鳥取県情報公開審議会(会長・河本充弘弁護士)は十九日、全国学力テストの市町村別・学校別結果の開示のために県教委が進めている県情報公開条例の改正案づくりについて、開示請求者の責務を定める改正は「必要ない」とする意見をまとめた。
 県教委は、請求者に特定の学校が分かる方法での公表や不特定多数への提供をしないよう求める「責務」規定を条例改正案に盛り込む方向で検討を進めていた。審議会は、同条例の施行に関して平井伸治知事に意見を述べるため開いた。責務規定を設けることについて、委員は「公開できる情報を覆ってしまう可能性があり、条例の趣旨を骨抜きにする」「請求者への委縮(いしゅく)効果を持つ」などと反対した。
 河本会長は県教委が全国学力テスト結果を非開示とした際、「過度な競争や序列化を招く恐れ」を理由にしたことに触れ「恐れの具体例を示さなければ、条例改正が必要だという説得力に欠ける」と指摘した。松田道昭委員は「適正利用に加えて実施機関の意向の条文化を認めれば、他の機関からも改正要求が出てくる」とした。出席した県教委の福本慎一次長は「条例改正は、全国に例のない市町村別・学校別データの開示を円滑に行うための措置。市町村教委や学校現場の不安に配慮しなければ、(これまでの)非開示から開示にすることはできない」と理解を求めた。審議会は、全国学力テスト結果も県の基礎学力テストと同じ条件で開示する改正は了承した。県教委はこの日の審議会の意見やパブリックコメントの内容を踏まえ、二十二日の臨時委員会で最終改正案を決め、二十六日の十一月定例県議会に追加提案する。

同記事では,鳥取県において,同県に設置された情報公開審議会が,同県の教育委員会が検討した情報公開条例の改正案に対して,疑義を示したことを紹介.同記事は,7月10日付の本備忘録8月6日付の本備忘録8月13日付の本備忘録10月31日付の本備忘録,そして,11月16日付の本備忘録で取り上げた記事群のその後.まだまだ続く模様.
同審議会において,情報公開条例の改正について審議することとなる背景には,同県情報公開条例第22条第2項に基づき,同審議会には,「その他この条例の施行に関する重要事項について,知事に意見を述べること」*1,という規定が根拠*2とされている,との報道もある.同審議会の意見については,8月13日付の本備忘録に記した内容への意趣返しではあるまいが,同審議会による「適正利用に加えて実施機関の意向の条文化を認めれば,他の機関からも改正要求が出てくる」との判断は諾なるかなとも思わないでもない.
しかし,同審議会による意見提示に関する同規定は,あくまで「意見」を述べるだけであり,その拘束力,例えば,「尊重義務」等は明記されていない.そのため「意見」が,改正時に採用されるか否かは,知事の政治的判断次第の部分もあり,「意見」に止まる蓋然性も高いようにも想定される.特に,11月16日付の本備忘録でも見たように,同条例改正案に関しては,同県教育委員会における審議内容自体が知事の意向を反映しているとするのであれば,知事部局に設置されている同情報公開審議会の意見の「重み」は,一定程度に制約されることになるのだろうか.一方で,10月31日付の本備忘録で触れた,同県における情報公開条例の改正過程についての疑問(所掌部署である同県総務部県民室と,同記事のように修正案を審議している教育委員会との関係)の観点からは,読売新聞の報道では,結局は,同条例を所管する県民室がその改正案を策定するともある*3.更に,同室が同条例の改定案を策定する際には,山陽中央新聞の報道では「県議会に提出される条例改正案を詰める上で参考とされる」*4,更には,上記の読売新聞の報道では「審議会の意見を参考に最終的な条例案づくりを進める」*5ともあり,同審議会の意見を同室としては「尊重」する意向にある模様.
同過程を拝見すると,やはり「条例づくりにおける調整において,しばし最も困難と揶揄されるのが,自己の自治体内の内部調整(庁内調整)」*6との指摘もまた,なるほどと思う.

*1:鳥取県HP(総務部政策法務室鳥取県例規集)「鳥取県情報公開条例」(平成12年3月28日・鳥取県条例第2号)

*2:毎日新聞(2008年11月20日)「情報公開を問う:学力テスト成績非開示 県情報公開審「条例改正不要」の意見/鳥取

*3:読売新聞(2008年11月20日)「「情報公開範囲狭める」県審議会 県教委議論にも影響か

*4:山陰中央新聞(2008年11月20日)「鳥取県の情報公開審議会で条例改正を協議

*5:読売新聞(2008年11月20日)「「情報公開範囲狭める」県審議会 県教委議論にも影響か

*6:兼子仁・北村喜宣・出石稔共編『政策法務事典』(ぎょうせい,2008年)235頁

政策法務事典

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