青森県は県政の指針となる次期基本計画(2014〜18年度)に、全国的に珍しい「県内総時間」という新しい考えを盛り込む。県内総時間は県民が県内で暮らす時間(寿命)と、県外からの訪問者の県内滞在時間を足したもの。県は総時間が延びれば県経済が潤うと提唱。この考えを浸透させ、平均寿命が全国一短い「短命県」の返上を図る。
 県内総時間の参考にしたのは、日本総合研究所の藻谷浩介主席研究員が著書の「デフレの正体」で提唱した「国民総時間」。同書では、国民が経済活動に使える総合計を「人口×365日×24時間」と定義付けている。県内総時間では、平均寿命が延びれば県民が県内で使う時間が増え、その間の消費も増えると考える。そうなると、企業の新たな生産が誘発され、利益が労働者に分配される。加えて、多くのビジネス客や観光客が訪れれば、県内の交流人口が増え、最終的に県民所得の増加につながる。
 厚生労働省が2月に発表した2010年の平均寿命調査によると、青森県は男性77.28歳、女性85.34歳で、ともに全国最下位。全国トップの長野県と比べて男性は3.60歳、女性は1.48歳の差がある。県は短命県の返上を最重要課題の一つとしているが、成果が出ていないのが現状だ。このため県は、県内総時間を短命県返上の切り札にしたいと考え、寿命が延びることによる経済効果を独自試算した。目標とする長野県の死亡率を適用して、死亡者数が年間約3000人減少したと仮定すると、国の家計調査などから消費額は34億円増える。生産や新規雇用も増加し、計100億円の経済効果が生まれると推計した。
 県は観光客や外国人宿泊者数の増加、県内旅行者の満足度の向上にも力を入れ、寿命を延ばすこととの相乗効果を図る。県企画調整課の千葉雄文総括主幹は「平均寿命が短いというのはある意味、県経済が向上する伸びしろがあるということだ。『寿命が延びれば所得も増える』という考え方が県民に広まり、生活習慣を改善する機運が高まってほしい」と話す。
 県は計画の原案を11月開会の県議会定例会に提出し、年内にも次期基本計画を正式に決定する。

本記事では,青森県における総合計画の取組を紹介.同計画(案)は,同県HPを参照*1
同計画(案)では,まず「計画期間中における様々な環境変化の中」での「位置」と「「めざす姿」に向かって進んでいるか」という「立ち位置」を「確認する」ために「1人当たりの県民所得」と「平均寿命」を「注目していくべき指標」*2として設定.そして,同指標を「立ち位置」に止まらず,見方次第では「伸びしろ」*3としても捉えている.
そこで,この「伸びしろ」を「時間に着目」しながら設定した指標が「県内総時間」.同指標は「青森県民であるなしにかかわらず,青森県という一定の地域で使われる時間」と定義する.具体的には,「県民が県内で使う時間」(これを「県民総時間」と呼ぶ)に「県外からの来訪者などの滞在時間」*4に加えて算出される.この「県民総時間」と「県内総時間」の管理を通じて,「二つの注目指標の伸びしろをより効果的に獲得することができると考え」*5が提示されている.
同計画案が示した,いわば「アルゴリズム*6に従った時間管理の実現過程は,要経過観察.

*1:青森県HP(組織でさがす企画政策部企画調整課次期青森県基本計画(原案)についての意見募集)「次期青森県基本計画 原案」(青森県,平成25年9月25日)

*2:前掲注1・青森県(次期青森県基本計画 原案)133頁

*3:前掲注1・青森県(次期青森県基本計画 原案)133頁

*4:前掲注1・青森県(次期青森県基本計画 原案)133頁

*5:前掲注1・青森県(次期青森県基本計画 原案)136頁

*6:Lane,Jan-Erik(2011) State Management Routledge An Enquiry into Models of Public Administration & Management:p.38