定例岡山市議会代表質問で5日、河田正一氏(共産)と吉本賢二氏(新風)が、来年4月の政令市移行に伴い設置される区役所の予算に関する権限をただし、内村義和財政局長は、区長に一定の予算要求権を持たせる方針で検討していることを説明した。 
河田氏の質問に対し内村財政局長は、区独自のまちづくりを進めるソフト事業の予算については「区ごとの創意工夫が反映でき、区民のまちづくりへの意欲を増進できるような仕組みづくりを考える中で検討している」と前向きに答えた。一方、吉本氏への答弁では「区役所の予算について、都市ビジョンに基づく重点化事業や均衡ある発展を図る必要があるものは、現在の道路事業経費同様に、本庁において一括して調整することが望ましい」と強調。新年度予算編成方針で、各区役所の建物の維持管理費、各区のソフト事業以外は、本庁の事業所管課から一括要求させることを説明した。同市は現在、合併特例区交付金を財源とした予算調製権を持たせているが、今後、行政区を具体的にどうするかは未定という。

同記事では,岡山市において,来年4月からの政令指定都市移行に伴う区役所設置に際して,区長に対して「ソフト事業」を中心とした予算要求権を付与する予定であることを紹介.10月11日付の本備忘録以来の岡山市政令指定都市移行関連記事.
10月21日付の本備忘録でも取り上げたように,行政区における予算編成の問題は悩ましい部分があるように思われる.つまり,政令指定都市の場合に,いわゆる「都市内分権」を進めようとして,各行政区長に対して予算編成権限の一部付与する場合と,一方で,都市全体の効率性の向上の観点から「庁内分権」として,各局・部長への予算編成における自由度拡充方策との間では,一見する限りでは親和性が高そうではあるものの,実質的には異質な取り組みになることもありうるとも考えられる.これは,両組織・機構の特性が、前者が領域単位毎の束であり,後者は政策(施策)単位の束であることに起因するものとも考えられる.
つまり,前者の分権度を進めようとすると後者の各局・部長が有する事業関連に関する予算編成領域を侵食することとなり,その裁量的余地の縮減は回避できない.一方で,後者の分権度を進めようとすれば,前者に配分される予算編成事業の束が分立されることなり,これにより予算編成(要求)権は制約されることとなる.いわば,分権を巡る領域と政策のジレンマ(または,「「領域」対「機能」という「対立軸」」*1)が,同記事にはあるようにも考えられる.
同記事では,同市の場合はソフト事業に限定されるとあるが,同市全体としての予算編成の仕組みをどのように想定された上での対処となるのか,今後も興味深い事例.

*1:山崎幹根『国土開発の時代』(東京大学出版会、2006年)2頁

国土開発の時代―戦後北海道をめぐる自治と統治

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