北九州市は1日、市庁舎1階フロアに授乳室を設置した。市が進める「赤ちゃんの駅」事業の第1号で、親子が授乳やおむつ替えに利用できる。市は民間にも協力を呼び掛け、10月以降、市内の事業所や公共施設など約100カ所で同様の「赤ちゃんの駅」が開放される。
市役所の授乳室は約8平方メートルで、市民から寄付されたベビーベッドやソファ、化粧台をリサイクルで活用。案内所に声をかけて利用できる。市は「地域社会全体で子育てを支えよう」と、乳幼児を抱える保護者が外出した際に、授乳できる施設を「赤ちゃんの駅」として認定する。今後、市関連施設や児童館のほか、自動車ショールームなどでも授乳室が設けられる。全国的にも珍しく、政令市では初の取り組み。市は共通のステッカーやのぼり旗で「赤ちゃんの駅」をアピールする。

同記事では,北九州市の市庁舎内に,授乳やおむつ替えのための空間として「赤ちゃんの駅」を設けたことを紹介.今後は,市内に100箇所程度が設置される予定であるとのこと.
同種の取り組みは,板橋区,足立区,北区等といった東京都内特別区を中心に広がりつつあり*1板橋区の取り組みが代表事例である模様.同区の取り組み関しては,同区HPを拝見させて頂くと*2,同区においても外出中におむつ替えや授乳などで立ち寄る施設として位置づけており,その数は,現在のところ123施設がある.利用に際しては区民要件は記載されておらず,どのような方でも利用ができるよう.これは,同市でも共通する.異なる自治体間で同種の事業が展開される背景には,今回の北九州市も同種の事業を始めるに当たり,同名称を用いることに同区から了承を得ているとの発言もあるように*3自治体の政策における「相互参照」があるためであり,同事例もまたその一つでといえそう.まさに,政策とは流転するものか,とも思う.たた,板橋区では,「同駅」が,公立・私立の保育所・幼稚園が中心であるようだが,北九州市では,本庁舎以外にも,各区役所,ウェルとばた,子育てふれあい交流プラザ,子どもの館や,民間施設として大型商業施設,モノレール,自動車ディーラー等も追加を予定しているようであり,流転先での「政策の革新」も見ることができる.今後,先行自治体でも「双方向のフィードバック」*4が見られそう.
なお,蛇足.日本家族社会学会による「第2回全国家族調査」(2004年)のデータをもとに分析した結果かららは,「女性の結婚・出産・育児期の正規雇用就業継続率は増えていない」*5とも観察される現状下で,家庭責任を負う方々が帰属してきた内部労働市場を放棄しないような「家庭責任を負いながら正規雇用就業を続ける」,いわゆる「両立政策」に関して,自治体が何か出来るものなのか(又は,出来ないのか)を種々考えるものの,良策を依然整理できない状況にある.今後の検討課題の一つ.

*1:日本経済新聞(2008年7月20日付け)「都内自治体、「赤ちゃんの駅」相次ぎ整備 おむつ替えや授乳

*2:板橋区HP(子ども・子育て・教育:地域で子育て、親育ち)「赤ちゃんの駅

*3:北九州市HP(市長の部屋:市長記者会見)「平成20年7月16日(水)市長記者会見

*4:伊藤修一郎『自治体発の政策革新』(木鐸社,2006年)39頁

自治体発の政策革新―景観条例から景観法へ

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*5:田中重人「ライフサイクル中立的な平等政策へ辻村みよ子・川上正二・水野紀子編『男女参画のために 政策提言』(東北大学出版会,2008年)292〜293,296頁