太田市役所の課長が始業時に行っている庁内放送の原稿をまとめた文庫本「あの太田市の課長たち」の第二弾が出版された。二〇〇五年の合併で旧三町の職員も新たに加わり、業務で感じたことや行政改革への取り組みを紹介している。
 庁内放送は〇一年六月にスタート。〇四年には原稿を編集した第一弾を発行した。現在は課長職約百六十人が、交代で毎朝一−二分のスピーチをしている。第二弾は〇五−〇七年度の原稿約七百三十本から二百四十本を収録した。内容は庁内のコスト削減や省エネ、地域との協働、災害への心掛けなど多岐にわたる。クレームへの対応については「正当化・ディベートは何の役にも立たない。対応のまずさで信頼を失う」(元気おとしより課)、理不尽な要求をする保護者に対しては「職員と保護者の関係はサービスの提供者と受益者でなく、ともに子育てをするパートナーと考えている」(児童施設担当)といった意見が述べられている。市役所の課長補佐以上で構成する幹部会が発行。二百五十六ページで市役所などで六百円で販売している。

同記事では,太田市における課長職が,毎朝,庁内放送で行っているスピーチの内容を取りまとめた文庫本が発売されたことを紹介.しかも,「第2弾」.詳細については,同市HPを参照*1
管理職者による,「毎朝」の庁内放送の取り組み自体はもちろん,「7年」も継続されてきたことにまずは驚き.2005〜2007年で730本となると年間のべ約240がスピーチすることになる.同記事によれば.同市では課長職が「約百六十人」(なお,同市の2007年4月1日現在の「一般行政職の級別職員数等の状況」を拝見すると,5級が124名,6級が48名があったことからすれば*2,課長・主幹・課長補佐と参事がその対象なのだろうか)が配置されているとすれば,課長職にある1名は,概ね年に2〜3回のスピーチが行うことになる.そのスピーチの内容は,「太田市経営方針を念頭においた各課長たちの仕事に対する考え方」が中心とのこと.ただ,自らの業務とその考え方を「一−二分」という限られた時間内でお話になることは,各課の業務全体と各職からの主張,そして,ご自身の職務経験を手際よくまとめることが要請されることになり,これは大変.一方で,同作業を通じて,「考え調査し行動する職員」の育成*3にも結びつき得る興味深い取り組みか.同種の取り組みを採用されている他の自治体もあるのだろうか.調べてみたい.同書籍,個人的にも,自治体職員及び機構を「民族誌的アプローチ(ethnographic approches)」*4から観察させていただくうえでも貴重な記録ともなりそうか(放送は,始業時間前の放送なのだろうか,むしろ,実際に聞いてみたいなあ).
なお蛇足.同市HPでは,同文庫本,同市副市長が会長を務める「太田市幹部会」が「まとめ」られ「発刊」されたとある.個人的には,地味に観察を続けている「市政中枢(core executive)」研究の関心からも,同会に関して同市例規集から確認を試みてみるものの把握できず.残念.

*1:太田市HP(秘書室お知らせ)「著書「あの太田市の課長たちPart2」を発刊しました

*2:太田市HP(企画部-人事課)「平成19年度太田市の給与・定員管理等の公表」4頁

*3:稲継裕昭『プロ公務員を育てる人事戦略』(ぎょうせい,2008年)19頁

プロ公務員を育てる人事戦略―職員採用・人事異動・職員研修・人事評価

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*4: R.A.W.Rhodes, Pault Hart,Mirko Noordegraaf,Observing Government Elites: Up Close and Personal,Palgrave Macmillan,2007,3.

Observing Government Elites: Up Close and Personal

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