地球温暖化対策で国と地方の連携強化へ向けて全国知事会が設置し、県が座長を務めている地球温暖化対策専門部会が、国への提言のたたき台となる調査報告書案の取りまとめに入った。温室効果ガス抑制に大きな鍵を握る事業所対策や国民運動推進の在り方などを柱として、国と地方の役割分担を明確化し、効率的・効果的対策を目指す内容。七月の北海道洞爺湖サミットをにらんだ取り組みで、サミット前に、報告書に基づく地方側の提言が、全国知事会として打ち出される見通しだ。
 地球温暖化対策専門部会は、全国知事会エネルギー・環境問題特別委員長の橋本昌知事が「温暖化対策で国や産業界と地方の連携が取れていない」として発案、同委内に昨夏設置された。全国三十五道府県で組織し、環境省がオブザーバー参加。県環境政策課長が座長、同課が事務局を務めている。
 県環境政策課によると、報告書案はこれまでの調査研究から1事業所対策2国民運動の推進3新エネルギーの促進4森林吸収源対策―などが柱になる見通し。事業所対策は、大規模工場などからの温室効果ガス排出量は国への報告が義務付けられているが、都道府県を飛び越えて報告されているため、都道府県によって対応に温度差のあるのが実情。国民運動では、「環境家計簿」「エコ・チェックシート」など同じような取り組みを国と都道府県が別々に行っており、国民には分かりづらく浸透し切れていない。また、太陽光発電バイオ燃料などの新エネルギー導入、温室効果ガスの森林吸収源対策については、財源確保を含めた効果的誘導策の創設を求める声が地方側に多い。いずれも、国と地方の役割分担によって課題をクリアし、国を揚げた取り組みにつなげる狙いだ。
 報告書は新年度明けにまとめられる見通し。その後、エネルギー・環境問題特別委員会を経て全国知事会に提出され、これを基にした国への提言が「サミット前のできるだけ早い時期」(橋本知事)に打ち出されると見られる。これら一連の取り組みについて、知事は先月の定例会見で「関係省庁が国として一体で取り組み、さらに、地方と一緒に進めていくことによってはじめて、環境問題に対する国民の意識啓発が進むのではないか。実際の効果を上げるためにも、そういった体制づくりが不可欠」と、意義を述べた。
 今年から五年間は九七年の京都議定書の約束期間で、日本は、基準年の九〇年比で6%の温室効果ガス削減へ向けた取り組みを本格化。洞爺湖サミットでは、五〇年までに温室効果ガス排出量を半減する長期目標を「真剣に検討する」とした昨年六月のハイリゲンダム・サミット(ドイツ)での合意を出発点に、ポスト京都の新たな国際枠組み構築に道筋をつけられるかが焦点となりそう。一方、県は〇六年策定の「地球温暖化防止行動計画」に基づき、県内で基準年比4・6%の温室効果ガス削減の目標達成に向け、各家庭で実践するエコ・チェックシートや買い物時のマイバッグ運動、エコ事業所登録制度の普及など幅広い県民運動に取り組んでいる。

同記事では、全国知事会地球温暖化対策に関する、国への提言のたたき台となる調査報告書案を作成したことを紹介。茨城県知事がエネルギー・環境問題特別委員の委員長を務めている。
温室効果ガスの排出量対策等への提言は、各都道府県区域を越えて都道府県レベルが自主的な連携をまずは「実績」として挙げれば、同提案もより説得力が増すことになるかと思う。また、「環境家計簿」「エコ・チェックシート」等のような、国と都道府県で別々に行っている類似の取り組み(いわば、「善意の二重行政化」)の解決も必要。確かに、久保はるか先生が指摘されているように、「政策の対象領域と対象たる経済活動の領域にズレが生じるのが自治体政策空間の特徴」であり、そのためにも「自治体政策空間でのルールを維持するよりも全国一律のルールの方が望ましい」*1ともいえる。その場合、調整コストから見れば国による対応を待つことも想定される。ただ、その前に、都道府県側が一致した仕組みや基準の「事実上の標準化」の行動を図ることが、より実質的な取り組みといえる。環境問題については、悠長に国の動向を待っている時ではないかと思う。
なお、各団体の構成団体である自治体では情報公開が進みつつある一方で、地方六団体には各HPがあるものの、個別の検討状況(過程)は「自治業界」外部の人々には分かりにくい。「構成団体主権」と言われればそれまでだが、全国知事会を始めとした各団体の位置づけを考えれば、各団体が、今、何を、どのような検討をしているかを少しでも分かり易くなるように改善してもらえると、同記事にもある「国民運動」の喚起に期待出来ると思うのだが。

*1:久保はるか「自治オゾン層保護政策の動態分析」樫村志郎編『規整と自律』(法律文化社、2007年)90頁

規整と自律 (法動態学叢書―水平的秩序)

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