広島市教委は、育児放棄など家庭でのトラブルを抱える子どもへのケアを拡充しようと、福祉と教育の知識を備えた専門員「スクールソーシャルワーカー」の派遣事業に乗り出した。学校からの要請に応じ、保護者への働き掛けや関係機関との調整に当たる。
 市教委内の事務局に1日、社会福祉士精神保健福祉士たち計3人を配置した。小中学校を中心とする全市立校を対象にする。育児放棄のほか、児童虐待や経済的な困窮など多様なケースを想定。保護者と面談したうえで、行政サービスの活用を助言したり、地域の福祉施設に協力を呼び掛ける。これまで派遣してきたスクールカウンセラーが校内を拠点に「心の問題」に対処してきたのに比べ、今回は福祉的な視点を重視。必要があれば家庭や地域に出向く。県内では呉、安芸高田市なども近く、小学校を中心に同様の事業を本格化させる。

同記事では,広島市教育委員会事務局に,「スクールソーシャルワーカー」を3名配置し,市内小中学校を対象に,育児放棄児童虐待・経済困窮等の相談に応じ,処方を促す事業に取り組み始めたことを紹介.
今年度より,文部科学省が実施する「スクールソーシャルワーカー活用事業(新規)」(1,537,921千円)では,141地域が指定地域となり「スクールソーシャルワーカーの活用方法等について調査研究を行う」*1こととされている.同市の取り組みもまた,この一環とは思われる.事業自体は,広島県教育委員会からの受託事業としての形式をとり,事業費は約560万円*2とある.
スクールカウンセラーは,臨床心理士が中心となり,文部科学省が所管する「日本臨床心理士資格認定協会」にて資格試験を行っており,文部科学省としての事業の性格が強いように思えたが,同「調査研究」を通じて,厚生労働省が所管する各専門職を,省際を跨いで,学校が受け入れることとなるのだろうか.となると,やや毛色が異なるものの,1990年代後半から取り組まれている「開かれた学校」とも言えなくもない.
2006年に文部科学省に設置されていた「学校等における児童虐待防止に向けた取組に関する調査研究会議」の報告書*3をみると,1981年には,所沢市で,我が国で初めて自覚的にスクールソーシャルワーカーを置いており,2000年度からは,赤穂市教育委員会関西福祉大学によりモデル事業が開始され,ソーシャルワーカーが1名配置されたという(77〜78頁).以前本備忘録でも見たようにソーシャルワーカーの役割(期待)が少なからずある模様.ただ,ソーシャルワーカへのニーズ及び個別ケースと職員配置の自治体間格差も夙に指摘されてはおり*4,常備するには,その任用と財源措置を中心にいわば即物的な課題が多い.