下高井郡木島平村の芳川修二村長は11日、昨年2月から空席になっている副村長に総務省の派遣職員を充てる方針を村議会全員協議会で示した。4月1日に内閣府沖縄振興局の戸梶晃輔・総務課長補佐(34)を迎える予定で、人事案を3月村会最終日の17日に提出する。総務省によると、同省幹部候補のキャリア職員が村に出向するのは珍しいという。
 自治体独自の活性化を支援する「頑張る地方応援プログラム」の一環で同省が若手職員の市町村派遣を制度化。木島平村を含む全国約30市町村が派遣を希望し、来年度は10人程度が特別職や幹部職員として派遣される。村は同村だけで、4月はほかにも4市町に4人が派遣される。
戸梶氏の任期は2年。取材に「木島平村は農業を中心とした交流の促進や観光に取り組んでいると聞く。少しでも力になれるよう頑張りたい」と話した。芳川村長は「地方と都市との格差是正に向け、地方の産業興しのモデルづくりを担ってほしい」と期待する。同省大臣官房秘書課によると、キャリア職員は都道府県などへの出向と本省勤務を数年ごとに繰り返すのが一般的。本年度は300人余が出向しているが、いずれも中核市以上の規模の自治体で、村への派遣は過去にも数例しかないという。

同記事では,木島平村で副村長に総務省職員が就任する予定であることを紹介.以前にも紹介した「がんばらない宣言」の増田元岩手県知事が総務相としては頑張らなければならない,「頑張る地方応援プログラム」の取り組みの一例.2年間の任期のよう.
自治省には,地方に出る職員に対して「三惚れ主義」*1というモットーが示されたという.それは,「地方に惚れよ,仕事に惚れよ,そして女房に惚れよ」というものである.今から見れば,女性の総務省職員もいらっしゃることを思うと,ジェンダー的に如何なものかとも思うが,このモットーの肝は,「地方に惚れよ」にある.以前に,自治省から秋田県矢島町の助役に就任された職員さんの手記を読むと,「東京からやって来た助役に対する町長や町民の期待は大きく、プレッシャーは相当なもの」*2との指摘もある.総務省から職員を迎えることは,その自治体にとっては余程の期待があるはず.そのプレッシャーを超え,当地を「惚れ」て,奢ることなく,地方のために活躍してもらいたい.
ただ,地方分権を,あくまで国の視点(法執行,国全体の地方財政規律の確保等)から見たとき,人を送ることの意味はなかなか考えさせられる.例えば,主人と代理人関係に捉えてみれば(これが妥当かは別としても),自治省総務省(大臣)が主人で,自治体(首長)が代理人という見方もできる.その場合,主人からの期待に反し,代理人が規律をゆるめる可能性もある(いわゆる「エージェシースラック」*3).これを抑止するためには,自治体に現状の自由度を委任しつつも「監視費用」を高めるか,又は,自治省総務省(大臣)の活動領分を広げるという「立法費用」を高める対策が一般的な理論上の整理.恐らく,これまでは,ご主人様は,都道府県を通じた「監視」を行い,直接市町村と対面してきた都道府県が主体となり高い「立法費用」を負担することで,これまた管理をしてきた.それを考えると,国から見た都道府県の機能もまた変わりつつあるのだろうか.
なお,そろそろ同記事にもあるように総務省職員の自治体の職員として行く際(特に,特別職)について,「出向」という表現を(マスコミが)用いることは止めにならないだろうか.意思決定が総務省側にあるように思われる.副村長であれば,議会同意を要するので,当たり前ではあるが同意されないケースもある.就任させるも,しないも,自治体の判断であるのだから.

*1:神一行『自治官僚』(講談社,1986年)139頁(引用頁は,単行本より)

自治官僚 (講談社文庫)

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*2:総務省HP「総務省を目指すみなさんへ先輩からのメッセージ」(吉川浩民「地方分権の担い手」

*3:J.M. ラムザイヤー, F. ローゼンブルース『日本政治の経済学』(弘文堂,1995年)4〜6頁

日本政治の経済学―政権政党の合理的選択

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