スーパーなどの事業者にレジ袋削減を義務づける条例案が14日、東京都杉並区議会で可決され、区は即日公布した。区内の事業者はそれぞれ削減の目標値を設け、実現に向けた具体的な計画を区長に提出しなければならない。区によると、全国で初めての試みだという。
 レジ袋の使用枚数が年間20万枚以上で、マイバッグ持参率60%以上という目標が未達成の、食品を扱う事業者が対象。スーパーやコンビニエンスストアなど区内約300店にのぼるという。レジ袋を有料化する必要はないが、09年度までに削減目標を達成するための計画策定が求められる。計画書を提出しなかったり、取り組みが不十分だったりする場合は区が勧告し、事業者名を公表する。

東京都町田市と同市の中堅スーパー三和(首都圏五十一店)、市民団体の三者がレジ袋を全廃して効果を調べる全国初の実験が十四日、同市の三和小山田店で始まった。スーパーやコンビニのレジ袋は「有料化」による減量が試みられてきたが、廃止の流れが消費者に受け入れられるか。結果が注目される。
 三和は四日、市と市民団体「町田発・ゼロ・ウェイスト宣言の会」の三者で廃止実験の協定を締結。約半年間実施する。この日は店内に、廃止をPRする張り紙をしたり、放送で呼び掛けたりした。レジでの混乱はなく、持参のバッグに食料品を詰めていた主婦は「買い物する側の自覚が大切。ごみ減量の意識が高まる」と話した。店は年間五・五トン分出していたレジ袋の提供を期間中、一切廃止。節減分をバッグ持参者にポイント還元する。バッグを持参しない人には、店の紙袋や段ボール箱を使ってもらう。同社は「売り上げにプラスにならないと覚悟しているが、消費者の理解を得て、レジ袋ゼロを実現したい」という。経済産業省によると、レジ袋の有料化に取り組んだスーパーなどは三日現在、全国十一市区町の約三百三十店舗。廃止実験は町田市が初めて。

同記事では,杉並区では事業者に対してレジ袋の削減を義務付ける条例が可決・施行されたこと,また,町田市では,スーパー三和が市と市民団体と協定を締結し,レジ袋の全廃実験を開始したことを紹介.
事業者に対して規制を設けるか,自主的規制に期待するか,そして,そのためには如何なる手法を採用するかは,古典的ともいえる行政手法の議論.その際、環境政策の分野では,規制,経済,情報*1のいずれでもなく「政策手段の複合化」を図ることが、近年の行政手法論上の主流の議論.ただ,手法の組み合わせ自体には,政策立案としてはパズル的な面白みがあるものの,何よりも手法を実際に実行できるかが深刻な論点.そのためにも「高度な政策運営能力」*2)次第であることも事実.いわば,実効性確保が一つの焦点となるが,振り返って杉並区の当該事例を考えた場合,事業者名の公表は,事業者が削減取り組みに結びつく誘因となるかは,やはり不確定要素も高いようにも思う.レジ袋を需用するのは消費者であり,公表された場合でも、廃止姿勢には結びつきにくいのではないか.実効性の確保の観点からの今後の観察対象.結局は,実効性の確保には,事業者側がCSRの具体化に対して一定の姿勢を示すか否かに依拠するため,ハードな規制を設けない場合には,引き継ぎ,規制側の説得が続く.
なお,韓国ではこのような自主規制の取り組みが広がっているようだ.今年の韓国調査の折,ホテルでの飲料用として大きめのミネラルウォーターをコンビニで購入した.その時は,レジ袋を渡されず,人混みのなかペットボトルを抱えてホテルまで戻った.昨年,一昨年に訪問した折には,こちらの意向を確認せずに,レジ袋分の料金もしっかり入れて請求されていたことから比べれば,レジ袋に対する取り組みが徹底しつつあると理解すべきだろうか.

*1: Marie-Louise Bemelmans-Videc, Ray C. Rist, Evert Vedung,Carrots, Sticks, and Sermons: Policy Instruments and Their Evaluation,Transaction Pub,1998,pp. 250-257

Carrots, Sticks, and Sermons: Policy Instruments and Their Evaluation (Comparative Policy Analysis Series)

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*2:小島聡自治環境政策の軌跡と持続可能性」今川晃・牛山久仁彦・村上順編『分権時代の地方自治』(三省堂,2007年)145頁

分権時代の地方自治

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