品川区の池田山町会(東五反田五)が、青色回転灯をつけた車で夜間パトロールを始めた。地元の交番廃止を機に住民の防犯意識が高まり、「防犯は町会活動から」と、休眠状態だった町会組織を見直し、町をあげての活動となった。 (松村裕子)
 同町会によると、これまで数十年間、区役所の名簿に形式的に登録していただけで、実質的な活動はしていなかったという。一昨年、大崎署の池田山交番が廃止される方針が示され、住民は署名を集めるなどし、反対運動を展開した。この間、住民は関係機関に請願などをする際、町会組織が十分に機能していないことから不便さを感じたため、一年前にあらためて町会組織をつくり直した。
 昨年四月、交番は警察官OBが昼間だけ常駐する地域安全センターとして残り、町会役員らを中心にした住民が昨春から自主的に昼間、町内のパトロールを始めた。付近は閑静な住宅街で、昨年はひったくりや空き巣が相次いだため、もっと効果的なパトロールの方法を考える中、青色灯をつけた車でパトロールをすることになった。警視庁の許可を受け、伊藤達雄会長(65)ら役員三人の車に青色灯を設置。今月二十二日からは週一回、四人一組で夜間パトロールをしている。現在、町会には約七百世帯中、約二百八十世帯が加入している。伊藤会長は「活動を始めて近所の人の顔も分かるようになった。今行っている防犯や防災だけでなく、いずれは行事を催すなど、街角で住民同士、立ち話ができるようになるのが理想」と話している。

同記事では、品川区で防犯活動を通じて、町会が再活動化されたことを紹介。
住民の生活安全を確保するためには、櫻井敬子先生が指摘されるように「階層的行政体制としての複合モデル」*1が必要であり、実際自治体では、住民(防犯協会や自治会のみならずNPO等)・行政・警察が三民一体となっての活動が盛んな領域となっている。ただ、その契機を見てみると、地域防犯課題の噴出という現実的な課題への対応が多いようだ。同記事の品川区のように、警察(交番)という地域治安維機構の損失が、地域レベルでの地域活動へと移行していくことは、巨視的な政府の生成過程から考えると興味深い。つまり、スタンダードな政府移行観としては、警察機能(治安維持機能)こそが、まずは、国等の統一的な政府が担当するとされてきた。一方で、近年ではこれらの機能こそが、地域で行われる優先課題として、地域に還流してきている。政府全体の機能再編における「国家」警察の機能分化(重点化)の外延と位置づけるか、日本警察特有の市民社会への「埋め込まれていること」・「浸透」*2の一例とみるか、なかなか興味深い。
なお、品川区池田山町会では、町会長・副会長・広報部長の自家用車3台で週一回パトロールをするとのこと*3

*1:櫻井敬子「生活安全確保のための行政体制及び条例制定のあり方」成田頼明監修『これで実践!地域安全力の創造』(第一法規、2006年)219頁

*2:P.J.カッツェンスタイン『文化と国防』(2007年、日本評論社)93頁

文化と国防―戦後日本の警察と軍隊

文化と国防―戦後日本の警察と軍隊

*3:品川区HP「しながわ写真ニュース2008年2月22日 池田山町会防犯パトロール 自家用車に青色回転灯