます」と「行政評価」の考え方を示し,続く第16条で「町は,別に規則で定めるところにより,前条に定める行政評価を踏まえた予算編成の仕組みを確立し,健全な財政運営を図ります」と,第15条の考え方を踏まえた「予算編成の仕組みを確立」*6を行なうことが規定されている.
予算編成に関しては,しばしば「時間の経過とともに慣れて定型的な「作業」」となり「マンネリ化してくる」*7とも観察されることもある.そして,「定型化」を通じた「マンネリ化」を回避するために「編成手法そのものを変える」*8ことが,編成再編の理由として整理されることもある.2008年4月2日同年10月25日2009年10月17日同年10月18日付同年11月27日付2010年10月7日付2011年10月26日付の各本備忘録で取り上げた「財政部(局)統制」の復権との整理が適切か,または,予算編成もまた一新し,行政評価による10年の経験が予算編成に変化を及ぼすことになるのか,今後の編成過程は要経過観察.

*1:高根沢町HP(高根沢の町政)「行政評価と予算編成を統合し、新たな予算編成の仕組みにする 取組み(案)に係るパブリックコメントの実施について

*2:高根沢町HP(高根沢の町政行政評価と予算編成を統合し、新たな予算編成の仕組みにする 取組み(案)に係るパブリックコメントの実施について )「行政評価と予算編成を統合し、新たな予算編成の仕組みにする取組み(案)」1頁

*3:前掲注1・高根沢町(行政評価と予算編成を統合し、新たな予算編成の仕組みにする取組み(案))1頁

*4:前掲注1・高根沢町(行政評価と予算編成を統合し、新たな予算編成の仕組みにする取組み(案))2頁

*5:前掲注1・高根沢町(行政評価と予算編成を統合し、新たな予算編成の仕組みにする取組み(案))3頁

*6:高根沢町HP(高根沢町 例規集)「高根沢町まちづくり基本条例」(平成20年6月10日.条例第20号)

*7:稲沢克祐, 鈴木潔, 公益財団法人日本都市センター編著『自治体の予算編成改革』(ぎょうせい,2012年)169頁

自治体の予算編成改革―新たな潮流と手法の効果―

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*8:前掲注7・稲沢克祐, 鈴木潔, 公益財団法人日本都市センター2012年:170頁