県は本年度から職員のアイデアを業務の改善に生かす職員提案制度を拡充し、全庁単位を対象とした提案だけでなく部局単位での募集を始めた。ピーク時には三百五十九件の提案があったが、最近は激減、昨年度は十四件にとどまったことから、身近な業務についての改善を受け付けることで制度の活性化を狙った。五〜六月に経営管理部で試行したところ、会議資料のペーパーレス化など四十三件が提案された。多くが実施される見通しで、県は他の九部局でも募集を開始している。
 職場提案制度は業務の改善を図るとともに職員の仕事に対する積極的な姿勢を引き出すのが目的で平成九年度から始めた。十三年度までは募集期間を決めて各課に提案を割り当てていたが、十四年度からは庁内LAN(構内情報通信網)の掲示板で職員個人の提案を随時、受ける方式とした。この結果、九年度から十三年度までは百件を超えていたが、その後は激減。十七年度は四件、十八年度は十一件、十九年度は十四件となった。十九年度までに実現した提案には、名刺デザインの統一や名札の着用、外部監査の導入、共有自転車の導入、県庁内部の調査や紹介、各種統計データの庁内LAN活用などがある。
こうした状況を踏まえ、県は制度の活性化に向け、部局単位での募集に取り組むこととし、まず経営管理部で試行した。全庁的な制度に関する提案十一件、部内で検討すべき提案三十二件の計四十三件が寄せられ、課内ミーティングの実施、水曜日に定時の退庁を促す「リフレッシュアフター5」運動の際の本庁一斉消灯、議会用の情報ファイル作成など五件が既に実施されている。職員間のコミュニケーションを図るランチミーティングや、財務会計マニュアルの作成など十六件を各課の判断で実施する予定だ。経営企画部での結果を受け、現在、知事部局のほか、教育委員会、企業局など九部局がそれぞれ職員提案を募集しており、年度内の実施を目指す。県は「身近な業務改善に職員の意見を生かしたい」としている。

同記事では,富山県において実施してきた職員による業務改善提案制度を,これまでの全庁単位のみの仕組みから,各部局単位での提案を可能とする制度への変更を行うことを紹介.
同県における「職員の資質向上と意識改革」*1の一環として実施されてきた同制度.同記事でも「九年度から十三年度までは百件を超えていたが,その後は激減」とあることを予め想定してか,「行政改革」に関する項目において「提案制度の活性化を図る」*2との文言が,同記事でいう「激減」年の初頭となる2002年度から現れている.いわゆる「カイゼン」とは,「ムダをなくし継続的に効率を上げていくことで毎日少しづつ良くなっていこうとする習慣」*3ことからすれば,既に同県内には同制度を通さなくても「カイゼン」の「慣習」が定着化しているのか,はたまた,同制度への認知度が低下したのか,同制度の利用が「激減」する要因は判然とはしない.
ただ,今回の制度改正を通じて,従来の,いわば「集中型提案制度」から,身近な事項もまた同制度の対象とする,いわば「分散型提案制度」を採用することにより「制度の活性化」が期待される模様.ただ,「集中型提案制度」と異なり「分散型提案制度」を採用する場合,各部内の職員の皆さんから提案された内容への評価・採択の主体と仕組みをどの様に整備するかは,気になる点.同記事では「各課の判断で実施」ともあるが,同県では,特に,提案に対する審級者は置かない,審級者もまた「分散型」ということなのだろうか.そうなると,もはや,職員提案制度という「催し物」ではなく,「カイゼン」の「習慣」づけの仕組みへの転換とも理解することが適当か.

*1:富山県HP(経営管理部人事課これまでの主な成果)「職員の資質向上と意識改革

*2:富山県HP(経営管理部人事課これまでの主な成果)「14年度に行う行政改革 第2 平成14年度に実施する主な行政改革

*3:大薗恵美・清水紀彦・竹内弘高『トヨタの知識創造経営』(日本経済新聞社出版,2008年)177頁

トヨタの知識創造経営

トヨタの知識創造経営