高橋はるみ知事の諮問機関の道州制特区提案検討委員会(会長・井上久志北大教授)は十五日、合併で面積規模が大きくなった市に政令市並みの権限を移譲する「広域中核市制度」の創設を、道州制特区の第三次提案に向けた答申に盛り込む方針を固めた。十七日の検討委で最終決定する。道から大幅に権限を移譲するほか、「区」設置といった札幌市などの政令市並みの権限を与え、市町村合併を促す狙いがある。
 日本の大都市制度は、現在、札幌市など人口五十万人以上の政令市、旭川市函館市など三十万人以上の中核市、二十万人以上の特例市があり、人口を基準に国が指定。一般の市の権限に加え、規模に応じて都道府県の事務が移譲される。 これに対し、検討委が特区提案に盛り込むよう答申する「広域中核市」では、人口基準を撤廃、広域行政が必要な場合に柔軟に指定できるようにする。 対象は道内に二十一ある二次医療圏の単位で広域合併した後の市を想定。支庁や保健所、土木現業所などが持つ機能、権限、財源の大半を移譲する。具体的には合併議論がある室蘭、登別、伊達の三市などの「西胆振圏」や、富良野市と周辺四町村が合併した場合の「富良野圏」、帯広市を中核とする「十勝圏」などが指定される可能性が高い。一方、検討委は「指定都市の指定権限の道への移譲」も答申に盛り込む方針。指定要件を道が条例で規定できるよう求めるもので、広域中核市と併せて実現すれば、道内各地の実情に合わせた自立的な広域自治体の誕生が実現することになる。検討委はほかに、福祉分野で、障害者やお年寄り、子どもを包括的に支援する「コミュニティーハウス制度の創設」や「福祉移送の規制緩和」も新たに答申に盛り込む方針。既に決まっている二項目を含め、答申は六項目の見込み。答申は七月中に行い、道は議会論議を経て早ければ十月に国に提案する。

同記事では,北海道において道州制特区提案として,「広域中核市制度」の創設を提案する方針であることを紹介.あわせて,指定都市の指定権限を道へ移譲することを求めることも紹介.
同提案の内容を,端的に捉えれば,一定規模(面積)を有する市町村への権限移譲の仕組みとも考えられる.ただ,現在では,下名の観察対象でもある同仕組みに即して考えてみれば,都道府県から市町村への権限移譲の仕組みは,いわば,都道府県の「創造物」*1ともいえ,法定移譲路線以外にも,条例移譲路線の選択肢が広がっている(もちろん,仕組みの選択肢であり,実態の選択肢ではない).そのようななかで,敢えて,道州制特区として,同都市制度の法定化を提案することには,種々考えさせられる.
例えば,従来の大都市制度がもつ,人口段階別に基づく「配分的正義の観念」(正確には,その正義は虚構か)を,「拒否」*2する問題提起とも考えられるし,より実利的な側面からは,道による交付金措置から地方交付税措置*3への転換が主眼にあり,税財源議論の「再争点化」としての提案とも考えられる.
さらに,他の論点もまた,種々考えさせられる.つまり,保健所の設置も市町村側が設置申請し,政令で指定されれば設置可能である.また,行政区についても,政令指定都市だけに設置できるものではなく,例えば,区毎に設置される農業委員会も面積が広ければ,それこそ2以上置くことが認められている(農業委員会等に関する法律第3条第2項).つまり,各市町村の意思と能力次第では「行政区的」な運用は少なくとも可能である.更には,地域自治区を利用する選択肢もある.つまりは,市町村の判断と「自治運営能力」*4への北海道側からの問いかけとも読めなくもない.
また,同記事にある「指定都市の指定権限の道への移譲」に関しては,同委員会資料を拝見させていただくと,政令指定都市中核市特例市については,「条例に掲げる要件」により指定する仕組みである*5.いうなれば「条例指定都市」ということを想定されているのだろうか.ただ,これもまた,純粋に権限移譲の提案ととらえれば,道としての交付税措置を伴えば,現行でも可能な仕組みともいえる(再度となるが,もちろん仕組みでは可能であるものの,実際に道から移譲又は指定されることとは別の議論).
何れも「政令」という法形式に対する,都道府県側からの問題提起ともいえなくもない.ただ,権限移譲は法定化,指定都市の指定は条例化となると,その整合性には少し疑問もなくはない.また,考え方次第だが,全体的に,北海道の市町村は,それこそ道の「創造物」のような制度提案の色彩も感じなくもない.提案が公開されるまで,もう少し要観察.

*1:森田朗『制度設計の行政学』(慈学社,2007年)429頁

制度設計の行政学

制度設計の行政学

*2:ジョン・ロールズ『公正としての正義 再説』(岩波書店,2004年)87頁

公正としての正義 再説

公正としての正義 再説

*3:北海道HP・北海道道州制特別区域提案検討委員会第21回検討委員会(平成20年7月9日開催)「配付資料資料2 項目別資料一覧表 資料2−3−2 」21頁

*4:金井利之「自治体の自治運営」『ジュリスト』No.1358,2008年6月15日号,128頁

Jurist(ジュリスト)1358

Jurist(ジュリスト)1358

*5:北海道HP・北海道道州制特別区域提案検討委員会第21回検討委員会(平成20年7月9日開催)「配付資料資料2 項目別資料一覧表 資料2−3−1 」13〜14頁