神戸市が職員派遣先の外郭団体に人件費として支出した補助金の適否が争われた住民訴訟控訴審判決が二十日、大阪高裁であり、若林諒裁判長は、一審を上回る計約二億五千万円を矢田立郎市長と三団体に返還させるよう市に命じた。
 市民団体「ミナト神戸を守る会」の東條健司代表らメンバーが提訴。一審・神戸地裁判決は「市は公益性をまったく審査せず補助金を出しており、直接の給与支給と言われてもやむを得ない」として、矢田市長と二団体に計約二億一千八百万円を返還させるよう命じていた。
 外郭団体の派遣職員の給与を自治体が直接支給することは禁じられているが、地方自治法の例外規定として「公益上の必要性」を満たせば補助金支出が可能。また、二〇〇二年四月施行の「公益法人への地方公務員派遣法」でも、派遣先業務が給与支給可能業務である場合などに限り認められている。
 判決によると、神戸市は〇四-〇五年度、市職員を派遣した「こうべ市民福祉振興協会」など福祉、医療関係の三つの財団法人に、派遣職員らの人件費に充てるため、補助金を支出した。判決理由で若林裁判長は市が各団体と結んだ協定書で定める派遣職員の業務は「派遣法が例外規定と定める給与支給可能業務に当たらない」と判断を示した。神戸地裁が計約四十五億円を矢田市長と十八団体に返還させるよう命じた同様の訴訟も大阪高裁で係争中。早ければ今春にも判決が下される。
 同市の小柴善博行財政局長は「判決の内容を精査したうえで対応を検討したい」とコメント。上告も視野に協議するという。一方、原告の東條代表は「市は上告を取りやめ、違法支出が完全になくなるよう税金の使い道について早急に総点検をすべきだ」と話した。

同記事では,神戸市が職員派遣を行っている公益的法人等に対する職員給与としての補助の適否に関する住民訴訟に関して,その控訴審判決が示されたことを紹介.同記事によると,神戸地裁判決に引き続き,大阪高裁では「派遣法が例外規定と定める給与支給可能業務に当たらない」と判断が示されたとのこと.同判例に関しては,現在のところ判例検索システムには掲載されておらず未確認,残念.なお,神戸地裁判例については,2008年4月24日付の神戸新聞の報道を参照*1
同記事にもあるように,地方自治法第232条の2では「公益上必要がある場合」に補助を行うことができ,同記事の事例でいえば,公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律第6条2項において「地方公共団体の事務若しくは事業の効率的若しくは効果的な実施が図られると認められるものである場合」又は「これらの業務が派遣先団体の主たる業務である場合」には,「職員派遣の期間中,条例で定めるところにより,給与を支給することができる」とある.
判例を拝読していないため,大阪高裁ではどのような性質の団体に対する補助金が,同規定に合致する/しないと判断されたのがが,現在のところは判然とはしないものの,自治体側としては,現在/今後の公益法人等に対する補助に際しては,「地方公共団体の事務若しくは事業の効率的若しくは効果的な実施が図られると認められるもの」至るまでに厳密な判断手続(例えば,「個別査定型」*2を厳密に行うなど)の整備を通じた,同判断に耐えうるだけの論拠の明示が要請されることになるかとも想定される.「自治法の「公益上必要がある場合」という規定が抽象的なものであるため,ややもすると外部的圧力等によって安易に支出されかねない」*3ともされる補助金.補助の決定至るまでの自治体の外部的圧力等の利害関係者への説明責任のためののみのならず,公益法人等を含めた補助に際する内部合理性の確保もまた必要となる.
同判決,他の自治体における公益団体等に対する補助体制への波及が大きそうか.要観察.

*1:神戸新聞(2008年4月24日付)「神戸市長らに約48億円返還求める 神戸地裁判決

*2:大杉覚「自治体補助金改革と行政評価の課題」『会計検査研究第』33号,2006年3月,111頁

*3:青木信之「補助金等をめぐる諸問題」瀧野欣彌編著『最新地方自治法講座7 財務(1)』(ぎょうせい,2003年)252頁

最新地方自治法講座 (7)

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