5日の県議会一般質問で、県の借り上げ庁舎の家賃について「行財政スリム化の中で、金額が高いのではないか。家賃交渉はできているのか」との疑問が出された。答弁で中村法道総務部長は「交渉はやっている」と強調したが、実際は積極的な低減努力は行われておらず、県庁舎移転・新築方針を推進する中で「借り上げ家賃の無駄」を強調しながら、矛盾した姿を露呈した。
 浅田眞澄美議員(創爽会)が「(会議室借り上げや駐車場借り上げも含め)借り上げ庁舎に年約二億円かかっているという。だが、(借り上げた)民間庁舎の中には、数年間約八千三百万円を払い続けていたり、監査事務局のように職員十八人で月百万円(の家賃)、五十人の部署で月二百万円などもある。県民視線で果たして適正なのか」とただした。答弁に立った中村部長は「家賃の交渉は当然やっている。民間企業もビルには入っており、県だけまけてもらうのは難しい。経費節減を図るために、交渉はしている」と述べた。
 しかし、人事委員会事務局(職員数十五人)や監査事務局(同十八人)は小規模で高家賃=表参照=。Aビルの場合、二〇〇一−〇五年度まで家賃は年約八千三百万円で固定され、〇六年度から値上がりしていた。長崎新聞社の取材に対し県管財課は「固定化しているのは、長期の賃貸借契約を結んでいるため。家賃を家主から上げたいと言われれば交渉するが、積極的に下げろという交渉はしていない」と部長答弁とは食い違う説明をする。県庁舎移転・新築の方針を掲げる県は、借り上げ庁舎の経費削減もメリットと説明。県県庁舎整備懇話会でも、県は「家賃二億円」を無駄な出費としてやり玉に挙げていたが、県の中で低減へ向けた意識は共有されていない。

同記事では,長崎県議会において,同県庁舎の賃貸料金に対して「積極的な低減努力」が見られないのではないか,という疑義が示されたことを紹介.7月15日付の本備忘録でも取り上げた同県における庁舎移転をめぐる一連の検討における展開.
同県における審議状況については,同県に設置された「県庁舎整備懇話会」のHPを参照*1.同懇談会第1回目の資料において*2報告されていた,単年度の賃貸の総額は1億6千万円(警察本部庁舎を含む).同記事の特徴は,同懇談会の配布資料では十分に把握できない個別の庁舎への賃料が提示されている点にあるのだろうか.同記事に掲載されている表を拝見すると,確かに,人事委員会事務局と監査事務局は他に比べての少数の職員で借りている.同スペースに関して,実際に「家賃交渉」し,賃料引き下げに至ることが可能であるものなのか,同県内の物件取り扱い状況は分からないこともあり,判然とはしない部分も残るものの,例えば,両事務局を表に言うBビルのようなスペース内に一元化すると,若干でも賃料を下げることができるのではないかとも考えられなくもない(もちろん,同県内に同様に余剰スペースがあることが前提ではあるが).
耐震改修か,現在地建替えか,移転新築かという,今後の庁舎のあり方をめぐる同県の選択は,現行の庁舎への毎年度の改修料金が平均8千2百万円(7頁)ともあるなかでは,その耐震的配慮とともに,財政的負担からも,早々に決着することが適当な課題か.昨日,12月7日付の本備忘録でも取り上げた「庁舎管理の行政学」の事例としても興味深い.要経過観察.
蛇足.この一年間の各紙を拝読させて頂くと庁舎の維持管理,建替,新築に関する報道は豊富にある.余剰施利用,耐震対策,歴史的施設としての維持管理,移転に伴う地域振興等,庁舎を巡る問題の切り口は様々.相変わらずの下名の個人的関心の散発さに自ら呆れつつも,来年ぐらいからは「庁舎管理の行政学」のために,重点的な観察・調査を始めようとの思いに靡きつつもある.研究の開始は文献表作りから,ではないが,まずは,書店に行くたびに中々手を出せずにいる,石田潤一郎先生による『都道府県庁舎―その建築史的考察』*3を購入して,こっそりとお勉強を始めようとも思う.