◇町内会費で境界線に設置
 豪邸が建ち並ぶ全国屈指の高級住宅街として知られる芦屋市六麓荘町の町内会(約220世帯)は、住民の犯罪への不安が高まっていることなどを受けて、町内会費で数台の防犯カメラを設置した。【津久井達】
 同町周辺ではここ数年、犯罪が少ないというが、町内を対象に延べ床面積400平方メートル以下の建築を制限する内容の「豪邸条例」が昨年2月に施行された影響で、外部からの見学者が増加していることなどから、住民の要望が強まった。町内会がアンケートを実施した結果、9割以上の賛同が得られたため、町内会費から約250万円を支出して設置。元々、町内では個人が私有地に約30台設置していたが、今回は他地区との境界線付近に数台追加した。防犯カメラは24時間稼働させ、犯罪発生時に警察への情報提供に利用するが、町内会として内容を確認することは禁じ、通行する人のプライバシーを守るという。坂本武文町内会長(69)は「カメラが日夜見張ってくれる効果に期待したい」と話している。

同記事では、芦屋市六麓荘町において,町内会により,24時間稼働する防犯カメラが設置されたことを紹介.2007年2月から施行されている,敷地面積400平方メートル以上として、一戸建て住宅のみの建設を許可する条例を受けて,同町への外部訪問者が増加したため,町内会が設置とのこと.「豪邸条例」と羨望と少し揶揄が含まれた指摘が往々にされる同条例であるが,「民意の調達装置」*1としての町内会活動を超え,地域自らの意向に基づく条例制定へと至った背景からすれば,自治の確保としては意義が高い条例.その条例趣旨からすれば,諾なるなかともいえる対応かと思う.
町内会(部落会)には,窓口業務,組織的な協力を仰ぐ必要がある事務事業,市区町村と住民を結ぶ媒介機能の以上3つの機能*2があると整理されている.同記事にいう防犯カメラの設置については,「昔,街灯*3,今,防犯カメラ」と考えれば,第2番目の機能に該当することになる.高木鉦作先生の論考を取りまとめた『町内会廃止と「新生活共同体の結成」』への解説において西尾勝先生は,この第2番目の機能については、「この類型の事務・事業は行政サービスの範囲の拡大と水準の向上の度合いに規定されているので,これが今なお必要不可欠であるか否かは地域によって異なる」(1042頁)との分析をされている.今回の防犯カメラの設営,地域の秩序・治安維持事業に関しては基礎的自治体には十分な権能がないがゆえに,町内会が今なお果たさなければならない業務となるのではないか.

*1:川手摂・神長唯「東京の町内会」三宅博史・五石敬路編『膨張する東アジアの大都市』(国際書院,2007年)230頁

膨張する東アジアの大都市―その成長と管理 (東京市政調査会都市問題研究叢書 11)

膨張する東アジアの大都市―その成長と管理 (東京市政調査会都市問題研究叢書 11)

*2:高木鉦作『町内会廃止と「新生活共同体の結成」』(東京大学出版会,2005年)1041〜1042頁

町内会廃止と「新生活協同体の結成」

町内会廃止と「新生活協同体の結成」

*3:高木鉦作「地方自治体と街頭照明(上)(中)(下)」『都市問題』1962年2号〜4号