京都市は13日午前、右京区の民家で50代男性が物をため込んでいる「ごみ屋敷」問題で、市の「ごみ屋敷」対策条例に基づき、私道など屋外に置かれた物を行政代執行で強制撤去した。近隣住民の通行に支障が出ており、災害時の住民避難に影響が出るとして強制撤去に踏み切った。
 午前10時ごろ、市保健福祉局の幹部が行政代執行の開始を宣言。男性が立ち会う中、市職員5人が私道に積まれた古新聞や雑誌などを持ち出した。崩落の恐れがあるとして、2階ベランダに置かれた物も片付け、作業は約2時間で終了した。撤去物は近くの市有地に運び、男性の意向も踏まえ、処分する物と男性が持ち帰る物を分けるという。
 2009年12月に近隣住民からの相談で市が問題を把握し、男性に撤去を要請。昨年11月の対策条例施行後は文書指導や命令も行った。市は男性宅を124回訪問し、撤去を求めるほかに健康相談も行ってきた。
 市の説明では、男性は自宅前に所有する幅1・3メートルの私道に、高さ2メートル、奥行き4・4メートル、幅0・9メートルにわたり古新聞や雑誌などを積み上げ、行き止まりになっていた私道の奥側にある3軒の住民らの通行の妨げになっていた。
 市によると、自治体が制定する「ごみ屋敷」の対策条例に基づき物を撤去する行政代執行の先例は把握しておらず、全国で初めてとみられるという。

本記事では,京都市における「京都市不良な生活環境を解消するための支援及び措置に関する条例」の執行結果を紹介.
2014年11月に施行された同条例.施行後「半年が経過」した時点での「効果」としては,「通報等」があった「154世帯」のうち,「不良な生活環境にあり,ごみ屋敷と判定したもの」が「90世帯」,そのうち「清掃の実施など具体的な支援に繋がったもの」が「44世帯」,「要支援者への寄添い支援を図りながら信頼関係の構築に取り組んでいるもの」が「46世帯」*1とある.本記事では,「条例施行後も」「区役所と保健福祉局等が連携」しながら「支援と指導のため124回訪問」し,そのうち「59回」「接触」し「清掃・防火の指導」「清掃への協力や健康相談」「各種福祉制度の情報提供を行」いながら「人間関係の構築を図り,支援を基本」*2としてきた世帯への代執行の実施を紹介.
代執行に至る迄に,同市からの「働き掛け」に対して,「柔らかく運用しながら」「解決する努力」*3を両者で進めつつも,同世帯では「片付ける意思」が示されて「少量の片付けを行うこともあ」ったものの「再び物を持ち込む」「一進一退の状態が続いた」*4,という.結果,同市では,有識者会議に対して意見聴取を実施.同意見では,「狭い私道に「ごみ」を堆積させていることによって,近隣住民の通行や災害時の避難に著しい支障を与えている特異なケース」であり,「自主的な解決以外には条例による措置を採る以外に方法はなく」,同条例第12条第1項に規定する「命令を行うべき案件」であり,「命令によっても解決が図られず,行政代執行が行わざるを得ない」*5との見解が示されている.そこで,同市では,「通行上の支障等が解消されない」」*6として,2015年11月13日に代執行を実施している.代執行実施後の「生活支援」の「継続」*7状況は,要観察.

*1:京都市HP(健康・福祉・教育社会福祉広報資料・お知らせいわゆる「ごみ屋敷」に住まわれる方への支援について〜条例施行後半年が経過 支援を基本として大きく前進〜)「いわゆる「ごみ屋敷」に住まわれている方への支援について〜条例施行後半年が経過 支援を基本として大きく前進」(京都市平成27年6月2日)

*2:京都市HP(健康・福祉・教育社会福祉広報資料・お知らせいわゆる「ごみ屋敷」に住まわれる方への支援について〜条例施行後半年が経過 支援を基本として大きく前進〜)「いわゆるごみ屋敷対策における代執行の実施について」(福祉保健局,平成27年11月12日)2頁

*3:肥沼位昌著・出石稔監修『あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら』(第一法規,2009年)130頁

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)

*4:前掲注2・京都市(いわゆるごみ屋敷対策における代執行の実施について)2頁

*5:京都市HP(健康・福祉・教育社会福祉広報資料・お知らせ「右京区におけるいわゆるごみ屋敷についての有識者の意見」について)「「左京区におけるいわゆるごみ屋についての有識者の意見」について」(福祉保健局,平成27年11月9日)

*6:前掲注2・京都市(いわゆるごみ屋敷対策における代執行の実施について)1頁

*7:前掲注5・京都市(「左京区におけるいわゆるごみ屋についての有識者の意見」について)